第184話 悪党と誘拐犯!
皆にファッションセンスを否定されて、落ち込んだまま家へと向かう。
「私はカッコいいと思うよ」
「ありがとうな!」
ライラの頭を撫でながら歩いていると、
「お嬢!」
向こうの方から、叫び声が聞こえる。
その声に反応して、ライラが俺の後ろに隠れた。
「お嬢! 探しましたぞ」
声の主は、狐人族だった。
六人ほどの集団でいるのが確認出来る。
雰囲気的に、ライラの関係者なのは分かった。
何故なら、ライラが怯えているからだ。
「さあ、帰りますぞ!」
俺達の方に来て、ライラの手を引っ張ろうとする寸前に、俺が遮る。
「怯えているだろう」
「お前、何者だ!」
「今は、ライラの保護者だ」
「お前が、お嬢をそそのかした悪党か!」
強引に奪おうとするので、大声で叫ぶ。
「この狐人が、幼女を誘拐しようとしてます」
ただでさえ、見物人が多い中で俺が叫んだため、衛兵が駆け付けた。
見物人の証言やらで、誘拐容疑の掛けられた狐人達は激しく抵抗していたが、その分余計に印象が悪くなったようで、強引に連行されていった。
「ライラの知り合いだろ?」
ライラは、小さく頷いた。
ここは、ローラに聞くしかないよな……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「多分、それはラウ爺だろう。そうだな、ライラ」
「……うん」
ギルド会館内にあるローラの研究室で、先程の事をローラに報告した。
「ライラを連れ戻しに来たって事か?」
「多分、そうだろうな」
「ローラが説得すれば、問題なんじゃないのか?」
「あ~、私はラウ爺が嫌いだから無理だ」
「俺だって、さっき誘拐犯にしたから、絶対に目の敵にされているぞ!」
「……ごめんなさい」
ローラと言い争っていると、ライラは謝って来た。
「ライラが謝る事じゃない。ライラは帰りたいのか?」
左右に首を振る。
「それなら、俺が全力で守ってやるよ」
「お兄ちゃん、ありがとう!」
……少し、照れるな。
「そもそも、そのラウ爺ってのは何者なんだ?」
ラウ爺は『狐人の里』にある本家に仕えている狐人で、次期頭首候補のライラの教育係になっている。
冒険者という事もあってか、スパルタ教育でライラを一流の次期頭首にする為に、色々と世話を焼いている。
ライラも、爺の教育が嫌で逃げてきたのも一つの原因みたいだ。
「そんなの嫌だって言えば終わりじゃないか?」
「それが、そんな簡単にはいかん」
爺と言われてはいるが、里の中でも三本の指に入る実力者で、力で敵う者は里には居ない。
……前世の感覚で言えば、それは根拠も無いのに、ただ根性論を言ってくる体育教師と同じだ。
「力でねじ伏せれば、言う事を聞くと思うか?」
「分からんが、試してみる価値はあると思うぞ」
「分かった。 ラウ爺は俺が倒すから、ライラは帰りたくない意思表示を必ずしてくれ」
「……うん」
力勝負なら負ける気はしないが、なんで俺を悪党呼ばわりしていたんだ?
「ローラ、里にはなんて報告したんだ?」
「あぁ、簡略して説明したぞ。 ライラは、タクトの家に住み込みで働くから、ジークに残ると」
……間違ってはいないけど、誤解を招く言い方だよな。
「ローラの説明が悪いから、俺が悪党になったんだな……」
「私の説明のどこに、タクトが悪党になる要素があった?」
「……いや、もういい。 ラウ爺が訪ねて来たら相手するから連絡くれ」
「勿論連絡するに決まっているだろう」
本人に自覚がないのでこれ以上は、何を言っても無駄だな。
シキブ達からすれば、俺もこんな感じなのかも知れないな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます