07




 俺へと数え切れないくらいのミサイルが迫ってきている。


 一方、俺は段々と失速しており、微かに見える衛星へは俺一人だけの力では辿り着けない事実を思い知らされていた。


「……たくっ」


 二度と使うまいとか思っていたのだけど、もう使う機会が到来するとは思ってもいなかった。


 こういう場面で役に立つスペックをありがとうよ、創造主。


 今回はフルパワーで行かせてもらう!


 ありったけの光を両目に収集させて、放つだけ!


「落ちろ!」


 高エネルギーを両目から放ち始めた事もあって、視界が白く染まっていて、目の前で何が起こっているのか全然視認できない。


 炸裂音や、爆裂音がそこここで奏でられているのは聴覚で捉えることができる。


 目からの光線か何かが目標まで到達しているのか。


 向かってくるミサイルを数発撃ち漏らしていないか。


 確認事項がこの技を発動させてしまうと確かめる事さえできない。


 威力は申し分ないのだが、融通が利かなすぎる。


「……ちぃっ!」


 エネルギーが空になったからなのか、視界が開けてきた。


 ミサイルは全弾撃墜していただけではなく、宇宙戦艦のような防衛システム数機も視界から綺麗さっぱり消え去っている。


 だが、目からの怪光線は衛星までは届かなかったようで、まだ視界の中に存在している。


 俺が落下し始めているのか、衛星が段々と小さくなっていく。


 その衛星を眺めながら俺は考える。


「もう少し……いや、もっと上に飛び上がらなければいけないって事か。俺一人の力では無理だというのならば……」


 俺が元いた世界ではロケットで宇宙を目指していて、単段式ロケットだとか、多段式ロケットだとかあったはずだ。


 今の俺が単段式ロケットだとしよう。


 出力が単数であったからこそ、高く打ち上げる事ができなかったのではないか?


 もし、多段式ロケットのように俺を打ち上げたら、どうなるだろうか?


 衛星を攻撃できるほどの高度まで打ち上げる事ができるんじゃないか?


 幸いな事にアーリとワーキュレイが地上にはいる。


 アーリはともかく、ワーキュレイにも手伝ってもらって、多段式ロケットみたいな感じで宇宙を目指すとしようか。


 そうすれば、大気圏越えとかできそうだけどな、俺のスペックならば。


「ワーキュレイ、ちょっと手伝ってくれ」


 地上に着地するなり、俺の事を待っていたであろうワーキュレイにそう言っていた。


「余に? 何であるか?」


 頼まれ事をされるとは思っていなかったようで、興味ありげな目で俺を見ながら小首を傾げた。


 アーリをちらりと見ると、何か不服そうに口をとがらせている。


 俺に付き従うのが不服なんだろうな。


「俺とアーリを空に打ち上げてくれ。魔法か何かが使えるんだろう?」


 大賢者とは言っていたものの、どのような賢者かは聞いてはいなかった。


 魔法程度使えて当然といった様子で俺はそう言った。


「可能ではある。だが、天高くまでは飛ばせぬが良いのであるか?」


「ああ。距離を伸ばしたいだけだから、ある程度まで打ち上げてもらえれば万々歳だ」


 ワーキュレイの一段目のロケットで、二段目はアーリだ。


 昔見たサッカーアニメでスカイラブなんとかという技があったが、あれを今回は採用させてもらうとしよう。


 アーリには踏み台になってもらう必要があるって事だ。


「……ならば、本気を出すのである」


 ワーキュレイは何を思ったのか、平然とした表情で天女の羽衣のような衣服を脱ぎ始めた。


「ちょ、ちょっと……な、何をしていなさるので?」


 言葉が上ずった。


 なんで服を脱ぐんだ、この大賢者は。


「この羽衣は余の力を制御するための拘束具のようなものである。魔力を解放させるには脱ぐ必要があるのである」


 ワーキュレイはあっさりと素肌を晒した。


 下は白い下着をはいてはいるものの、上は隠す必要がない、あるいは、これといった山もないので隠す必要性さえ抱いていないのか、ぷっくりとした綺麗な乳首を晒していた。


「……」


 俺は目に入ってしまったものの、すぐに顔を背けた。


 顔が細やかながらも上気してしまったようだ。ちょっと汗ばんだ。


「どうしたのであるか?」


 ワーキュレイが俺の顔をのぞき込もうとする。


 俺は表情を見られまいと身体の向きを変える。


「……ふむ。お主は初潮前の女児が好みなのであるな。欲情してしまったというのであるか」


 表情はおろか顔色一つ変えずにワーキュレイは冷静に口にした。


 そういうわけではないんだが……。


「残念な事を告げなければならないのである。余はこの身体に封印を施しているのである。余が決めた男子以外とは子作りができぬという封印である」


 大賢者を強引に抱いたり、『俺の女になれ』だとか『孕め』だとか強硬手段に訴えてくる奴のための防衛策か。


 それともただ単に身持ちが堅いだけなのか。


「ふふっ、残念であったな」


 ワーキュレイは口元を隠して微笑んだ。


 何が残念だというのだ。


「……そ、そうだったのか。私はもう初潮が……」


 アーリが若干ひいてしまったのか、奇妙な顔で俺の事を見ていた。


 というか、初潮がどうとか俺は言ってないだろうが!


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