第21話 守護

 レオンは、複数の侍女に連れられて、石造りの牢屋のような部屋に来ていた。

「牢屋か。まあ、当然、か」

 レオンにはわかっていた。この侍女たちを倒そうと思えば倒すことはできる。だが、この人数では騒ぎになる。どっちにしろ自分が牢屋に入ることは目に見えていた。大人しく入ることにした。どうせ、本気で出ようと思えば出ることができる。この牢屋は本格的な牢屋じゃない。魔法封じすらされていないのだ。レオンは手を手錠に繋がれて、硬い床に一人あぐらをかいて座った。

 一人の侍女がやって来て、

「天河石様が、みどりには手を出さぬ、安心せよと仰せです」

と言った。

「そうかい、ありがとう」

と言って、まずレオンは目を閉じた。意識を集中し、みどりの安否を確認した。侍従の言葉があるとはいえ、天河石の目前に差し出されたとあっては心配だった。みどりには、領事館を出るときに『守りの呪文』をかけているから安否が確認できる。どうやら、生きているのが感じられた。

 次にレオンは意識を集中して、海王石と連絡を取ろうとした。レオンは手を使わずに魔法使いと連絡を取れた。しかし、何か障害があるらしく、繋がらない。仕方なく、レオンは別の人物に連絡を取ることにした。ドゼだ。しかし、ドゼにも連絡が繋がらない。

「まいったな」

 レオンは思わずつぶやいた。ドアの外には、屈強そうな男が二人、番兵として立っている。おそらくこの番兵たちは、魔力が低い。体力だけの奴らだろう。

 レオンは無性に出て行きたくなったが、下手なことはできない。今は天河石はみどりに手を出していないが、レオンが動くことで変わる可能性がある。こんなところにじっとしているのは嫌だったが、時には待つことも大切だ。

 レオンは考えていた。みどりは生かされる。天河石の気に入ったのだ。人間界からやって来た時に、みどりは敵にすぐ狙われた。注意してはいた。しかし、こんなにすぐに連れられてしまうとは、迂闊だった。だが、なぜみどりだけ?すみれを連れてこなかったのはどういうわけだろう。

 レオンは色々と思案を巡らせていたが、ふと、

 俺はいつ天河石に会えるかな。

と思った。天河石に会う時。それをずっと心待ちにして来た。その時に戦い、勝てる実力はあると自負していた。今回のことは本当に幸運だ。天河石は、いつも居処が掴めなくて苦労していた。今回の接触で、全てが決まる。問題は、いかにみどりを傷つけずに天河石の元から解放させるか、だ。


 レオンはもう一度、意識をさらに集中した。意識をみどりの持ち物にかけた呪素の中に流したのだ。その途端、酷い光景がレオンの意識に流れ込んで来た。レオンは立ち上がった。



 

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