第121話 浪費に注意!

 ギルド会館から戻ると、フランが出社? していた。

 挨拶をするが、何か言いたそうだ。


「どうした、何かあったか?」

「実は、タクトに御願いがあるんだけど……」


 改まって話をしてきた。


「物凄く言いづらいんだけど、前借りって出来る?」

「はぁ? いきなりか」

「……はい」


 フランは、申し訳なさそうに事情を話し始めた。

 カメラを支給された喜びから紙を大量に買い込み、部屋でひたすら写真を取っていたら、宿屋代が無くなったらしい。

 食費等も全てつぎ込んだ為、ほぼ一文無しだそうだ。


 俺の中でフランは、しっかり者のイメージがあったのだが……


「紙については、四葉商会として払うから購入額を教えてくれ」

「……でも」

「いい写真を撮る為にした事なんだから、今回はこちらで支払う」

「ありがとう」

「これで、暫くは生活は出来るだろう」

「あのね、実は……」


 宿屋代は前払いが原則だ。

 俺もこの街に来てからは、そうしてきた。

 今日の宿屋代が足りないという事はないはずだが……


「宿代が勿体ないので、部屋余っていたら住まわして貰えないかな~って……」


 ……こいつは、参考書買うと言って貰った金で、漫画とかを買うタイプだな!

 しかし、フランがここに住んでもらった方が俺としてもメリットがある。

 悪い相談じゃないが……


「ここ、バケモノ屋敷だぞ!」


 この家が噂のバケモノ屋敷と聞いて、気を失ったのにどういう心境の変化なんだ?


「うん。 だけどゴブリンに捕まった時に比べたら、全然マシだと思うの。 それにタクトが、居るから何かあっても大丈夫でしょ?」


 たしかに、ゴブリンの集落よりはマシだ。

 俺も居るから、なにかあれば対処は出来る。


「分かった。 好きな部屋に住んでいいぞ」

「ありがとう、報酬から家賃の分は必ず引いて頂戴ね」


 こういうところは律儀だな……


 後で決めるのも面倒臭いので、この場で話し合いをする。

 結果として、一ヶ月に食事別で金貨一〇〇〇枚を宿代とした。

 フランは、宿屋代を考えるともっと引いて貰っても良いと言うが、なんとかこの金額にして貰った。

 待遇が良すぎて申し訳ないとひたすら言うが、その分働いてもらえばいいだけなのだが……


 フランは角部屋を選んだ。

 部屋が分かりやすい様に各部屋に札を付ける事にした。

 フランの部屋は『三〇一』にした。

 荷物も全て持ってきていた。

 最初から、住む気で来ていたのか……


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 トブレに指輪を貰いに来た。

 相変わらず、いい仕事をする。

 指輪の伸縮も問題ない。


「注文通りの完璧な代物だ!」

「ふん! 当たり前だ」

「ウルパにも礼を言っておいてくれ」

「あぁ、伝えておく」


 なにやら浮かない顔をしている。


「どうしたんだ?」

「あぁ、ラチスからこの指輪の製作の指導を頼まれているんだが、面倒臭くてな!」


そうか、製作するに当たってはトブレから聞いたりしないと、いけないって事か。


「それは、すまなかったな」

「気にするな。 少し愚痴りたかっただけだ。また無茶な注文を期待しているからな!」

「あぁ、その時はまた頼む」


 酒瓶を三つ程、徹夜のお詫びだと言い渡す。

 受け取りを拒否していたが、ザルボの時のようにいらないならこの場で割ると言うと渋々受取ってくれた。

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