第89話 領主との面会!

 街の中央にある領主の屋敷門前まで来ると、シキブは門番と話をして領主の面会を要求していた。

 幸いにも領主は居たが別件で人と会っている為、別室で待つようにと言われた。

 衛兵に案内して貰い、別室で待つことにした。


「領主ってどんな人だ?」


 いきなり連れて来られたので、領主の人物像が全く分からない。

 少しでも情報が必要だ。


「そうね、一応この街は魔族の領地に近い為、位の高い人は皆嫌がるのよね。 前の領主も嫌々だったみたいだし。 リロイ様は事情があってこの地に来たみたいだけど、内政も特に問題無く進めているし住民としては良い印象ね」

「なるほどな」

「まだ若いのに大した方ですよ」


 その後、特に話も無い。

 時間潰しに、シキブの恋話でも聞こうかと思ったが、ムラサキのようにはなりたくないので、この話をするのは止めた。

 開けっ放しの扉をノックする音がしたので、入口を見ると初老の執事が立っていた。


「御待たせしました。 リロイ様が御待ちですので、こちらにどうぞ」


 言われるがまま廊下に出て領主の部屋まで案内され、扉をノックして部屋に入る。


「御待たせしてしまい、すいませんね」

「いえ、こちらこそ突然の事で申し訳御座いませんでした」


 イメージでは、細マッチョな感じかと思っていたが、イメージとは逆に顔は青白く何日も寝ていないのか目の下にクマがある。

 とても領主とは思えない風貌だ。


「リロイ様、お体に障ります。 どうかお座りください」


 後ろで執事がリロイを気遣った。


「ありがとう、マイク」


 執事はマイクというのか。

 ナイスミドルだな。 良い歳の重ね方とはこういう人の事を言うんだろう。

 リロイは私達にも座るように言うので、ソファまで行き腰を下ろした。


「急用と聞きましたが、問題でも発生しましたか!」


 不安な口調だ。


「迷いの森にて、ゴブリンロードの出現が確認されました」

「なんですって! やはり迷いの森でしたか。 ではすぐ討伐隊を結成して向かって下さい。 領主として出来る限りの事は協力は致します」


 リロイは大事件だとばかりに慌てている。

 しかしシキブは、大変申し訳なさそうに、


「大変報告しづらいのですが、ここに連れてきた冒険者。 タクトと申しますが彼が既に討伐致しております」

「何ですって! 彼は村人では無いのですか?」


 この格好見ればそうだろうね。


「この様な格好で申し訳御座いませんが、こう見えても彼はランクBの冒険者です」

「そうなのですね。 失礼しました」


 大まかな内容はシキブが説明をしているのを、俺は横で聞いていた。

 報告が終わると、リロイの前にコアを出した。


「これがそうですか……」

「はい」

「王都への報告はどうなってますか?」

「冒険者ギルド本部には、先程連絡致しました」

「そうですか、ご苦労様でした」

「それに、オークロードの出現も『常世の渓谷』と予測出来ました」

「予測とは、どういう事ですか?」


 シキブは、先程の内容をリロイに報告した。

 発見者は、俺としてだが……

 安心したのか、飲み物に手を着ける。


「タクト殿、この街いや、この世界を救って頂き感謝致します」

「大したことじゃないから、別に気にするな!」


 後ろから、シキブの鉄拳が後頭部に直撃する。


「リロイ様、すいません。 このタクトは【呪詛】に掛かっていて、丁寧な言葉使いが出来ません」

「【呪詛】ですか! それは難儀な事で。気にする必要はありません」


 懐の大きな領主だな。

 俺が逆の立場だったら、多分許さないだろう。


「ありがとう」


 精一杯の丁寧な口調で礼を言う。


「シキブ殿、引き続き対応を御願い致しますね」

「はい、承知致しました」

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