第5話 旅立ち
みどりが魔界に行くことに決まってすぐレオンとドゼの二人は旅立ちの「準備」を始めた。
その「準備」というのがおかしなものだった。
レオンは安っぽい緑色のメモ用紙を取り出して何かしら書き込み始めた。
ドゼは自分の腕時計を見ながら、部屋の奥にある砂時計のようなもののついたあやしい道具をいじくり回していた。
みどりはその間二人を見つめてただ突っ立っていた。
「よし、出来たわ。」
ドゼはそう言って、みどりを部屋の奥の方へ引っ張った。
部屋の奥には、カフェやバーなんかで見るカウンターテーブルがある。そのテーブルの囲う空間の内側にみどりは通された。
今まで暗くて見えなかったけれど、カウンターの奥の壁には1枚のドアがあった。木でできているありふれたものだ。奥に倉庫でもあるのだろうかとみどりは思った。そこから旅用の荷物でも取り出すのだろうか。それとも魔界風の服に着替えでもする必要があるのだろうか。
ドゼが扉を開けた。
扉の奥からビュオッと風が流れ込んできて、みどりのおさげの髪を後ろになびかせた。
そこは倉庫ではなかった。まぶしくてぼんやりとした色とりどりの光のもやで溢れていた。
「さあ、行け。」
レオンはみどりにメモ用紙の切れ端を渡すと、みどりの背中を押してドアの向こうへ押しやった。
えっ、もう行かなきゃいけないの?こんな丸腰のまま?一人で?
みどりは慌てて振り返った。閉まりゆくドアの向こうからドゼが手を振っているのが見えた。
「頑張って。私たちもついてるわ。」
みどりの目の前でドアが閉まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます