第59話 ロックスの浅知恵!
俺とロックスとの、会話に全く興味のないローラ。
そんなことよりも、早く引越しをしたい様子だ。
「ローラ、今日は一旦帰るぞ。 早ければ、二・三日後には引っ越しできると思うから」
「そうか、仕方ないな。 では引っ越せるように荷物は、まとめておく」
あっさりと納得する。
さっぱりしているのは研究者としての気質か?
「ちょっ、ちょっと待ってください!」
ローラを残して帰ろうとする俺に、凄い勢いで話しかけてきた。
「何か用か?」
「いえ、先程の提案でもよく考えたらこちらにもメリットがある事に気が付きましたので、その条件でも良いかと思います」
「いや、もういい!」
俺は、ロックスを無視して帰ろうとする。
「お待ち下さい。 是非とも先程の条件にて御願い致します。 これはギルマスとしてのお願いです」
「あれ? さっきまでと全然態度が違うな? 急にどうしたんだ?」
ロックスは、完全に俺が証拠を持っていて、それを報告すると思い込んでいる。
「ギルマスのお願いって、どういうことだ?」
「それは……」
必死で理由を考えているようだ。
「特に理由無いなら、帰るぞ!」
「いえお待ちください! 冒険者ギルドのランクBまで一日で合格した噂のタクト様であれば、商人ギルドとしても登録して貰えれば、心強いかと思いまして……」
必死で考えた答えがこれか。
噂というのは、ランクBの合格の事か。
一日で広まるって事は、良い噂か悪い噂かよく分からないな……
この街の大きさでも、一日あれば案外噂は広まるんだな。
「あぁ、そう。 ただし、不正したらうっかり口が滑るから注意しろよ!」
「……商人ギルドが、そんな事する訳ないじゃないですか」
明らかに動揺している。
やはり不正する気満々だったのか。
「では、私も試験官やってやるぞ!」
「ローラって、商人ギルドに登録しているのか?」
「あぁ、研究の材料を調達したりするのに必要だからな。 因みに私はランクSだ! 試験官の資格も当然あるぞ!」
流石は王都の研究主任だけある。
そこのボンクラなギルマスより、よっぽど頭が回るのだろう。
「ローラ様が、ランクSであれば試験はランクSまで可能です」
……えっ、そうなのか。
ローラがランクSだから、試験もランクSまでは可能という事か!
そうなると、ロックスはランクAかBで決定だな。
俺的には、ランクBかと思うが【鑑定眼】を使うのも嫌なのは、こいつが初めてだな!
とりあえず、試験で困ったときは【全知全能】に頼るか。
商人なんて、所詮は自己責任だから試験内容なんて、実際は役にたたないはずだ。
それに、ローラが試験官をするなら、不正される事はまず無いだろう。
そういえば、昨日の試験でも時事ネタが出題されても【全知全能】に頼れば良かったんだよな。
全然、困らなかったが……
商人ギルドだから、計算問題は冒険者ギルドよりは難しいだろう。
では、試験を受けるか!
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