第6話 美しい世界

 みどりはしばらく色とりどりの光のもやの中に佇んでいた。が、何も起こらない。音もしない。おそるおそる少し先まで歩いてみた。すると、光のもやはみどりの歩みに従って水のように動き、だんだん晴れていった。


 みどりの目に映ったのは、次のような光景だった。

 そこは乾燥した赤土の荒野のような土地だった。少し歩くだけでくしゃくしゃ、さらさらと土がもろく砕けるほど乾燥している。なのに所々大きな水溜りができていて、その水溜りはその土地の晴れた空の色と白い雲の影をくっきりと写し込んでいる。あまりにも静かで、空気も音も、キィィィンという感じがした。

 

 みどりが後ろを振り返ると、そこにあるはずのドアは消え去り、代わりに広い崖があった。そこまで高くはないが、色とりどりの地層をむき出しにしてどこまでも続いている。みどりはまた前を向いた。

 

 前方は特に大きなものは無く、地平線が見えた。しかし何も無いとはいっても、いくつかのものは散在した。

 まず一つ目に入ったのは小さな真っ白いプレハブのような建物だった。遠くから見たらサイコロのようにしか見えない。小さな窓がいくつかとドアがあるだけでむだな装飾の無い、正方形の建物だった。

 

 その建物の脇に、枯れかけたような、乾いた白っぽい木が何本か生えていた。

 そして、その建物と木々の間には、鉄道のレールが敷かれていた。真っ直ぐな線路で、みどりの右手の地平線から左手の地平線まで、視界に入る限りどこまでものびていた。

 

 今まで見たことのない景色だった。


 ここはいったいどこだろう?外国でもなければ、魔界でもなさそうだ。

 あの困頓とした魔界がこんなに美しいわけない。

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