第9話〜SNSで知り合った君と〜

 桜の開花が気になる頃。俺は初デートの日を迎えていた。


 出会ったのはSNS……なんてカップルもいるだろう。俺もその一人で、気になった女の子にメッセージを送ったことがきっかけで、この日に繋がった。





 待ち合わせは、誰もが知っているであろう大きな駅の南口。そんな場所での待ち合わせは大変かもしれないと思ったけど、お互いの中間地点だったものだから。


 当日着る服をざっくりと伝えて、それを頼りに顔を合わせる。なんとも言えないドキドキ感。まるで季節外れのクリスマスプレゼントのよう。





 遅刻はしていないが、電車が遅延してしまい、先に着くつもりが「着きました」の連絡をもらってしまった。


 急いで駅を出ると、左側にいるという彼女を探す。目印は花柄のワンピースなのだが、この時期のせいか、候補がやたらと多い。


 一応右側を探してみるも、ヒットなし。トイレにでも行ったのかな、ともう一度左側に戻ってみるも、人の入れ替えがあるだけだ。


 どうしようかと悩んだ結果、いったん落ち着こうと近くのベンチに近づく。すると、すやすやと気持ちよさそうに眠る、ワンピース姿の女の子がいた。


 髪はかなり明るい茶色に染められている。でも全体的に柔らかい雰囲気だからか、チャラいという印象はない。


 顔も分からない男との初デート。なのにその待ち合わせで、こんなに気持ちよさそうに寝ているなんて。微笑ましくて、ずっと見ていたくなる。


 しゃがんで彼女を見上げていると、まぶたがゆっくりと持ち上がった。



「おはよ。君が『花』さん?」



 俺が待ち合わせの相手だと分かったようで、彼女の顔はピンク色に染め上げられていく。


 水玉に見えたその模様は、よく見ると小さな花柄だった。


 ああ、近づいてみなければ分からない。俺の隣でいまだに恥ずかしそうにしている彼女を横目に、もっと近づきたいな、と思った。

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