第10話~お化け屋敷は怖いんだよ!~
もうやだ。帰りたい。
私たちは男二人、女四人の大学のサークル仲間。今日は遊園地に来ていて、ノリでお化け屋敷に入ろうという事態になっている。
「おーし。ペア組んで順番に入ろうぜ。一番奥まで進めたペアが優勝!」
最下位のペアは、優勝ペアにお昼をおごる。それで話がついたのだ……表面上賛成した、私以外は。男勝りな性格が災いして反対できない。
私はきっと「男」要員だ。
「んじゃ、男女でグッチーパーな。お前、男子枠でよろしく」
ほらやっぱり。呼ばれた私は、渋々と男グループでグッチーパーをした。一緒に組むことになった女子は、お化け屋敷の怖さなんてへっちゃらな子。頼りになる、よかったとこの時は思った。
入ってみると、思ったとおり彼女はお化け役のスタッフを物ともせずに突き進んでいく。けれど彼女は私にも構わずどんどん進んでいき、一人になった私は一歩も進めずに、立ちすくむことしかできなかった。
ガタガタッ。
「いやーーーーっ」
耳元で聞こえた音に、思わずしゃがみ込んだ。だめ、無理。お願い、誰か出口に――。
「だいじょぶか?!」
聞き慣れた声がした。私の前を進んでいるはずの、私の好きな人。
「なん、で」
「お前とペアのやつが一人で来たから。お前、一人だろうなって」
彼に手を握ってもらい、一番近くの出口からリタイアした。外に出ると、暖かい陽の光が私たちを包んだ。安心して涙腺が緩んでしまう。
「一緒に回ればよかったな」
彼が優しく抱きしめてくれた。今度は別の意味で鼓動が速まる。
「変、だよね。こんな男勝りな女が、お化け屋敷怖いなんてさ」
「ばーか。んなわけねえだろ」
「痛っ」
彼は私のおでこにデコピンした。
「確かに普段はそんな感じだけど、怖いなら無理しなくていいじゃん。それにほら、あれだ」
彼は急に口ごもった。
「……ギャップ、ってやつ? 可愛くて、守ってあげたくなる、ような――」
他のペアはまだ出てこない。最下位なのは決定的で、おごりも確定だけど、この秘密の時間がとてつもなく嬉しかった。
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