第14話 海底へ
「カードは揃った?」
海王石が聞いた。
「ああ。簡単な事さ。ちょっと頭を使えばできる事じゃないか」
とレオン。
「いったいどうやって潜るんですか?」
とすみれ。
「それぞれのできる魔法を組み合わせればいいんだよ。例えば、俺とすみれは風の魔法が得意だろ、それにみどりは緑の魔法が得意、この特性を利用すれば4人全員で潜る事だってなんとかいけるはずだ。」
みどり、すみれ、海王石はこの言葉を聞いて少しの間黙っていた。
「具体的にどうするんだ?」
と海王石が聞いた。
「名付けて、『またたびボール大作戦』」
レオンは得意そうな顔をして腕を組んで言った。
「またたびボールって、あの猫に使うやつのことか?」
と海王石が聞いた。
「またたびボールって、魔界にもあるんですね」
みどりはおもわず口挟んだ。
「あるさ。まあ、人間界産で輸入したやつだけどな。」
とレオン。
「具体的にどういう作戦なんですか」
とすみれが聞いた。
「まず、風担当の俺たちが水中に酸素濃度の濃い空気の泡を作る。大きさは4人全員入るくらいだ。その周りをみどりがまたたびボール状の大きなかごで保護する。足場にもなるし、簡単な衝撃で割れないようにな。そしてそのボールの中に俺たちが入って海底に潜るってこと。潜る際には海王石に魔法で水流に働きかけてもらう。」
この作戦を聞いて、みどりはなるほどと思った。しかし、
「私、そんなに大きい木のボール作れる自信ないです。」
とみどりは言った。
「大丈夫、そのくらいの緑の魔法なら私にも使える。一緒に作ろう」
海王石が緑の肩にぽんと手を置いて言った。みどりは安心した。それとともに気を引き締めた。海王石の、そして皆の足を引っ張ってはいけないと。
「みんな、異論はないか?」
レオンが聞いた。
「ない」
「ないです」
「じゃあ、早速取り掛かろうか!」
みんなは作業するために海岸の方に向かった。作業は案外面白いものとなった。まるで学校の図工の時間のような楽しさだった。この時間にみどりはあることを知ることとなった。それは『結界』のことだった。
「そこから先に出ないでくれ、みどり」
みどりが杖を振るってボールを作っている時だった。
「なんでですか?」
「そこに結界がある。」
なるほど、よく見てみると薄ぼんやりとしたガラスのような膜が空気中に張られている。みどりは今まで気づかなかったが、よく注意してみると見ることができる。
「海王石が結界張ってるから、敵とか害獣とか来ないんだよ。みどりもそろそろ気づいた方がいい。お前ら保護すんのにめちゃめちゃな労力使ってんだ。俺たちは」
とレオン。
「そうだったんですか」
「そうだ。魔界に来たばかりの時も、俺が守ってやってただろう」
レオンが真顔でそう言った。
「そういえば、そうでした。あの時はありがとうございました」
みどりはちょっとまごつきながらそう言って頭を下げた。
「おう、感謝しろよ」
「言っとくが、今張ってる結界はお前のことも保護している。何か言うことはないか」
と海王石がレオンに言った。
「海王石さん、あざっす!!」
レオンが勢いよく言って頭を下げた。
すみれがそれを見てクスクス笑った。
時間はかかったが巨大またたびボールはみんなの入る入り口を残して完成した。それは海に浮かぶ木のかごに入った金魚鉢のような感じだった。
「いいか、みんな。あまり勢いよく落ちないように気をつけろ。」
レオンはこう言ったが、実際入るとなると落ちてうまく着地するしかなかった。実際やってみるとまたたびボールは随分揺れた。
全員が中に入ると、みどりと海王石で入り口を塞いだ。
「さあ、準備はいいか。海王石、探査機は持っているだろう。」
「ああ」
探査機は名前とはうってかわって美しいものだった。それは一つの大きなやまぶき色の水晶玉のようなものだった。
「探査機が闇サンゴに反応すると、色が赤くなる。離れると青くなる。今は黄色とオレンジの間だから、まあまあ近いところにいるわけだ」
レオンが説明した。
「私が思うに、奴らは簡単に取れるところに闇サンゴを隠したりはしない。距離は近くてもきっと厄介な罠が仕掛けられているぞ。」
と海王石が言った。
「大丈夫、海王石と俺がいればまあ楽勝っしょ。どっちに進む?」
「東だ。この辺に心当たりのある海底洞窟がある。私ならそこに隠したくなる」
「海底洞窟か。ロマンがあるねえ」
とレオン。
一行は東方向に岸に沿って水中を進んで行った。
「綺麗だね。」
すみれが言った。
「うん」
実際、それはとても綺麗だった。
またたびボールの枝の隙間から、みどりたちは水中の様子を見ることができた。
水中は透き通っていた。魚たちが泳いだり、海草が揺れたりしていた。そこはまだ比較的浅いところで、海底に踊る日光の揺らめきまで見ることができた。
海王石が水流に働きかけることで揺らめく光がボール内に反射する様子もまた、美しかった。
みどりとすみれはそれを見て感嘆の声をもらしながら海の旅を進んで行った。
海底に潜り始めてから、しばらく経った頃のことだった。
「なんだ、あれ」
レオンが言った。
「!あれは!」
海王石が珍しく声を大きくして言うのと、みどりがその『あれ』の正体を見るのはほとんど同時だった。
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