第5話 拠点(仮)死守!

 緑色の体、右手には斧を持ち口からは牙が見え隠れして、他のゴブリンと違う紅い眼は血走っていて紅さが増している。

 対峙して、改めて見ると強そうだ。

 リーダーだからか、他のゴブリン達よりも一回りほど大きく、筋肉も発達しているように見える。

 多分、知能も高いのだろう。

 ……勝てるか?

 とりあえず、ホーンラビットのように話しかけてみる事にする。


(もう降参して素直に退却すれば、これ以上の危害は加えない!)


 ゴブリンは、ホーンラビットの時と同じように周りを見渡したが、すぐにその言葉は俺だと分かったようだ。


「お前、殺す!」


 普通に会話が出来るくらいに、知能は高いようだ。

 分かってはいたが襲撃に来る位だから、素直に帰る筈無いだろう。

 挑発して戦闘に持ち込むか。


 槍は残り三本。

 【火球】【水球】【光球】【風球】は各四発は可能。

 【火弓】は一発が限度だ。

 落とし穴は半分残っているが、位置はバレている。

 この状態で最善の策は何だ。


 考えれば、アホ女神のせいでこんなハードな転移生活になっているんだよな。

 終わったら文句のひとつも言ってやらないと、この怒りは収まらない。

 ん? アホ女神!

 たしか「毒薬」と「痺れ薬」があったはずだ。

 ……一か八かの勝負に出るか!


 ゴブリンに向かい槍を投げると、右手の斧でそれを叩き落して、こちらに向かおうと構えた!

 その瞬間【光球】をゴブリンに向かい使うと一面眩い光に包まれた。

 これで暫く視力は戻らないだろう。

 続けて、槍を一本、二本と投げる。

 刺さりはしたが致命傷にはなっていない。

 ゴブリンは右に左に斧を振り回して、警戒をしている。

 そうしながらも、必死で臭いを嗅ぎながら位置を確認しようとしているのだろう。

 【水球】を発動してゴブリンの口元に投げつけた。

 【水球】は弾け飛ぶことなく、ゴブリンの口に引っ付いた。

 突然、口呼吸が出来なくなり焦っている。

 鼻呼吸になっているせいか、肩が大きく上下している。

 ゴブリンは大きく仰け反り、口元の【水球】を必死で取ろうとしている。

 俺は口元の【水球】効果が切れそうになる前に、再度【水球】を発動して【水球】に毒薬を混ぜて口元に飛ばす準備をした。

 少しずつ視力が戻っているのか、うっすらとこちらを見る。

 【水球】の効果が切れた瞬間、口呼吸で大きく呼吸をしている隙を見逃さずに【水球】を投げつけると、毒薬入り【水球】が口に直撃した。

 凄い勢いで、もがき苦しんでいる。

 その隙に、【火弓】を撃ち込んだ。

 『MP』が殆ど底をついたせいか、頭痛が激しく吐気もする。

 しかし、ここで気を失うわけにはいかない。

 かろうじて意識のあるこの状況で、もがき苦しむ魔物を平然と見ていられる自分にも驚いているが、これがこの世界で生きていくという事なのだろう。

 残り一本の槍に毒薬を塗り、ゴブリンに投げる。

 更に苦しそうに悶える。

 これで仕留められなければ、俺の負けは確実だ。

 回避出来るように、少し距離を取りゴブリンの様子を見る。

 暫くするとゴブリンが膝をつき、、前のめりに倒れこんだ。

 次の瞬間、頭の中でレベルアップの音が連続で鳴った。

 ゴブリンが死んだようだ。

 これで戦闘終了だ。


 辺り一面は、焼け焦げた臭いと血の臭いが混ざり、独特な臭いがする。

 もしかしたら他の魔物を、引き寄せる可能性もあるので移動を考えたが、こちらも血の臭いがしているし真夜中の森は、昼に比べて危険度も上がっている。

 そんな事を考えながら、ゴブリン達の『コア』を回収した。


 やみくもに移動するより、寝床に作った待避所のほうが安全だと判断して、地上の入り口を【掘削】で出来た土で塞ぐと、『MP』が底をついたのか意識が遠のく。


 ……とりあえず、生きて目を覚ましたい。

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