#1 過去物語
梅雨入りした次の日の朝。僕は久しぶり夜もすがらゲームをしてしまい、寝不足なままコンビニに向かっていた。辺りはまだ薄暗く、小雨が降っていた。
「いらっしゃいませー」
僕はいつも通学路の途中にあるコンビニで、軽い朝食と昼食を買う。今日はとりあえず朝食だけを買うことにした。
(『100円セール』か…ラッキー)
商品棚から野菜ジュースとサンドイッチを手に取って、いつも通りそれをレジで会計を済まし店を出ると、前を誰かが歩いていた。
(“サンドイッチ”と“サンドウィッチ”ってどっちがあってるんだろ…てあれ)
どこか知っている気がする、そんな後ろ姿。制服を着ていたから、すぐにうちの高校の人だとわかった。
(あんな人いたっけな…ってやべえ、今日朝礼あるんだった)
少しその人が気になったが少し強まった雨に傘をさし、小走りで学校に向かった。
「葉月先輩、 おはようございます。早朝からご苦労様です」
「 あ、橋本おはよう。てか、同級生なんだから呼び捨てで、タメでいいだろ」
「あはは、ごめんちょっとふざけたわ」
「だろうな。…よし、じゃあ準備すっかー」
「そうだね」
僕たち生徒会は、週一で朝礼を行っている。僕は一応副会長。そこそこ人望はあると思うし、成績も結構良いと思う。で、今一緒に準備しているやつが、生徒会長の葉月透流。彼は誰にでもフレンドリーで頼りがいのあるやつだ。
「 そういえば今日、転校生が来るらしいぜ」
「 こんな時期に?中途半端だな…」
「しかも、女子らしいぜ」
「へぇ…何年?」
「三年だってさ!俺のクラスに来ねぇかな~」
「さぁ…ま、来たらいいな」
「だな~。あ、先生おはようございます__」
_放課後。今日は生徒会もなく一人で帰っていたが、そこで問題が起きた。
「ねぇねぇ、歩くんってお家何処?」
…さて、どうしたものか。
「いのり…でいいんだよ…な?」
「なーに言ってんの、歩くん?まさか忘れたの?」
「 いやそうじゃないけど…なんでここにいんの…」
「 だってマンション、あれなんだも~ん」
すると彼女は僕のマンションを指さしていた。
「え、ま、マジで言ってる??」
「ん?」
「 僕もそこなんだけど…」
はぁ…。 思わず手で顔を覆ってしまった。何でこうなってしまったのか、それは数時間前に遡る。今朝透流と話していた転校生が、僕のクラスに来たのだ。しかも今朝見た人。
『 小林いのりです!前に同じ中学だった人はお久しぶりです!これから1年、よろしくね!』
その子はとにかく元気で高校三年生と思えない爽やかさを醸し出していた 。だがその女の子の存在は僕にとってはとても最悪な事態だった。 ホームルームが終わると、彼女は早速話しかけてきた。
『歩くんだよね!?』
『う、うん…』
『いのりだよ!んも~、 急に志望校変えるとか、寂しかったんだからね!!』
… 本当に僕はどうすればよかったんだろうか。
小林いのり。彼女は僕の幼馴染であり、初恋の人でもあった。いのりはモテて、とても僕と釣り合わないと諦め、逃げるように阿澄高校に入学した、という過去を僕は持っている。
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