第176話 御褒美!

 ユイとトグルの件も一段落したので、ライラに店を手伝ってくれた事と、冒険者になった御褒美に、好きな物を御馳走することにした。

 ライラも色々と考えていたが、急に食べたい物と言っても、思いつかないようだ。

 人気の飲食店が分かる様な冊子も無いし、街をブラブラして探すしかない。


 ……今度、こういうガイド誌の製作を考えてみるか。

 それを販売もしくは、行政として街案内に持たせれば、案外いい感じになるんじゃないのか?

 街の活性化や、穴場的な店も発見出来る為、冒険者や旅行者には重宝される筈だ!

 少し、真剣に考えてみるか!


 ライラが、まだ行った事のないであろう場所を提案してみる。


「露店街にでも、行ってみるか?」

「うん、お兄ちゃんと一緒ならどこでもいいよ!」


 なんて、可愛らしい事を言ってくれるんだ。

 ライラに手出しする奴は、絶対に俺が許さん!


 ……あれ?

 この感情は、兄というより父親に近くないか?

 まぁ、それだけライラが可愛いという事だな!


 しかし、ライラも成長と共に、マリーやフランのように俺に対して厳しくなるんだろうな……

 狐人の反抗期っていつ位なんだろうな?


 露店街と言われる場所に来ると、やはり祭をイメージするのかワクワクする。

 屋台や、横町と言われるものは安価で親しみやすいイメージがあるからかも知れない。

 スラムの跡地に、横町みたいなのを建設しても面白いかもしれないな!


 ライラは、あっちに行ったりこっちに行ったりと、色々見ながら楽しそうにしている。

 嬉しそうにしている姿を見ていると、こちらも幸せな気分になるのは何故だろう。


 手軽に食べられる菓子を購入して、二人で露店を見て回る。

 俺の目の届く範囲で自由行動をしているライラが、装飾品の露店で足を止めていた。


「欲しいのがあるのか?」


 ライラに聞いてみるが、俺に気を使って「別に無い」と答えるが、水晶の様な宝石のネックレスを見続けている。


「店主、この宝石は何だ?」

「毎度! これはクリスタロスと言って、浄化や幸福を運んでくると言われていますぜ!」


 クリスタロスって、クリスタルの語源だった気がするな。


「触ってみてもいいか?」

「あぁ、構わないぜ! 安くしとくから気に入ったら買ってくれよ!」


 ネックレスを手に取ると、ライラが目で追っているのが分かる。

 陽の光に照らすと、乱反射して虹色との光が発生する。


「綺麗だな!」


 ネックレスに見とれているライラに語り掛けると、「うん」と嬉しそうに返事をした。


「店主、これくれ! 着けて行くから!」


 ライラは、申し訳なさそうに俺を見る。


「店を手伝ってくれたお礼だ。 それにライラには幸せになって欲しいからな!」

「……ありがとう!」

「大事にしてくれよ!」

「うん。 絶対に大事にする」


 ライラの目線まで腰を落として、ライラにペンダントを付ける。

 恥ずかしそうにしているのは俺が着けているからか、通行人に見られているからかは分からない。


「よし、いいぞ!」


 着け終わった事を伝えると、胸のペンダントトップを、触りながら何度も嬉しそうに眺めていた。


 それからも買い食いをしながら露店を見て回っていたが、二人共満腹になってしまったので帰る事にした。

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