第129話 イリアの手料理!
イリアが昼飯を作る傍らで、俺とクロは二階の改築に取り掛かった。
壁と扉をつける工程しかないため、そこまで時間が掛からなかったが、壁の向こうで料理をしているイリアと、手伝っているエイジンの話し声は良く聞こえていたが、少し心配になる……
フランが、写真が出来上がったと、俺に届けてくれた。
写真の出来はいい。
フランに「さすがだな!」と褒めると「まだまだよ!」と返ってきた。
道具は、使えば使うほど特徴が分かり、より良い物が出来る。
この世界で、写真をこれだけの枚数を撮っている奴は、数える程しかいない筈だ。
間違いなく、カメラを使わせたらフランの右に出るものはいない。
「昼から、領主の屋敷に行くから」
「はい、でもこの格好でいいんですか?」
前回は、急に連れて行ったので普通の服だったが、やはり領主にあうのであれば正装なのだろう。
「好きにすればいいぞ。 俺はこの服しかないのでこのままだけど」
「そうね、私も正装なんて持っていないから、とりあえず一番いい服に着替えるわ」
「分かった」
一階の改築に入る前に、リロイへ最後の打合せ連絡をする。
今日の昼から、服の試着と式前の写真撮り。
それと、最終スケジュールの確認だ。
特に急ぎの用事は無いらしいので、いつでも良いと返事を貰う。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さぁ、召し上がってください!」
イリアの腕によりを掛けた料理が出された。
結論から言うと、イリアは料理に関しては残念な子だった……
エイジンが手伝った事により、なんとか食せるレベルになっている。
エイジンの手伝った率の高そうな物から、食べていく。
食事状況を見ながら、他の人の表情で判断しながら食事を進めた。
「ほら、タクトこれも食べて!」
一方的に俺の皿へ、未確認の料理が投入される。
シロも少し食べて、服の仕上げがあるといいマリーとライラと共に、席を立つ。
クロも改築があるからと、申し訳なさそうに席を立った。
「エイジンは、知っていたのか?」
「……はい。 シロ様と食事としか聞かされていなかったので、まさかイリアの料理とは……」
「そこ、何をコソコソと話しているんですか?」
「思ったより、ボリュームが多いんで食べ切れなくて勿体無いから、エイジンが夕飯に持って帰っていいか聞かれたんだ!」
「ん、なぁ!」
スマン、エイジン!
俺達の為に、人柱となってくれ!
「そうなのね、そういう事なら持ち帰れるように包むわ!」
「あぁ、頼む!」
「それより、イリアは食べないのか?」
「そうね、私も食べようかしらね」
料理を口に持っていき、食べる。
イリアの顔が青くなっていき、そのままトイレに駆け込んだ……
その料理は、まだ誰も食べていないな……
数分後に、トイレから出てきたイリアは落ち込んでいた。
作ってくれといった俺も悪いが……
「味見はしないのか?」
「猫舌だから、最初に舌を火傷してからはしてない……」
猫人の猫舌は想定していなかった。
たしかにそうだ、今後は気をつけよう。
「まぁ、気にするな。 誰でも失敗はあるからな」
「シロ様の前で、こんな失態を犯すとは……」
気の毒なくらい落ち込んでいる。
エイジンが、イリアを連れてギルド会館に一緒に戻ると言うので頼んだ。
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