第142話 分割払い利子の概念!

 ロイドと別れて、子供達の騒がしい声がする方に向かうと、モモが居た。


「元気そうだな!」

「あっ! タクトさん、お帰りなさい!」


 モモの何気ない一言に、心が癒された。

 困った事が無いかを、他の村人同様に聞いてみる。


「病気や怪我した時の対応がすぐに出来ないのは、心配になりますね」

「大きい怪我や病気の時は、すぐに俺を呼べばいい。 治療薬も出来る限り今度、持ってくる」

「ありがとうございます」

「他には無いか?」

「ん~そうですね……特には無いですね。 毎日、子供達の成長が楽しいですから!」


 本当に、子供好きなのだな。


 モモと別れて、ドラゴンの所まで行き【念話】で簡単な挨拶と礼を言う。


 神祠によると、クラツクが木像を持って立っていた。


「納得する物は出来たか?」

「納得は出来ていませんが、お見せする位の物は出来たかと思います」


 木像を差し出した。


 以前に比べて格段に上手くなっている。

 商品としても問題ない。


「よく頑張ったな!」

「ありがとうございます!」


 嬉しそうに返事をする。


 これなら、出来た物を買い取るので金額を言ってくれと言うが、自分では値段が付けられないという。

 売値も決めていないので、とりあえず完成している八体を金貨四〇〇枚で買い取る。

 クラツクは、貰いすぎだと言うが今回は、材料込みだと納得させる。


「クラツク! いいか、俺はお前をただ働きさせるような事はしない。 だからこそより良い作品を作ってくれ!」


 クラツクは、涙を流して頷いた。

 ……泣くような事は、言っていないよな。


 双子のシズとリズにも会いたかったが、見当たらなかったので村長に伝えてジークに戻った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「お待たせしました」


 客間で待っていると、リロイが入って来た。


「こっちこそ、急に悪かったな」

「いえいえ、私よりも詳しい方をお連れ致しました」


 リロイは、横の『ツムリ』という大臣を紹介した。


「初めまして、タクト殿。 しかしあの土地を購入しようなんて、思い切りましたね」


 たしかに、スラムの場所はジークの端にあり、利便性も悪い。

 周りには店もなく、武力行使した際に傷ついた建物がある為、スラムは拡大している状態だ。


「買うかどうかは、金額次第だ。 莫大な資金が必要になるだろ?」

「そうですね、個人で払える金額ではないでしょう!」

「因みに、幾らだ?」


 ツムリが、そっと紙を出した。

 額面には、金貨三〇〇万枚が書かれていた。

 まぁ、土地の広さなら俺の買った家の四〇倍はある。

 立地条件の悪さや、スラムという事でいえば妥当な金額だろう。


「やはり、手が出ないな……」

「スラム排除という名目であれば、補助として半額には出来ますよ!」

「そうなのか?」

「はい、地域の治安向上の為の経費という事になります」

「支払いは、一括でないとダメか?」

「そうですね、金貨一〇万枚をえーっと、ちょっと待ってくださいね」


 なにやら計算を始めた。


「一五回で払うってことか?」


 計算し終わったツムリが、


「そうです! さすがタクト殿ですな!」


 こんな計算もすぐに出来ないような奴が、行政の一角を担っているなんて……


「利子はどれ位だ?」

「利子とは、何ですか?」


 もしかして、利子の概念も無いのか?


「単に金貨一〇万枚を一五回で払われても、得にならないだろう?」

「えっ、売った金額を支払ってもらえるから、問題ないのでは?」


 ……この世界の概念が変なのか、俺が変なのか。

 今回は、俺の方にメリットが大きい為、このままとする。


「因みに、支払い回数は変更出来るのか?」

「はい。 タクト殿はランクSの商人ですので五〇回までなら大丈夫ですよ」

「そうなると、一回の支払いは金貨三万枚だな」


 考えていたツムリが答えを出す。


「ランクSの商人ともなると、すぐに計算が出来るのですね!」

「そうだな」


 反論するのも面倒くさいので、適当に答える。


「もし、支払いが滞った場合はどうするんだ?」

「三回までは、待ちますが三回目になると売買契約は無効となります」

「なるほど、三日後までに返事する事でもいいか?」

「構いませんよ。 他に買う人なんていませんから」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 家に戻ると夕食の準備が終わったところだった。


「あっ、タクトおかえり!」


 扉を開けると、フランが俺に気付いた。


「ただいま!」


 挨拶を返す。


 皆揃っているので、ゴンド村の状況を話すと懐かしそうに聞いていた。

 フランには、「ロイドに連絡位しておけよ!」と言うと「分かった」と素直に返事をする。

 ゴンド村の話が終わった後に、続けてスラムの話とスラム購入の話をする。


 当然、皆が驚く!


「貴方は、相変わらずね!」


 呆れた口調で、マリーが話す。


「スラムで生活しているとはいえ、普通の奴らだ。 出来る事があればしたい」

「スラムを買って、どうするの?」

「半分は売りに出して、半分は四葉商会として何かをする!」


 暫く沈黙の後に、再びマリーが、


「貴方の事だから、何か企んでいるんでしょう?」

「あぁ、この街の観光スポットにする」


 特に案も無いので、適当に笑って答えた。


「もう、何を言っても無駄よね。 任せるわよ、みんなもそうよね!」


 フラン達も頷いている。


「ありがとう、でもスグにと言うわけではないので、安心してくれ!」

「安心は出来ないけど、驚かせることは止めてよね!」


 フランは、俺をじっと見つめる。

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