第177話 製作の喜び!

 ライラを家まで送って行き、アラクネ族の集落に来た。

 クララを呼び、カンナのデザインを見せながら説明をする。


「そんなに難しくは無いわね。 三日あれば十分よ」

「そうか、これを優先で頼む」

「首のタグに、四葉商会のマークである四葉の刺繍を頼む」

「……タグって何? それに四葉のマークって?」


 ……そうか、この世界では『タグ』というものが存在しないのか!


 俺は、タグについて簡単に説明をした。

 タグといっても、俺が言っていたのは『ネームタグ』になる。

 背中襟元の内側に、数センチの布に四葉のマークを刺繍して、それを輪が出来る様な感じで縫い付けて欲しい。

 四葉のマークは、背中を見せる。

 【アイテムボックス】から、着替えの刺繍入り村人の服を出して、クララに手渡した。


「ふ~ん、よく分からないけど、タクトから依頼された服には全てその『ネームタグ』というのを付ければいいのね」

「そうだ、その四葉マークが付いている服は、クララ達が作った服の証明にもなる!」

「なるほど! 四葉マークの意味を知っている人には私達の服って事が分かるのね!」

「そうだな、あくまでクララ達アラクネ族が、四葉商会の服を仕立てている事を知っている事が前提だがな!」

「隠し文字みたいで、それはそれで嬉しいわね!」


 とても嬉しそうに話す。


「それと、これも出来れば急ぎで頼みたい」


 ウェディングドレスと、タキシードの写真を見せる。


「なによこれ!」


 クララは大きな声を上げて驚く。

 そして、他のアラクネ達を呼び始めた。


「この服を作っていいの?」

「そうだ」


 アラクネ達のテンションが、一気に上がるのが分かった。

 それぞれが、各部位の縫製についてなにやら嬉しそうに議論し始めた。


「……そんなに嬉しいのか?」

「当たり前でしょ! 今迄作った事のない服を作るのよ!」

「そうか、それならこのドレスをアレンジしたのも好きに作って良いぞ」

「……ドレス?」

「あぁ、この服の名称だ。 正確にはウェディングドレスと言うがな」

「本当に、このウェディングドレスというものを作っていいのね!」

「勿論だ」


 クララの複眼が、輝いて見えるのは気のせいだろうか……

 他のアラクネ達にアレンジの事をクララが伝えると、更にテンションが上がった様子で、複数のチームに分かれて各チーム毎に、先程とは別に打ち合わせに入った。

 このチームの連携が、短納期でも対応出来ている一環なのだろうな!


「まだ、あるがいいか?」

「今度は、何!」


 期待した眼で俺を見つめる!

 ……俺の服なんで、そこまで期待されると言いづらいな。


「なかなか、斬新なデザインね?」

「そうか?」


 上は、ノースリーブのVネックに、短めの上着をイメージした。

 下は、多少ゆったりしている作りにしている。

 それとは別に、長めの正装っぽいデザインがある。


「他に要望はある?」

「服の背中には、四葉刺繍を入れてくれ」


 先程見せた背中にある四葉の刺繍をもう一度見せる。


「分かったわ。 依頼の服はアラクネ族の総力をあげて二日で仕上げるから、二日後にはウェディングドレスのデザイン相談には乗ってよね!」

「俺としてもそれは、助かる!」

「それと……」


 恥ずかしそうに、俺と仲間フレンド登録したいと申し出たので、「別にいいぞ」と答えて仲間フレンド登録をした。


 アラクネもドワーフと同じく職人気質なんだと感じた。

 報酬を考えておかないとな……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る