第144話 隠された住人達!
「タクト、昨日の話の前に頼みがある」
「どうした?」
「お前が、シロ様達を従者にしているという事は、魔族に対しての偏見も少ないという事でもいいか?」
「あぁ、魔族に対する偏見は無いな。 攻撃してくるなら別だが!」
「それを聞いて安心した」
ゾリアスは、昨日は人族のみ俺に治療をさせた。
魔族がいるが、表立って話すことも出来ないし、俺が魔族に対する偏見も確認していなかったからだ。
匿っている魔族の治療を頼まれたので、話を後回しにする。
「魔族って、どれだけ居るんだ?」
「当然だが、多くは居ない。 ラミアの娘がふたりに、男性のコボルトが三人、それにハーピーの娘と龍人の少年がひとりづつだ。 あとは半魔族がふたりだな」
「よく今までバレなかったな?」
「あぁ、このスラムには、地下洞窟を掘っている家もあって、簡単には見つからない」
一軒の家で半魔族は一部屋に固まっていた。
家の前には、ウルガー達が見張りと気づかれない様に待機している。
半魔族達は、皆大きな怪我はしていなかったが【治癒】と【回復】を掛けてから、服の中で【アイテムボックス】から食べ物と飲み物を出す。
「好きなだけ、食べていいぞ」
ゾリアスといる為か、さほど警戒されることもなかった。
半魔族と言うか、人型なので半魔人なのだろう。
見た目も、人族と差異は無い。
半魔族自体が元々の数が少ない。
しかし、人族と魔族のどちらの種族からも、汚らわしい存在と認識されている為、簡単には受け入れて貰えない。
当然、生きていくのも大変だろう。
少しだけ話を聞いてみるが、それぞれが『吸血鬼』『ミノタウロス』との混血だと教えてくれた。
吸血鬼は分かるが、ミノタウロスのイメージは大きいくて牛の頭のイメージだが……
吸血鬼との半魔人の娘は、血を欲する要求は無いものの陽の光が苦手で、日中は全身を覆う物が無いと外に出る事が出来ないと教えてくれた。
ミノタウロスの男は、見た目的特徴は体の大きさが一番だ。
明らかに2m以上はある。
角も敢えてないないので、大男と言われればそれまでだ。
性格も攻撃的でなく内向的なのが、口調からも分かる。
ふたりに礼を言い、隣の部屋に行く。
ゾリアスが家具を移動させると、床に地下への扉があり、その扉を開く。
ゾリアスが、たいまつに火を点けようとするので、俺が【光球】を出す。
驚いていたが、時間もないのですぐに地下へと進んでいく。
奥から殺気らしきものを感じるのは、侵入者と思われているからだろう。
ゾリアスもそれを感じ取ったのか、
「俺だ! ゾリアスだ!」
安心させるように名乗る。
二〇メートル程進むと、人影らしき者が見えた。
ゾリアスが先に行き、俺達は少し離れて待つことにする。
警戒心を取り払うことが先決だ。
「タクト、来てくれ!」
呼ばれたので、奥に進む。
先程、話に出てきた七人がそこに居た。
「敵ではない。 皆言葉は通じるか?」
ゾリアスが、言葉は問題ないと言う。
まず、見た目的に衰弱の酷いハーピーから【治癒】と【回復】を掛ける。
その後、ラミアにコボルトと続けて、最後に龍人に魔法をかけ終わると、【アイテムボックス】から、食料と飲み物を出して、好きなだけ食べるように言うと、無言のまま食べ始めた。
「タクト、今のはもしかして【アイテムボックス】か?」
……隠すことを忘れていた。
たまに、他の事に集中しすぎるとこういう事になるので、注意はしていたのだが……
「あぁ、そうだ。 出来れば秘密にしてくれ!」
「分かった」
皆が食べ終わるまで、暫く待ってみる。
「タクト、本当にお前には感謝しっぱなしだな」
「別にいいよ。 俺だって好きでやっている事だから。 それより、この穴は外へも繋がっているのか?」
「あぁ、非常用の逃げ道だ」
ゾリアスと話していると、龍人が寄ってきて俺に礼を言ってきた。
他の者も食べ終わったらしく、俺が見ているのを気付くと頭を下げた。
「ところで、なんでこんな地下というか街の中に居るんだ?」
ゾリアスに説明を求めた。
龍人とコボルトは、街の外で奴隷商人の商品(奴隷)だったらしいが、商品にならないと判断したのか契約解除のまま、放置されていた所をゾリアス達が保護した。
ハーピーは、怪我をして倒れていたのを発見したが怪我が激しい為、外は危険と判断してこの場所まで運んだ。
ラミアは、より強い魔物に襲われている所を助けたが、目印の魔力が消えてしまったらしく、迷子になり帰る場所が分らないため、保護したそうだ。
……それぞれ事情は違うが、ゾリアスに救われたという事か。
奴隷は、商品にならないと判断されると、食費等のコストがかかる為、魔物に殺させるという事だな?
それと多分、ラミアが迷子になった原因は俺っぽいな。
「よくバレなかったな!」
「あぁ、地下にも地上にも秘密の抜穴が有るからな」
城壁には一部取外可能な場所があるしく、俺位の背格好であれば通り抜け出来るそうだ。
「それで、この子達をどうするんだ?」
「そこが、問題だ……」
ラミアとハーピーは、仲間の元に帰りたい。
コボルトと龍人は黙ったままだ。
「俺が、ラミアとハーピーは故郷に帰してやる。 コボルトの悩んでいる話はあとで聞く」
龍人が気になったので質問してみる。
「龍人なら、アル。 アルシオーネが種族の頭だよな?」
黙っていた龍人の少年が口を開いた。
「はい、その通りです。 アルシオーネ様の仇を取ろうと集落を出たのですが、騙されて奴隷にされてしまいました……」
「仇とは?」
「その~僕は偵察なのですが、アルシオーネ様を倒した者を一目確認してから、帰還する予定でした」
「アルシオーネは知っているのか?」
「いいえ、集落の一部だけで進めていた計画なので……」
……アル! 俺にこれ以上問題事を持ってくるなよ!
「お前の目的は分かった」
コイツは、問題なく集落に帰すことが出来る。
「コボルト達は、何か問題があるのか?」
警戒心が残っているのか、なかなか話そうとしない。
「無理には聞かない。 話したくなったらでいい」
無理に聞いても仕方ないので、後回しにする。
ラミアは、迷いの森まで行けば何とかなると思うので、ハーピーの集落について【全知全能】に質問をする。
ハーピーは、少人数で固まり時期によって場所を変えるので特定は不可能だった。
……困ったな。
ハーピーに覚えている事を聞くが、よく分からないみたいだ。
最後には、空を自由に飛べてここら辺で待っていれば、いずれは仲間と会えると言いだした。
「空を飛べるところで、安全であればいいのか?」
小さく頷いた。
とりあえず、善は急げだ。
「ラミアとハーピー、龍人とゾリアスは俺の方に寄ってくれ」
何のことか分からないようだが、言われるままに俺の方に寄って来た。
コボルト達に「ちょっと待っててくれ!」と伝えて、ゴンド村に【転移】する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます