第123話 写真の売り込み!

 ギルド会館の受付で忙しそうなイリアにクエストの依頼について尋ねる。

 この忙しい時にと文句を言われるが教えてくれた。


 内容は『警備』だが、信頼できる人選で依頼したいというと、ギルマスに一任する特殊な方式のクエスト依頼方法があるようだ。

 

 その場で、結婚式の警備は四葉商会から冒険者ギルドに正式にクエストとして依頼した。

 俺からの警備と言えば、シキブの方で意味が分かるだろう。


 イリアに礼を言う。

 冒険者ギルドでの用事は終わったので、グランド通信社との打ち合わせがある為、ローラの部屋に行く。

 扉に『試験場にいる』と紙が貼ってあったので、試験場に行く。

 既にストエ達との打ち合わせが終わっていたようだった。

 ローラは自分の部屋に戻ると言って、部屋を出て行った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「これは凄い!」


 フランが撮った写真を数枚見せると、ストエが驚いた。

 さすが本職なのか、すぐに違いが分かるようだ。


「それで、この写真がなにか?」

「この写真は、四葉商会でしか撮れない写真だ。 次にこれを見てくれ」


 リロイとニーナの写真を出した。


「これは、領主のリロイ様ですが隣の女性は?」

「婚約者だ。 今回、二人の結婚式を取り仕切る事になっている」

「なんですって!」

「まだ未発表だ。 当然、写真も俺達が一番良い場所で撮る」

「そうなんですか!」


 この話は、まだグランド通信社しか話をしていないと伝えると、「それは、有難う御座います」と感謝される。

 前置きはこれ位にして、本題に入る。


「単刀直入に言うが、この写真一枚を金貨五〇〇〇枚で買い取って貰いたい」

「また、これは高値ですね」

「あぁ、シキブの時は金貨三〇〇〇枚なのは知っているからな」

「領主という知名度と情報、それに写真の出来を比べても妥当な金額だと思うが?」

「そうですね、一旦持ち帰っていいですか?」

「ダメだ。 この場で決定しないなら他社に売る」

「そんな、急ですね……」

「情報は持ち帰った瞬間に、都合のいい様に勝手に書き換わるからな。よく知っているだろ?」

「……上司へ許可を取ってもいいですか?」

「この場での確認は認める」


 ストエは考えていたが、スグに上司と連絡を取る。

 嘘は無く、正確に伝えていた。


「領主様の御婚約者の御名前も、御存じなのですか?」

「当然知っている。 買取するなら名前も教える」


 写真を見ていない上司に説明するのが難しい様だか、四葉商会の名前で納得したのか、最終的には承諾を得た様だ。


「その金額で、買わせて頂きます」


 ストエには、婚約者はニーナという名前だと教える。

 その他に、サービスという事で結婚式の日程。

 そして噴水での出会いを教えた。


「これは、いい記事になりますよ。 購入金額以上の価値はあります」

「そうだろう」


 高いと思わせた後でお得な情報を出した方が、購入した方は損した気分にはならない。


「新聞には、いつ載るんだ?」

「時間的に、明日は難しいので明後日になりますね」


 予定通りだ。


「口約束になりますが……」


 ストエは、結婚式の写真も出来たら売って貰いたいと言って来た。

 当然そうだろう。

 前回のシキブの結婚式記事で部数が格段に伸びた。

 リロイの結婚式でも、それを見込んでいるのだろう。


「分かった、グランド通信社を優先に考えておく」

「ありがとうございます」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る