第128話 喧嘩はダメ!
エイジンとイリアは、見慣れない姿にお互いが照れている。
緊張しながらも撮影に協力をしてくれている。
バルコニーでの写真を撮り終えたので、シロにふたりの間に入って写真を撮るように言う。
ふたりが、より一層緊張しているのが分かる。
しかしフランが上手に、自然体になるように話したりしていた。
「こう見てみるとシロは、ふたりの子供のようだな」
ふと呟いた。
ふたりとも顔を真っ赤にして、恥ずかしがっている。
この世界の住人は、皆ウブなのか?
クロが何かを思い出したように、俺に話しかけてきた。
「主、先程の報酬の件ですが思いつきました」
クロは、俺とシロと三人で写真を撮りたいと言って来た。
意外だった。
あまり馴れ合いが好きでもないのかと思っていたが、そうでもないのか。
俺自身、クロの事をよく分かってやれていない事が、非常に申し訳ない。
シロを呼び、三人で写真を撮る。
普通に立っている写真や、腕や肩を組んだりしてフザケている写真等を数枚撮った。
「タクトも、そんな笑顔するんだね!」
カメラ越しにフランが言う。
マリーも同意見のようだ。
「そうか? いつも笑っているぞ」
不思議なので話し返すが、フラン達には心の底から笑っていないように見えるみたいだ。
あまり意識した事がなかったが、気を張り詰めているせいなのかも知れないな……
一階に下りて、イリア達を屋上と同じように、写真を撮る。
「ここで、お披露目になるから覚悟しておけよ!」
「やはり、恥ずかしいですね」
エイジンに、なんの事かと尋ねられたので、事の経緯を全て話した。
「……タクトさん、無理を承知ですが御願いがあります」
昨日今日と、エイジンの無理なお願いを聞いてばかりだな。
エイジンの御願いとは、出来ればイリアのウェディング姿を直に見せるのは勘弁して貰えないかという内容だった。
写真は問題無いが、彼氏として彼女が人前で美しい姿を見せるのはツラいのだろう。
その気持ちは、分からなくはない。
「あぁ、いいぞ」
俺が良かれと思って答えると、イリアがすかさず、エイジンに文句を言う。
「なんで、私が決めた事に貴方が口を出すんですか!」
御立腹の様子だ。
勝手に、自分の意見が覆されたことが気に入らないのだろう。
その後も、俺達の目の前でウェディング姿のふたりは口論をしている。
ふたりともインテリ系なので、喧嘩はこんな感じになるのか?
「ふたりとも、喧嘩はしないで仲良くして下さい」
シロが仲介に入ると、スグに口論は収まった。
流石と言うべきか!
「要するに、エイジンは綺麗なイリアを人前に見せたくないんだから、イリアには違う事を頼む」
「……そういう理由であれば、分かりました」
イリアは、渋々承諾した。
「エイジンの写真は使っても、会社的に問題ないのか?」
「報酬を貰っていないのであれば、問題ないですね」
「いや、報酬は写真だろう? 問題ないのか?」
「報酬というのは、貨幣になりますのでこの場合は大丈夫です」
「そういうものなのか?」
「はい」
よく分からないが、ここはエイジンの言葉を信用するとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます