第7話 腹黒女神!

 規則正しい生活だ!

 朝陽と共に目を覚まして、夜が深くなる前に寝る。

 前世で理想としていた生活だ。

 場所は違えど、普通の生活がここまで快適とは……。


 毎日、少しずつ強くなってるのがステータスによって分かるのもモチベーションが高い要因の一つだ。

 【鑑定眼】と【危険探知】は早くもレベル三まで上がった。

 このスキルはこの森迷いの森で生活する上でとても必要な事に気づき、優先的にレベルを上げた。

 【危険探知】で魔物の位置を確認して、【鑑定眼】で魔物のステータスを見る。

 この方法だと危険も低く、効率良く魔物を倒せる。


 昨日、スキルを確認して、気になる事を発見をしたので、エリーヌに連絡を取る。


(はいは~い!)


 緊張感のない返事だ。


(どう、順調に異世界生活を満喫してる?)

(……あのな、魔物に囲まれた森の中で、満喫出来ると本気で思っているのか!)


 この軽い感じがイラッとする。


(ははは、ゴメンね)


 コイツには何を言っても無駄だろう。

 最初に本性を暴かなかったら、あの毅然な態度の理想的な女神のままだったのだろうか?

 いや、すぐにボロを出すに違いない。


恩恵ユニークスキルの【全スキル習得】だけど、魔物系スキル殆ど無いけど、どうしてだ?)

(あっ、それなんだけど出会った魔物のスキルしか『スキル習得』出来ないから、少ないんだよ!)

(おい、そんな説明一度も聞いてないんだけど!)

(そうだっけ? まぁ、解釈の違いという奴だね!)


 まさかコイツ、交渉していたあの状態でこっそりと仕返しをしていたのか!


(お前が『腹黒女神』という事は良く分かった。俺も今後は『腹黒女神:エリーヌ』を広めることにする!)

(えっ! いやそんな、それは嫌だな~)


 急に慌て始める。


(まともに転移もさせずに恩恵ユニークスキルにも、こっそりと手を加えるような奴に、これ以上の名称は無いだろうが!)


 エリーヌは無言になった。


(お前は今日から『腹黒女神』だ。そのうちこれが二つ名になるだろう。楽しみだな!)

(……イヤ。絶対にイヤ~!)

(二つ名は信仰する人たちの意識で決まるんだろう、お前の意思は関係ない!)


 【神との対話】を切る。

 俺が言えた事ではないが、悪巧みする奴はその報いを受けろ!

 当然、エリーヌから折り返し連絡が入る。


(何だ!)

(ゴメンなさい、ちょっとした仕返しのつもりだったの! そこまで怒ると思ってなかったから……)


 長々と弁解を始めた。


(そんなことは関係ない!)


 と、一蹴する。


(……どうすれば、許してくれる?)

(今のお前が、俺に何を出来るかをまず教えろ)


 基本的に神は、この世界に干渉出来ない。

 その神が干渉出来る範囲はどこまでなのか!

 偶然とは言え、知る事が出来そうだ!


(……何も出来ません)


 予想通りといえば予想通りだが……。


(そうか、残念ですがあなたは『腹黒女神』のままです)

(お願いします。少し考えますので時間を下さい)


 おっ! 丁寧な言葉使いになった。余程イヤなんだな。


(じゃあ、一時間やるからそれまでに考えろ! 一秒でも過ぎたら『腹黒女神』だからな!)

(……はい)


 しかし、干渉も出来ないのにどうするつもりだ。

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