第124話 初契約交渉!

 ストエが連絡をしたのか、上司と従業員が金を持って来た。

 上司は、『エイジン』と名乗った。

 名刺を受け取ると、この街の支社長だった。

 『猫人族』なのは、見た目でなんとなく分かった。

 ストエもまさか、エイジンが来ると思っていなかったのか、若干緊張している。


 エイジンは、写真を見ると驚いていた。

 今迄とは比べ物にならないと絶賛する。


 すぐにストエと契約書を交わして、写真を渡した。


 渡し終わると、エイジンが


「ところで、タクト様」

「なんだ、今の段階ではこれ以上の情報は無いぞ」

「いえ、違います。 御提案をさせて頂きたい」


 エイジンの提案は、『四葉商会』と『グランド通信社』での業務提携だった。


 グランド通信社としては、この様な写真が他社に渡る事が脅威らしく、この技術を持っている四葉商会と独占契約を結びたいらしい。


 契約内容次第だが、俺としては悪くない提案だと思う。

 気になるのは、専属と言う事だと行動に制限が出てしまうし、フランへの負担が大きくなる事も考えられる。


「条件が曖昧だと、返事が出来ないぞ」


 エイジンも当然分かっているらしく、詳細な条件を伝えてきた。

 グランド通信社から依頼した写真は、当然だが全てグランド通信社が買い取る。

 依頼とは別に、新聞に載せられるような写真を撮影した場合や、他社からの買取連絡があれば、写真の内容に関係なく、優先的に他社から提示された金額以上で、グランド通信社が買い取る。


「他社からの買取金額を俺達が嘘ついたら、そっちが損しないか?」

「そこは、四葉商会を信用すると言う事になります」

「なるほどね。 写真の金額はどうなるんだ?」

「弊社の基準では、金貨五〇〇枚から金貨一五〇〇枚が、買い取り価格になります」

「そっちの言い値になるって事か?」

「いいえ、それではこちらの信用を無くす事になります」


 さすが、大手通信社の支社長だけある。

 情報と言う曖昧な物を商売にしているので、信用がいかに大事かが分かっている様だ。


 エイジンは、会社としての考えを話す。

 グランド通信社はシキブの結婚式で写真の重要性を再認識したのか、今迄挿絵だったのを写真に変えていく方針決定をした。

 今回の写真の出来は、ある意味革命的なので絶対に他社への流出は防ぎたいと願い出た。


 基本的な依頼内容は、この街での出来事に関する撮影や、王都から依頼のあった物の撮影程度だという。

 依頼金額は、一件につき一〇枚撮影で、金貨二万枚

 これは、内容に関わらずと補足した。


「それでは、そっちが損しないか?」

「それは、損を生じてでも定期的に仕事を依頼しないと、信用は築けません」

「なるほどな、あんたは信用出来ると言いたいわけだな」

「それは、タクト様もです」


 なかなか、交渉術に長けているな。


「従業員が危険だと判断した依頼は、断らせてもらうがいいか?」

「それは、もちろんです。 どうしても弊社として依頼したい場合は、別途交渉とさせて頂きたいと思います」

「あぁ、分かった」

「そっちの依頼以外で撮った写真は、他社に売らずに個人に売るのは問題ないよな?」

「そうですね……他社が興味を引きそうなものは、事前に御相談頂きたいと思っております」

「そうだな。 その線引きが難しいが出来る限りは協力する」

「ありがとうございます。 二時間後に、私が四葉商会に書類をお持ち致しますので、宜しく御願い致します」

「……四葉商会の場所を、何故知っている?」

「我社は、情報を扱う新聞社ですよ。 バケモノ屋敷を買ったのが四葉商会と言う情報は入手済です」

「さすが、大手新聞社だな。 街の情報も漏らさずに収集しているという事か!」


 エイジンは何も答えずに笑っている。


「まだ、引っ越していないので何も無いが、そこは勘弁してくれよ!」

「ありがとうございます」

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