魔法少女の方程式

テイる

第1話 3人揃って魔法少女です



 ここは魔法世界ラミイ内の最大国家「ミラサキーノ」


 鉄筋コンクリートで作られた近代的な建物内ではたくさんのスタッフが働いていた。


 広い中央エントランスの上にはモニターが浮遊しているが、最新鋭の技術なのか、それとも魔法なのか。





 ほんのちょっとの科学と、夢と冒険で溢れている世界…


 これは,魔法の世界で未来を信じた少女達の物語である。











『 魔法少女の方程式 』












「10:00になりました。みなさまこんにちわ。本日は【M'sKマスク】へお越し頂きありがとうございます。」





 浮遊しているモニターに映像が映り、メガネをかけた黒髪ロングの女性が現れる。

 どうやら、一定の時間になると案内放送が始まるようだった。




「本日ご案内をさせて頂きます、M'sK内広報担当チーム【CROSS☆CASTクロスキャスト】のユア・シュウハと申します。よろしくお願い致します。」





 紹介映像が入るとエントランスにいる来客であろう人たちがモニターに目を向ける。





「はじめに、私達M'sKの紹介をさせて頂きます。M'sKとはMagicians Strike keeperの省略名称となります。職務内容は対大型魔法犯罪による国家安全業務を行う事を目的としています。


 私達の業務は、ミラサキーノだけではなく、各国家の承諾を頂きラミイ全体の安全に尽力を尽くしています。


 私達、M'sKメンバーは【メモリーブレス】と言われるブレスレット型魔法制御具を用いて業務を行っております。


 そしてこのブレスこそ、M'sKメンバーの証となります。魔法事件が発生・目撃した場合は通報又はブレスを所持しているスタッフにお問い合わせをお願い致します。」





 ユアと名乗った女性はこの建物内における組織の説明を始めた。


 その説明を気にせず、普段通りに業務をこなすスタッフやお客さんもいれば、モニターを見ながら和気あいあいと話し込んでいる人たちもいる。


 そんな中、ひときわ大きく両手を広げ、椅子から立ちモニターを見上げる長身の少女がカフェエリアにいた。


 ダークブラウンの長い髪は腰まで綺麗なストレートになっており、少女の黄色の瞳はキラキラとしていた。





「あぁぁ、やっぱりユアさんの凛々しい広報は素敵だな~~~テンション上がりゅ~~~」


「もう…リオはいつもCROSS☆CASTのことになるとテンションおかしくなるんだから~。ミアもなんか言ってあげてよ~」


「しょうがないよ、リオの元気なところは私達が一番わかってるじゃない。ルナや私が何を言っても治らないわよ。あ、私コーヒーのおかわり頼んでくるね♪」





 カフェエリアで、立ち上がりながらハイテンションでいるリオと呼ばれた少女の行動を、ルナ、ミアと呼ばれた同年代の2人が呆れながら見ていた。


 一番小柄でウェーブのかかったショートヘアのルナと呼ばれた少女は真面目で優等生タイプ、ミアは椅子から立ち上がるとリオを少し見上げる程度の身長で、髪を後ろで結んでハーフアップにしていた。淡い水色の瞳をしたミアは、どことなく優しさを感じる少女であった。





「だってCROSS☆CASTだよ!!私達の師匠と同じマスターランクの魔法使いで、ユアさんなんてあんなに凛々しい魔法使いなんだよ!憧れもしちゃうよ~」


「そんなこと師匠たちに聞かれたら怒られるよ(笑)ミアももうすぐ出発なのに、またコーヒー飲むとか…本当にマイペースなんだから…」





 元気っ娘のリオ、しっかり者のルナ、マイペースなミアといった3人の腕にはメモリーブレスが付いている。


 三人共M'sKのメンバーであり、これから任務が控えていた。飲み物を飲み終えた三人は、建物から出て目的地へと出発していく。


 ふと、リオが頭に?マークを付けながら二人に話かけた。





「そういえばさ、今回の任務ってどんな内容だったっけ?」





[[ズルッ!!]]





 それを聞いた瞬間、ルナとミアが一瞬崩れた。そして呆れたルナが痛そうな頭を抱え口を開く。





「あのね~…今回の任務は、サイメロ村ってところの近くでゴブリンが謎の大量発生をしていて、それの退治と原因究明が目的なの!わかった?」


「おぉ~!なんとなくわかった。村を困らせているんだよね。そのゴブリンをなんとかしないと…」


「それじゃ列車に乗って3時間揺られるぞ~♪リオもルナも早く行こう」





 三人はゆらりゆらりと列車に揺られながら、サイメロ村に向かう。道中のほとんどは寝て過ごしていたため、村へはさほど時間を感じずに到着した。


 サイメロ村は小さな農村で住人も大人子供合わせても100人いない程度の村であった。





「人口が少ないからって、外に出ている人がいないわね…やっぱりゴブリンの影響かしら…」


「そんなことはないわ!ゴブリンがいるっていっても、村や街にはある程度の防御陣が貼ってあるはずだもん。魔物は入ってこれないはずよ…」





 ルナの言葉にすかさず、ミアが返答する。


 しかし、三人がどの家に声を掛けても反応はなく、更に不思議が増えていく。


 少しの時間が経ち、サイメロ村の全ての家を確認したが、人っ子一人いない状態だった。





「なんか、怖い…流石にこれだけ人がいないのは…」


「あまりに異常よ…なにこれ?」


「大丈夫、絶対見つかるよ…家だけじゃなく周りもみてみよう」





 不安になってくるミアとルナに、リオが頭をポンポンと叩いて元気を出させた。


 リオの笑顔と励ましに二人がだんだん落ち着いてくる。


 その時、少し離れたところから何か大きなものが近づいてくる音が聞こえた。


 三人が音のした方向を見ると、遠くから土埃が舞っているのが見えた。





「…けて…た…けて…」





 土埃の舞っているあたりから、小さな女の子の声が聞こえる。


 三人が急いで向かっていくと、10歳前後の少女が土埃から逃げていた。


 少女は足がおぼつかない状態でもうほとんど走れる状態じゃなかったが、迫り来る土埃から懸命に逃げていた。


 そして徐々に土埃が消えていく。その中から出てきたものを見て三人は衝撃を受けた。





「なにあれ…!?」


「通常の10倍…いや20倍の大きさはあるゴブリン…」





 ルナとミアが絶句して動けない状態でいたとき、逃げていた少女がとうとう限界を迎え倒れてしまった。


 再び立つこともできず、目の前にいる巨大なゴブリンは腕にある大きな斧の振りかざし少女をに振り下ろそうとする。





「きゃあああーーー‼‼‼」


「させるかーーー!!」





 少女の悲鳴が響き渡りゴブリンの斧が振り下ろされる瞬間、リオがブレスから剣を召喚し攻撃を受け流した。


 それをみたルナとミアは我に返り、少女に近づく。





「大丈夫?私に掴まって」


「ミア、この子を安全そうな家に」


「わかった。もう大丈夫だから、あっちに行こう」





 そういってミアは少女を家の中に避難させた。


 その間も、リオは巨大ゴブリンからの攻撃を受け流していた。





「目を眩ませThick fog」





 ルナがブレスから自分の身長よりも大きな杖を召喚するとゴブリンの顔に深い霧を生み出し、目くらましにした。





 そして三人が集まる…





「ルナ!ミア!行くよ!!」


「ええ!」


「りょ~かい!」


『チェンジ!マジシャンズ ローブ アップ!』





 三人はメモリーブレスの中央ボタンを押しながらコードを叫んだ。すると三人の服装が変わり新しい服を纏っていく。


 リオは青と白を基調とした動きやすい服に、ルナを黒を基調とした頭まで覆う大きなローブに赤い線が引かれている、ミアは白を基調に金の線が引かれている薄めだがかかとまである長いローブを纏った。


 それはまさに魔法使いそのものだった。





「結ぶ思いは心の強さ つながりの魔法使い リオ・ミレーヌス!」


「四つの元素 今、我とともに 叡智の魔法使い ルナ・アンバーレイン」


「優しき力 今生命の息吹となりて全てを包む 癒しの魔法使い ミアーシャ・コーリアス♪」


『三つの力 いま 一つと成りて魔導を制す! 我ら魔法少女の方程式!』





 三人はそれぞれローブを纏い、リオは剣、ルナは杖、ミアは手袋の装備とともにポーズを決めた。


 それは三人の魔法少女の奇跡の始まりだった…。


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