第30話 押し問答!
村長の許可を貰い、村中央の広場らしき所で、ゴブリンとオークの戦利品を確認する。
アルとネロに九マスの〇×ゲームを教えたら、ハマったみたいだ。
ふたりでずっと地面に書いては消してを繰り返して、延々と遊び続けている。
村人は遠巻きに俺達を見ている。
興味はあるのだろうが、なにせ魔王ふたりだから近寄るのも恐ろしい様子だ。
「タクト様!」
フランが声を掛けていた。
この村で声を掛けられるとしたら、フラン位しか思いつかない。
「何だ?」
「横、座ってもいいですか?」
「あぁ、いいぞ。 それとさっきは驚かせて悪かったな」
「はい。 昨日と今日で、一生分驚いた気がしますよ」
笑いながら答える。
「わざわざ気にかけてくれたのか。 用事も無いのに来たのだろう」
「あっ、分かっちゃいました」
暫く味わっていなかった、人の優しさが心地良い。
「この村を警護している村人を呼んで来られるか?」
「それなら、あそこの『ロイド』かな?」
フランは立ち上がり、ロイドを俺の所に連れてきた。
明らかに緊張している。
「ロイドと申します。 私に何か御用でしょうか」
「あっ、そんなに緊張しなくていいぞ。 ここにある武器を全部、この村に寄付するから適当に使ってくれ」
ロイドもだが、フランも言葉を発しようとしない。
「ん? もしかして、いらないか?」
「いえ、武器は喉から手が出る程欲しいです。 しかし……」
貰えない理由でもあるのか?
「タクト様、ロイドが気にしているのは、この武器を売ればかなりの金額になるます。 そのような物をいきなり寄付すると言われて、戸惑っているのです」
そういうことか。
ロイドは、フランの言ってくれた事に補足するように、
「そうです。 タクト様には感謝する事ばかりで、こちらから恩返し出来るような物が何もないのです」
「いやいや、昨日夕飯貰ったし、寝る所も貸してくれただろ? それで十分だ」
「夕飯と言っても、質素な物ですし、寝る所も板の間です」
ロイドは真面目な奴だと思いながらも、
「俺の夕飯は、明らかにお前達が食べている食事より良い物だった。 寝る場所にしても、この村で一番良い所だったんだろ。 お前達は村全員が苦しい中でも、俺を迎え入れてくれた。 それだけで十分だ」
「でも!」
この世界に『一宿一飯の恩義』を話しても分からないよな。
「気にしなくていいから、貰っとけ!」
「いや、しかし」
困ったな、これは引けないパターンだ。
ロイドを納得させられる何かでないと、押し問答だ。
「俺はこの村が気に入った。 その村を無くしたくないので守る為の武器を寄付する。 それでもダメか?」
「村なら守ってやるぞ!」
アルが、突然会話に入ってきた。
「あの村長はいい奴だから、グランニールやドラゴン達に、この村を守らせるぞ! タクトの恩は、妾の恩なのだ!」
俺が良い事言ったのが、一瞬で無駄になった。
しかも、意味不明なことを言っている。
「グランニールは、納得したのか?」
「そんなの関係無い」
まぁ、そうか。
断れる訳無いよな……
「グランニール?」
ロイドは意味が分かっていない。
フランが、ロイドに説明する。
「ドラゴンですか!」
「そうじゃ、妾より弱い奴だが、この村ならあの山から見ていても守れるじゃろ!」
アル基準で考えれば、みんな弱い部類だぞ……
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