02
「……アーリ、ああいった砲台はどこにでもあるものなのか?」
魔王などが存在している世界観なのだけど、科学技術が近現代レベルまで発達している可能性も捨てきれない。
ようは『魔術 VS 近代兵器』みたいな世界観だ。
そういう世界であるというのならば、あの砲台も納得はできる。
一応ではあるけれども。
「私が知る限り、城塞都市チャリオンにしか存在していない。あの筒から放出される光線を我ら魔族は防ぐことができない。例外は存在し、魔王レベルであれば、ダメージを受けることはない」
「はっ?! 光線? 砲弾じゃなくて、光線なのか?!」
俺が知る限り、光線を出す砲台が出てくるのは、宇宙戦争レベルでのフィクションの中の世界でだ。
俺が元いた世界では、レールガンの実用実験とかなんかまでは聞いた事はあった。
ビーム兵器を砲撃可能な砲台となると、俺のいた世界ではまだ技術が確立していなかったはずだ。
そんなものがこの世界にあるだと?
「今は亡き第十二魔王軍はあの筒から発射された光線で全滅した。いや、それでは語弊があるな。光線では死にはしなかった第十二魔王はハヤテに瞬殺されて、第十二魔王軍は全滅した」
遠い世界で起こった夢物語を口にしているように遠くを見つめているようにうつろな瞳をしていた。
達観しているように言うアーリの様子が妙に引っかかる。
第十二魔王軍は全滅して当然だったとでもいうべきなのか?
「第十二魔王軍は皆討死することを厭わなかった。いや、討死覚悟であった」
「そこまでの覚悟があったということなのか?」
「当然だ。チャリオンに……いや、ハヤテに一矢報いるための戦いと言っても過言ではなかった」
「……つまり、ハヤテって奴が何かしたというのか?」
「その通りだ。第十二魔王軍の拠点に夜襲をかけ、女子供をさらっていったのだよ。だから、取り返すために第十二魔王軍は圧倒的な戦力さを知りながらも城塞都市チャリオンに攻め込んで全滅した」
「……」
創造主は世界を救えを言っていた。
虐待に近い形になっている魔王軍を救えということなのか?
他に何か救わないといけないものがあるっていうのか?
その辺りがイマイチわからないんだが……。
「……こちらの存在に気付いたようだぞ」
俺の思考がその一言で霧消した。
「なぬ?」
何が俺たちに気付いたのだろうと、アーリの視線を負うと、砲台が稼働し始めていて、俺たちに照準を合わせるようにこちらに砲口をむけていた。
「やられる前にやれって事よ!」
道端に落ちていたボール大の石ころを拾い上げる。
俺たちが何者なのかわからないのに銃口を向けてくるような奴らに遠慮はいらないだろう。
むしろ、向こうの戦意を喪失させてから話し合いをすべきではないか?
昔見たアニメか何かで『ヘリ落とし!』とか言いながら、何かを投げつけてヘリを撃墜していたのを見た記憶がある。
今の俺ならば、ヘリ落としならぬ、砲台破壊くらいできるはずなのではなかろうか。
「沈め!」
俺は大きく振りかぶって、稼働している砲台に向けて、石ころを思いっきり投げつけていた。
そう叫んでから気付いたんだが、砲台を破壊したくらいじゃ、あの城塞都市は沈まないんじゃないかな?
「おお!」
「よしっ!」
石ころは見事狙っていた砲台に命中した。
ただ風穴が開くくらいだろうと思っていた。
砲台がひしゃげたと思った次の時には、固定台からもげただけではなく、発車しようとしていたビームが暴発でもしたのか隣の砲台まで巻き込んで盛大に爆ぜた。
「素の状態が戦闘力53万ね。で、ただ石ころを投げた結果が……これ、と」
もしかしたら、もしかしなくても、俺が本気を出したら、この異世界……いや、この異世界がある、おそらくは星そのものを破壊できるんじゃないかな?
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