第145話 それぞれの帰路!

「何が起こったんだ?」


 一瞬で景色が変わったので、皆戸惑っている。

 ゴンド村付近に【転移】したと伝えた。


「転移魔法だと! タクト、お前本当に人間なのか?」


 ゾリアスは不思議そうに俺を見ていた。


 アルに連絡をして、ゴンド村まで来る様に頼むと「スグに行く!」と嬉しそうに答えてくれた。


 ゴンド村まで歩いていると、皆が急に足を止めた。

 ゾリアスは戦闘態勢に入っている。


「どうした?」

「お前、あれが見えないのか?」

「ドラゴンだろ?」

「あぁ、村が襲われている!」


 ……そう言う事か!


「気にするな、あの村はドラゴンと友好関係を結んでいるから大丈夫だ」

「はぁ? そんな事あるわけないだろうが!」

「まぁ、自分の目で見れば分かるさ」


 気にせずに進むように言う。


 村の外では、子供のドラゴンと村の子供達が遊んでいる。

 近くには、リズとシズが老夫婦と共にその姿を見ていた。


「リズ、シズ!」


 声を掛けると、振り向いて昨日会わなかった事に文句を言われた。


「ラミア族の方が一緒とは珍しいですね」

「驚かないのか?」

「はい、数回ですがラミア族の方もドラゴンに乗ってこの村に来ますから。 今日も数人来てますよ」


 俺が驚く以上に、ゾリアス達が驚いていた。


「なんなんだ、この村は……」


 ゾリアスが発した言葉に対して老婆が、


「タクトさんの村と言ってもいいですかね?」


 優しい口調で語った。

 続いてにリズが、


「先程、アルシオーネ様もいらっしゃいましたよ」


 アルの到着を報告してくれた。


「タクト、さっきから聞こうと思っていたんだが、アルシオーネって魔王と同じ名前だよな?」

「あぁ、その魔王本人だ」

「嘘だろう! 魔王だぞ!」

「ドラゴン同様に村に害は無いから、会えば分かるさ」

「もうお前がよく分からん……」


 村の入口には、アルとグランニールが居た。

 その隣には、ラミア族の女性が居た。


 アルは俺を見つけると、大きく手を振っていた。

 俺も手を小さく振って返す。


「タクト、どうしたんだ?」

「どうしたじゃない! お前の種族を届けに来たんだ!」


 隠れているつもりなのか、一番後ろに居る。


「……ご無沙汰しております。 アルシオーネ様」

「ん? ウーニラではないか。 なんでタクトと一緒なんだ?」

「お前を敗北させた奴を倒す! と、考えている奴等が居るんだよ」

「なんじゃと! ウーニラ本当か?」


 ウーニラと呼ばれた龍人は、申し訳なさそうに、


「はい、その通りです。 しかし目的達成する事も出来ずに……」

「何を言っておる。 目の前のタクトが妾を倒した奴で、妾の師匠だぞ!」


 ……やっぱり、そうなるよな。

 バレないように努力はしたんだが……


 ウーニラは勿論だが、ゾリアスは大きく口を開けたまま、俺を指さして何かを言いたそうだ。


「ウーニラ! お前達では敵わないから止めておくのじゃ! 妾とネロの最強魔王ふたりの師匠じゃぞ」


 悪気が無いのが分かっているが、前回の冒険者ギルドの時と言い、アル達が喋る度に俺の評価が変な方向に変わる。


「……最強魔王ふたりの師匠だと!」


 ゾリアスは、その場に座り込んでしまった。


「大丈夫か?」


 手を差しだす。


「あぁ、すまない。 状況を理解するのが追い付いていない」


 差し出した手を握り立ち上がった。

 アルの方を向き、


「じゃ、ウーニラはお前が責任もって集落まで帰せよ!」

「了解じゃ!」

「ところで、隣のラミア族は?」


 ウーニラの件が片付いたので、ラミア族の対応をする。


「初めまして、タクト様。 私はこの付近一帯のラミア族首領の『レビン』と申します」

「レビンの集落は、グランニールの下にあっての、さっきまで三人でお茶をしておったのじゃ!」

「そうか、それなら話が早いな」

「はい、種族の者を保護して頂き有難う御座います」


 レビンは俺に礼を述べるが、


「保護したのは俺じゃない、このゾリアスだ。 礼ならゾリアスに言ってやってくれ」


 ゾリアスを紹介する。

 急に振られた事で慌てている。


 レビンはゾリアスに礼を言うと、照れているのか言葉に詰まりながら事情などを説明していた。


「タクト、そのハーピーの娘はどうするんじゃ?」

「とりあえず、ゴンド村が承諾してくれれば、暫くはここで過ごして貰うつもりだ」

「そうか、ハーピーは季節によって場所を変えるから、その方が良いじゃろ」


 まずは、村長に挨拶をしてから受け入れてもらえるかどうかだな……

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