第4話 拠点(仮)襲撃!
……相変わらず寝不足続きだ。
このままでは、そのうち寝ている所を襲われるのも時間の問題だ。
新しい拠点でも探さなければと思い、今朝も狩りに出かける。
何度か死にそうな目にあったがなんとか、ホーンラビットであればスムーズに倒せるレベルまでなった。
改めて感じたが、【経験値取得値補正(二倍)】【スキル値取得値補正(二倍)】は取得して良かった。
面白いくらいにレベルが上がっていく。
討伐したホーンラビットの角は、槍の先に取り付けた。
石よりも丈夫なので、魔物討伐の効率もかなり上がった。
スキルも火属性の【火弓】を取得した。
スキル値を振り分けるので、貯めておけば高スキルを取得するのも可能だ。
他に光属性に【光球】というのがありライト代わりに使える。
風属性の【風球】は高い木に生っている木の実を落とす事も可能なので、【光球】【風球】共に取得する。
この世界では初級魔法が大概【なんとか球】なのだが、投げる事前提なのか?
今の所使い道は無いが、水属性【水球】もついでに取得する。
魔法スキルについて改めて気づいた事がある。
魔法のイメージを念じるだけで発動してくれる。
長い詠唱を唱えなくても良いのは利点だ。
戦闘においては詠唱時間が、致命傷になる事も考えられる。
知らずに、戦闘中に大声で魔法名を言っていたら恥ずかしいので、事前に分かって良かった。
森の中に進んで行くと、三匹のゴブリンを発見した。
こちらが風下の為、向こうには気付かれていない様子だ。
ゴブリン達が集まりなにやら話をしている。
聞こえる位置まで慎重に移動して、じっと身を潜める。
【念話】で会話を聞いてみると、最近川のほとりに常に火を焚いている個所があり、時折そこから旨そうな肉の焼けた匂いがする。
今晩にでも三匹で襲撃してみないか! という事だった。
……話の内容からして、間違いなく俺の事だろう!
今晩に襲撃って、せっかく良い場所でこれからって時に!
もう、逃げるしかないな……。
幸い荷物なんて無いに等しいし、もたもたしていると危ないから即行動しなければ!
ゴブリン達が遠くまで立ち去るのを確認して、周囲を警戒しつつ拠点に戻った。
戻る途中に、ふと「ゴブリン三匹だったら、罠張っておけば倒せるんじゃないか?」と思い直す。
強さで言えば、一匹あたりホーンラビットの三倍くらいだろう。
無謀かも知れないが、倒しきれなければ逃げる事も考えておけば大丈夫だろう。
ゴブリン討伐は『罠を張っての戦闘+退路の確保』で対応することにした。
拠点に戻ると早速、罠を仕掛ける準備をした。
まず何かあった時の為にと、残しておいたスキル値で、採掘士スキルの【掘削】を取得し穴を幾つか掘り、槍を突き立てて木の枝と落葉で隠して、落とし穴を作る。
それよりも寝床の穴に近い側の周囲を堀の様に深さ三メートル程度になるまで何回か穴を掘る。
その上に木の枝と落葉で塞ぎ、土をかけて一見分からない様にする。
俺だけ分かる目印は付けておく。
落とし穴に落ちたら【火球】で一匹ずつ仕留めれば問題ない。
次に退路の確保だが、寝床にしていた穴の上部を【掘削】で、ひとり分の幅で階段状に出来る限り高く掘る。
途中に退避所を作成する。
完ぺきでは無いが、三匹であれば倒せないのは多くても二匹だと思うので対応可能だ。
作業が終わると既に陽は沈もうとしていた。
いつも通りに、ホーンラビットの肉を焼き待ち構えるとする。
初の複数モンスターとの戦闘になる為、緊張は抑えきれない。
陽も完全に落ち、周りは闇に溶け込み焚火の火だけがゴブリンを呼び寄せる灯になっているようだ。
待っている時間がとても長く感じる。
もしかして、襲撃は無いのでは? とポジティブに考えた瞬間、「パキッ」と遠くで仕掛けて巻いておいた小枝が鳴る音がした。
その後「パキパキ」と数回にわたり音は鳴り響き、数匹のゴブリンがいるであろうという事は確認出来る。
音が鳴り続けた後、目の前にはゴブリンが姿を現した!
一、二、三……八って、三匹じゃなかったのか! 八匹って、死亡フラグが立った気がした。
ゴブリン達は、状況確認しているようなので、こうなれば先制攻撃だ。
【火球】を一気に四発投げた。
不意を突かれたのか、避けそびれたゴブリンに三発命中。
隣の避けたゴブリンに一発命中した。
三発命中したゴブリンは、そのまま倒れて死亡したようだが、一発命中したゴブリンは致命傷とはならなかった。
この攻撃が開戦の合図になり、一気にゴブリン達が襲い掛かってきた。
不測の事態もある為、出来る限り『MP』は温存しておきたいので槍を投げ応戦する。
固まって攻撃して来る為、槍が避けられることは無く必ず命中する。
なんとか、一匹を殺す事は出来た。
前世の記憶では、ゴブリンは知能が高いと思っていたが、俺の思い違いか?
そう思った瞬間に、ゴブリンが二手に分かれた。
よく見ると片手に棍棒や、斧らしきものを持っている。
あの斧は欲しいな! なんてこと考えながら、冷静に状況を把握する。
ゴブリンは全部で六匹。
そのうち無傷三匹、負傷三匹。
向こうもこちらを警戒してか、攻め込んで来ない。
膠着状態が三分程度続く。
数匹のゴブリンが、何度かホーンラビットの肉をチラチラと見ているのが分かった。
この状態を打破する為に、肉を掴んで空高く投げると、ゴブリン達が上を向いた。
その一瞬の隙に、ゴブリンへ向けて槍を投げた。
一発目は見事に命中したが、二発目は弾かれてしまった。
その結果、槍はゴブリン達の武器となってしまった。
そこまでは考えていなかった……。
ゆっくりと後ずさりをすると、向こうも同様に距離を縮めてくる。
……あと三歩。
気付かれないように更に下がると、一匹のゴブリンが落とし穴に落ちて串刺しになった。
「ヨシ、あと五匹!」
落葉の箇所には罠が有ると分かったのか、一匹が飛び超えようとしたが、その瞬間に槍を投げた。
命中して、ゴブリンは落葉の上に落ち、そのまま串刺しとなった。
ゴブリンは二手に分かれてはいるが、別々での攻撃はしてこない。
……もしかして、リーダーの指示待ちなのか?
ではリーダーは誰だ。
一番後ろ無傷の奴か?
確認の為、リーダーらしきゴブリンに向かって槍を投げる。
明らかに別のゴブリンが、槍の攻撃から庇うかのように回避行動をした。
間違いない、奴がリーダーだ!
指揮官から叩くのが戦術の定石だが、どうすれば……。
槍も残り三本。
まずは、リーダーを叩くよりも数を減らす事を優先に戦闘を行う方が無難か。
「オォォ〜!」
俺は叫び声を上げると反転して、寝床にしている場所まで走る。
ゴブリン達が追ってきたが落とし穴に落ち、穴の下で必死に登ろうとしている。
四匹落ちたのを確認して、上からを【火球】を十発打ち込んだ。これで四匹共に死んだだろう。
上手い事、四匹共落ちてくれて良かった。
戦闘が終わったかと思うと、一気に疲れが出た。
とりあえずは、待避所まで登り休むとするか。
背後から、何かを動かす音がした。
振り返ると、ゴブリンが穴から這い出ようとしている。
何故だ! ゴブリンの身長では、到底届かない筈だぞ!
反撃の危険がある為、距離を取る。
穴の中を確認すると、三体の死体を積み上げている。
しかも【火球】も上手く躱したのかダメージも半分程度だ。
そもそもが、三匹を想定した罠なので、そこまで大きくはしていなかった。
それに、ゴブリンの知能を侮っていた。
形勢を逆転された……。
不利な状況になっているのは間違いない。
肉を上げるからこのまま、帰ってくれないかと甘い考えが頭を過ぎる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます