第2話 終わりと出会いの始まり


 そう名乗った彼女たちはドヤ顔をゴブリンに向けてポーズを取っていた。

 しかし、人間の言葉がわかっていないであろうゴブリンは一瞬の戸惑いのあとに再び攻撃をしてきた。


「ぐぎぎぎががが」



「ちょっと、人がかっこよく決めポーズしているのに攻撃してくるってずるくない!?」

「リオ!!相手はゴブリンよ!私達の言葉なんて聞いてくれないわよ!貫きの炎・ファイヤーアロー!」


 攻撃を避けつつも、ルナは炎の矢をゴブリンの胸部に放ち怯ませる。

 その間に三人は体制を立て直す。

 ゴブリンは再び攻撃をしてくる。それを再びリオは受け流しながら、今度は腹部に一撃を食らわせた。


「同じ攻撃なら突破はできるんだよ!」

「なら私も…水の裁き・ウォーターボム」


 そう言いながらリオとルナは更に、攻撃を続けゴブリンの顔にも苦痛の表情が出てきた。


「ががが…ギガーーー」


 すると、ダメージが入っていたはずのゴブリンが斧で宙を切り風圧を発生させた。


「っく!」

「やばっ」


 体制を整えきれなかったリオとルナは後方へ飛ばされる。


「白き光の衣を我もとに…シャイニング・ヴェール!」


 後方にいたミアが詠唱すると光の壁が出現し、二人を保護した。


「二人共!このゴブリン、武器に圧倒されてるけど、よく見ると防御はやわいよ!」

「ありがとう、ミア…なら一点集中でやるしかないか…ルナ!」

「了解!一気に決めよう」


「行くよ~~~♪光魔法チェーン・バインド」


 ミアの魔法により地中から現れた二本の鎖がゴブリンの腕を拘束する。

 ゴブリンは両腕を塞がれながらも両足で攻撃をしようとしている。


「ががが…ぎがががーーー」


「させない!痺れろサンダーバインド!」


 ルナが雷の魔法を両足に放つと両足も動けなくさせる。

 ゴブリンは強引に動こうとしているが、身体が動けず奇声を上げていた。


『リオ!』


 ルナとミアが叫ぶと、リオは腕を上にあげメモリーブレスをゴブリンに向けた。


「広域魔導犯罪対策組織M'sKの権限において我ら、魔法少女の方程式が…職務を執行する!」


 リオが発言すると、ブレス中央にあるクリスタルが赤く光る。


「執行申請完了…行くよ!!付与魔法…ウェポンエンチャント!!ミア!」

「OK♪光魔法ブーストパンプアップforウェポン!」


 リオの魔法でミアの魔法がリオの剣に付与される。すると剣は白く光輝く。


「ルナ!!炎の力を!」

「了解。ファイアーエナジーforウェポン」


 今度はルナの炎の魔力がリオの剣に付与される。

 そして、三つの力が一つになった剣になる。そして勢いよく走り出し上空へ飛ぶ。


「正義の名のもとに…くらえ!魔法剣ファイヤーカリバー!!!」


 リオの剣がゴブリンの腹を貫通する。貫通した腹穴を通ってリオが着地する。

 ゴブリンの姿を見ず、剣の付与を解除するとそのまま剣をブレスの中に収めた。


「ぐぎゃああああああ」


 あの巨大だったゴブリンの身体全体が燃え尽きそして灰となっていった。


「執行完了…ローブ解除…」


 リオがそう言うと、ローブ自体が光もともとの服装に戻っていく。

 ルナとミアも武器、ローブを解除してリオの元へ集まってくる。

 そして安堵のため息をつくと、先程の少女のいる建物へと向かった。

 震えていた少女にミアが声を掛ける。


「大丈夫?もう怖い魔物はいないよ…」

「…ほんと?もういないの?」

「うん♪大丈夫だよ~」


 そういってミアは少女の身体を抱きしめた。

 少女は安心したのか、声をあげながら涙を流していた。

 その涙を見ながら、リオとルナは二人を見ていた…

 少しの時間が経ち、落ち着いた少女は少しずつ話しをし始めた。


「私はユキワと言います。この村に住んでいます。」


 ユキワと言うこの少女が少しずつ話しをしていく。

 三人はその話をしっかり聞いていた。


「平和だったこの村にあるとき、ゴブリンが襲ってきたんです。防御人があるはずなのに…そしてゴブリンたちは大人子供関係なく、捕まえた人間を全員殺していったんです…」


 ユキワの話に残酷さが増していく。

 三人はツバを飲みながら、更に詳しい話を聞いていた。


「ゴブリンたちは捕まえた人間を巣に連れて行って、一人また一人と生きたまま泣き叫ぶみんなを食べていったの…私の友達も目の前で食べれちゃった…」

「ひどい…」

「ゴブリンはある程度、人間を食べたら仲間同士で共食いを始めてそのたびに大きくなっていったの…」


 ふと会話の中のおぞましさの中で気になった事をルナが問いかけてみた。


「…ユキワはどうやって逃げれたの?」

「私は…友達たちと掘った穴から逃げたの…土の牢屋になっていたからなんとか穴を掘る時は気づかれないように子供だけならいけたの…でも穴を出た先でゴブリンにきづかれて…みんな別れて逃げたけど一人、また一人と悲鳴が聞こえて…気づいたら私だけになってしまって…」


「そこで私達が遭遇したわけか…じゃあユキワちゃん以外は…」

「たぶん、全員もう…パパもママもいなくなっちゃいました。」


 ミアの問いかけに再び泣きそうな顔を無理して笑顔を作り、ユキワは答えた。

 少し話が落ち着いてきて沈黙が出始めたとき…


「おーーーい!ユキワーーー!」


 駅の方角から二十歳前後のガタイの良い高身長の男性が近づいてきた。


「あ、オルハお兄ちゃん!」


 オルハと呼ばれた先程の男性はユキワの顔を見ながら抱きしめた。

 ユキワは再び泣き出し、男性の胸の中で泣いていた。

 少しの間のあとに男性は三人に挨拶をした。


「失礼いたしました。俺は近くの村に住んでいるオルハといいます。ユキワとは従兄弟にあたります。今回は村の魔物騒ぎを聞きつけて来たんですが、少し遅かったみたいですね…」


 オルハは周りの雰囲気を感じると、悲痛な表情で言葉を発した…


「この村の生き残りはユキワだけみたいですね…ユキワは私の家であずかります。知らない場所に行く必要もなくなると思いますし」

「M'sKのルナと申します。よろしくお願いします。今後は魔法警察が村に来て状況確認をします。私達はゴブリンの巣を確認し生存者や魔物の生き残りがいるか調べます。ユキワさん、大丈夫?」

「うん♪ひとりじゃないから、だからもう大丈夫だよ。お姉ちゃん達、ありがとうございます…だよ」


 そう言って三人は手を振りながらゴブリンの巣があるであろう森へ向かった。

 ユキワとオルハも三人が見えなくなるまで手を振っていた。

 少しすると村と森との境目に来た三人、そこは整備されていない砂利道となっていた。


「ねぇ、二人共…なんかこれおかしくない…」


 森の入口にて、最初に奇妙な違和感を覚えたのはミアだった。

 その言葉につられて二人も、入り口を見た…そして二人も気づいた…

 あってはならないことがそこにあったことを


「まって…なんで防御陣が綺麗なままなの…」

「えっ、まって防御陣って少なからず魔物が侵入しようとしたら…」

「防御陣自体の損傷、または変色が起こる…これが綺麗ってことは…」


 ルナとリオの言葉でそれは恐怖に変わった…絶対あってはいけないこと…それは…


「この事件…起こったのはこの村の中で起きた…そしてその元凶は…」


 そう、それは三人の予想の上をいっていた。簡単な事件じゃない。

 これは何か裏で大きなことが起きている。

 三人に嘘をついた本当の元凶は…



『ユキワ…』
























「………何がオルハお兄ちゃんだ。キモチが悪い。貴様のそういう性格が俺は昔から嫌いなんだよ」


「あら?いいじゃない、お・に・い・ちゃ・ん♪本当の妹なんだから♪それともいつもどおりオルハリアンお兄様と呼んだほうがよろしいかしら」


「…少なくとも俺はお前に兄貴と思われたくないがな。…で、どうだったんだ魔法少女の方程式とやらは…」


「そうね~♪確かに魔力も強いけど、荒削りすぎてまだまだ初心者って感じ。それじゃつまらないもん♪今回は見逃してあげないとね~」


「そうか…」


 そう言うと、オルハは黒炎に包まれて真っ黒なローブに目から黒い涙柄の痣を付けた姿になった。


「貴様もそろそろ、元の姿に戻ったらどうだ…」


「あはは、意外とこの姿気に入ってるんだよね♪それに、本当の姿も三歳位しか違わないし…でもまぁ、愛しのお兄様の頼みならしょうがないか~」


 そういうとユキワの青い炎に包まれそこから雪のように真っ白なローブ姿のに青空色の涙の痣を両目に付けた姿の少し成長した姿のユキワが現れた。


「魔法少女の方程式…あなた達が本当に罪深い…フフフ、そういえば知らないものね…あのゴブリンは……この村の住民を混ぜて作ったキメラゴブリンだったことも…フフフフフフ…ふはははは」


「貴様、本当に兄弟の中で一番の悪魔だな……」


「そんなことないですわよ…【終焉魔導国家キングダム】王家の長兄…粉砕のプリンス・オルハリアンお・に・い・さ・ま♡」


 そういってユキワは姿を消した。

 それを見ていてたオルハは少しの間のあとに口を開いた…


「最悪で最低な妹だよ…キングダム王家の三女…氷血のプリンセス・スノウ・リング……」



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