#6 雨降りの後に

〈・ これを読んでいるということは、もう私には会えないかもしれません。私が○×駅に呼んだのはただ一つ、伝えたいことがあったから。

私が私は昔から病気を患っていました。命に関わるもので、余命は残り …あと1日。つまり今日まで。…治しようがないから、しょうがないけれど。

…もし今君に会えてたら、最後に私は笑って死ねるかもしれない。

…会いたかったな。それじゃあね、歩くん。〉


〈ありがとう〉、と最後に書かれた手紙を読んで即行、僕は駅に向かった。 さっきの雪は雨と変わっていた。

…僕は間違っていたのだろうか。あの日、ひどい言葉を放ち、僕から突き放したというのに。いのりは僕を信じて待っていたのだろうか…。

僕は走った。僕にできる精一杯の力で、ただひたすら走った。いのりは駅にいる。そこに行けば必ず、いのりはいる。そう願って走った僕は、いつもよりも速く走れていた気がした。


_○×駅前公園に、いのりはいた。

「いのり…!」

「歩…くん?」

「はぁ、はぁ…」

「その手紙…そっか、じゃあもうバイバイだね」

「なん、で言わなかったんだよっ…!」

「え…?」

「僕、に言ってくれてもっ、よかったら、のに…!」

「…ごめんね、心配かけたくなくて」

いのりは僕に謝ると、僕をベンチに寄せ隣に座った。

「予知夢の話…とーる君から聞いてたよ。…私を守ってくれて、ありがとね」

ふと、僕の手の甲にいのりの涙が溢れ落ちた。

「…好きだよ、ずっと…好きだったんだよ…!」

「…うん」

「生きててほしいからっ…離れたんだよ…!」

「…うん」

「なのにどうしてっ…!違う形で起きるんだよ……!」

「…本当にごめんね…?」

「…また、僕には何もできないのかよ……!」

「ううん。…歩くんにはいつも助けられてたよ」

「え…?」

「…ありがとう。……いのりもずっと、ずっと好きだだったよ」

「いのり…」

「それじゃ、また、ね…」

不意にいのりに口づけされると、それっきり彼女は動かなくなった。

「い…いのり…。ありがとう、……またな」

ひとまず近所の病院まで救急車に運ばれた。そして。

_12月25日、夜10時13分。いのりは幸せそうな表情のまま、亡くなった。

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