第13話 再会

「レオン!!」

海王石が叫んだ。

「よお」

 レオンはお気楽そうに言った。


「なぜいる。今回の任務は私たちだけのはず……」

と海王石。

「ドゼに言われて来たのよ。海王石、お前たった一人だけで、子供二人も守れるか?このことを金剛石様にも言ったら行ってよしって言われたよ。」

 レオンは変わらず呑気そうに言った。

「なんという……。金剛石様のお達しか。私はそんなに頼りなかったかな」

海王石はレオンの顔色を見ながらそう言った。

「そんなことない。ただ、念には念を入れてってことさ。よお、みどり、久しぶり。」

 レオンは今気づいたようにみどりの方を向いて挨拶した。

「お久しぶりです。」

みどりはちょこっと頭を下げて挨拶した。


「それから、あんたがすみれちゃんだったな。」

 レオンはすみれの方を向いて手を差し出した。

「はい、初めまして。」

 すみれはレオンと握手した。

「俺は領事のレオンだ。あんたは夕顔町の領事館を通らなかったから初対面だな。まさか二人目の戦士さんがいるとは思わなかったよ。あんたの町の領事は確か……」

「黒曜石さんです。」

「ああ、そうだった。あいつ、こっちではそう呼ぶんだったな。あいつもあんたのおかげで魔界にこれるようになったんだよ。それはそうと、俺もこっちではアメシストと呼ばれることになってるけど、好きな方で呼んで構わないからな。」

「はい。わかりました」

 すみれは賢そうにそう言った。

「どうもかたいなあ、敬語じゃなくても良いよ、俺は。どうせ君と大差ない年なんだし。海王石にみっちり敬語をしこまれてんのか、君は。」

「いいえ、そんなこと……っ」

とすみれ。

 すると海王石が

「だったらいいえはもうなしだね、すみれ。こいつは先輩の私にもタメ口をきくんだ。この失礼な若者に存分にタメ口をきいてやってくれ。みどりもだ。」

と言った。

 するとレオンが言った。

「ええっ、みどりもかよ!俺、みどりには敬語使っていてほしいな。全員にタメ使われるとなんかアレだからさ」

「なんで私だけ?」

 みどりは怒って憤慨した。

「冗談だよ。」

 はははと笑いながらレオンはかぶりを振った。

「無駄話はこの辺にして、そろそろ本題に入ろうか。どこに闇サンゴがあるのか探さないと」

 海王石が落ち着いた態度で話題を変えた。

「闇サンゴならみんなが来る前に探した。でも、ここいらには見当たらなかったぜ。」

 レオンが言った。

「何?だってここに反応があると報告を受けたんだぞ」

 海王石が鋭く言うと、レオンは

「本当さ。少なくとも陸上には無い。おそらく敵が先に来て巧妙に隠したかなんかしたんだろう。回収されているということはないと思う。あれは外にあってこそ効果を発揮するものだから。」

と言った。

「一番可能性のある場所は?」

と海王石が聞くと、

「陸上には無い。とすると……?」

とレオン。

「なるほど、海底か」


 みどりは気の遠くなる思いがした。ここまでやって来て、探し物が海底にあるですって?どうやって取りに行くの?魔界の暦や季節のことはちゃんと詳しく知らないが、魔界は夏じゃない。おそらく春だ。ただでさえ泳ぐのは得意では無いみどりだが、この気温の中泳ぐのはとても困難なことに思われた。


「どうやって取りに行く」

 レオンがどちらかというと海王石に言った。

「潜るしか無いだろう」

 海王石は言った。


「海王石さん、私泳ぐの苦手なんですけど」

 みどりは恐る恐るそう言った。

 すると海王石はキョトンとした顔をしてしばらく黙った後、フハハと笑った。レオンも笑った。すみれだけ不思議そうな顔をして笑う二人を見ていた。

「潜ると言ってもそうじゃ無い。」

海王石はそう言うと人差し指を立てた。

「私たちは魔法使いだ。当然魔法を使うんだ」

「あっ」

 みどりは急に恥ずかしくなって顔を赤くした。自分が魔法を使えるという普段からの実感が、この人たちとは天と地ほどの差があると思ったからだ。


「水の中にも当然、敵のしかけた魔法やら障害物があると考えられる。いくら魔法に事故があるとはいえ、必要な時はこっちも魔法を使っていかないと本当に身が持たないぞ」

と海王石。

「でも私たち、水に潜る魔法なんてまだ知りません。」

 すみれがおずおずとそういうと、レオンが、

「水に潜る魔法は一つでは無いさ。俺たちも今どうやって潜るか考えているところ。」

と言った。

「人数が少ない以上、二手に別れるのは良い手では無いだろう。こうなると全員で行くべきと思われるな」

と海王石は言った。

「みどり、お前、なんの魔法が使えるんだ。」

突然レオンがそう聞いて来た。

「私?私は緑の魔法、草木や樹木を繁らせる事くらいならできるようになったけど……」

「なるほど、すみれは?」

「私は風の魔法が使えます。」

「えっ、すみれって風の魔女だったの?おれとおそろじゃん、おれも風使い。なんか嬉しいなー、お揃いの人がここにいるって」

「浮かれてないで、どうやって潜るか考えろよ」

 海王石がイライラと言った。

 するとレオンは

「浮かれてないさ。これでカードは揃ったじゃないか」

と言った。



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