第185話 ラウ爺との決闘!

 ……なんで、こうなった?


 ローラに呼ばれて、ライラとギルド会館の訓練場に来た。

 訓練場には、シキブとムラサキ、それに誘拐犯のラウ爺達狐人が待ち構えていた。


「ローラから聞いたぞ! お嬢を返して欲しければ俺を倒して奪えだと! 悪党のくせに舐めた事を」


 ラウ爺の怒りは頂点に達していた。

 シキブ達も、状況がよく分かっていないので困惑している。

 分かっている事は、ローラが簡略説明をした為、事態が悪化している事だけだ。


 仕方ないと思い、頭を掻きながら面倒くさそうに、訓練場の中央に行こうと足を出す。

 横に居たライラが、俺より先に走り出して、中央付近まで行く。


「爺、私は集落には帰らない! ここで色々な事を覚えてから戻るから……だから、今は好きにさせて!」


 ラウ爺達に今の気持ちを言葉にして、精一杯大きな声で叫んだ。

 シキブ達はライラが、明確な意思表示をしたことを驚いていたが、俺はその叫びに納得していた。

 しかし、言葉を向けられたラウ爺だけは違った。


「この悪党め! お嬢に無理矢理言わせるなど、男の風上にも置けんわ!」


 血管が切れるんじゃないかと思う程に、怒りまくっている。


「ライラ、下がって結界でも張って見ててくれ」


 何を言っても無駄なのが分かったので、素直に決闘に応じる事にした。


「いつでもいいぞ!」

「大物ぶりおって、すぐに後悔させてやる!」


 小刀を両手に持ち、俺に襲い掛かって来た。

 小回りが利き、変則的な攻撃も可能なので感心しながら、紙一重でひたすら避ける。


「ちょこまかと避けよって!」


 攻撃が当たらないので、一旦距離を取り【風球】を連続で打ち込んでくるが、【魔法反射(二倍)】が発動して、全てラウ爺に返っていく。

 自分の攻撃を避け切れないラウ爺は、ダメージを受ける。


「本気で来ていいぞ!」


 あえて挑発する言葉を爺に向けて言う。


「……この、小童が!」


 俺の言葉に激怒した爺は又、距離を詰めて攻撃してきた。

 しかし、先程同様に俺は、紙一重で避ける。

 攻撃すると、殺す可能性もあるのでどうしたものか……。


「逃げてばかりとは、卑怯な!」

「攻撃するまでもなく、あんたが弱いんだよ」

「なんだと!」


 その後も色々な方法で攻撃してくるが、全て回避する。


「仕方ないな。攻撃してやるよ」


 【神速】で爺の服を【風刃】で切り刻む。

 時間にすれば、二秒くらいだろう。

 爺は、下着のみになっている事も気付かずに攻撃を続ける。


「おい、爺さん! あんたは、裸にされたのも気付かないくらいボケているのか?」

「なんだと!」


 俺の言葉で気が付いたのか、攻撃を一旦止めた。


「俺の勝ちでいいよな?」

「……まだだ、服を切られただけだ!」

「俺が本気を出せば、あんた死んでたかもしれないからな」

「この若造が!」


 再度、向かって来ようとするラウ爺の前に、シキブとムラサキが止めに入った。


「なんじゃ、お前達! まだ勝負の途中だろう!」


 怒りに拍車が掛かっている。


「ラウ殿、これ以上戦っても無駄です」

「そうだぜ、爺さん。ああ見えてもタクトは、ランクBの冒険者だが、実力は俺やシキブより上だ!」

「シキブやお前より強いだと! 馬鹿も休み休み言え!」

「ウソではありません。付け加えるなら私とムラサキが同時に戦っても勝てません」

「なんだと……」


 真剣なシキブ達の言葉に、怪訝な顔をする。


「ランクAが二人で攻撃しても勝てないなんて、ランクSSでないと無理だろう!」

「えぇ、ですので実力的にタクトはランクSS以上はあります」

「馬鹿みたいに強いからな!」


 それでもラウ爺は納得出来ていない。

 同行していた狐人達も、信じられない様子だ。


「それに、タクトは先程話されておりました四葉商会の代表でもあります」

「なに~!」


 シキブ達の説得? により、ラウ爺は戦闘を止めた。

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