第175話 ユイの気持ちと仕事好き?なふたり! 

「へぇ~、タクトが男性を連れて来るなんて、珍しいじゃない!」


 マリー達、四葉商会の従業員達に、トグルが引っ越してくる事を説明する。


「なんでだ? たまたま女性が重なっただけだろ?」

「ふ~ん、てっきりハーレムでも作るのかと思っていたわよ!」

「……もしかして、マリーもその気だったのか?」

「何言ってるの! 冗談に決まっているでしょ!」


 冗談のつもりだったが何故か、烈火の如く怒っている!


「その……迷惑かけるかも知れんが、宜しく頼む」


 マリーの勢いに押されてか、萎縮した状態でトグルが挨拶をした。


「あぁ、ゴメンナサイ。 いつもはこうじゃないのよ、迷惑掛ける人物は決まっているから、気にしなくていいわよ!」

「マリーは、いつもこんな調子だぞ」


 マリーが俺を睨む。

 しかし、迷惑かける人物というのは、間違いなく俺の事だろう。



「ユイ、あなたも休みなさいよ」

「はい」


 返事はするが、休もうとしない。


「ユイは、今日もこんな感じか?」

「えぇ、本人の気持ちも分るし難しいわね……」

「俺が少し話をしてみる」


 ユイの仕事を止めさせて、俺の部屋で話をする。

 緊張というか、怯えている感じで座っている。


「ユイ、お前が一生懸命なのは分っている。 少しは身体を休める事も必要だぞ」

「はい、しかし……」

「お前が倒れたら、皆困るし悲しむんだからな」

「……はい」


 威圧的にならないように、気を配ってはいるが難しいな……


「主、発言いいですか?」


 クロが、影から人型で現れた。

 クロが発言を求めてくる時は、大体俺が困っている時や対処出来ない様な話の時だ。


「あぁ、いいぞ」

「ユイ様は、自分が捨てられる恐怖があるのではありませんか?」

「捨てられる恐怖?」

「はい、役に立たないと不要とみなされて、主に見限られるという事です」

「……ユイ、そうなのか?」


 俺の言葉に泣きながら、小さく頷いた。

 何の取柄も無い自分を助けてくれた俺に対して、恩を返していないばかりか役立たずとして、又捨てられると思っていたらしい。

 少しでも自分が必要とされるように、ひたすら働く事で解消しようとしていた。


「安心しろ、俺がお前を捨てる事はしない。 お前が俺に支払う報酬は何だ?」

「……幸せになることと、困った人を出来る範囲で助ける事です」


 ユイは、俺が言った報酬を忘れてはいなかった。


「分かっているなら、幸せになれる事を考えながら仕事をすればいい」

「はい」

「そして、幸せになれるような好きな事を見つけたら、思う存分やればいい。 焦らずに、見つければいいからな」

「はい」

「マリーやフランを見てみろ、仕事が死ぬほど大好きだからヘトヘトになるまで、嬉しそうに頑張っているだろう」

「そうなんですね」


 ユイの顔に笑顔が戻った。

 突然、扉が開いてマリーとフランが立っている。


「私達は、仕事が死ぬほど大好きなんじゃないからね!」

「そうよ! タクトに、こき使われているだけだから!」


 ふたりして抗議している。


「お前ら、扉の外で盗み聞きしていたのか?」

「あっ!」


 マリーとフランは、お互いに顔を見合わせる。


「だって、ユイが心配だったから……」

「そうよ、タクトがユイを虐めてないか不安だったのよ!」

「……お前らの俺の評価って、相変わらず酷いな」

「日頃の行いでしょ!」


 最後は、声を揃えて叫んだ。

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