第8話〜君と一緒に、ポッキー〜

「十一月十一日って言ったらさ、やっぱこれだよね」



 高校一年生になった私は、学校にポッキーを持ってきて、友達と楽しむことに憧れていた。なんせ中学ってものは、お菓子持ってっちゃだめだから。


 高校に入って、順調に友達もできて、彼氏もできて。充実した日々を過ごしていた。スカートを少し折って、軽く化粧もして。「高校生」……思っていた以上に魅力的だ。


 少し成績が伸び悩んでいるのはご愛嬌。


 中学の時、「高校生になったらやりたいことリスト」というのを作成し、それを励みに勉強を頑張った。その中にはすでに達成した化粧や、放課後の寄り道などがリストアップされていた。


 そして、今やりたいのがこれ、ポッキー。

グループでそれぞれが違う味を持ち寄り、昼休みにシェアして食べる。写真を撮ったり、ポッキーを持って踊ったり。


 もちろん、付き合っている晴樹はるきとも楽しみたい。



「ねえ春樹、写真撮りたい」



 サッカー部に所属する晴樹は、正直人気がある。そんな彼に恋をして、恋人として隣にいるなんて、今でも夢ではないかと思ってしまう。


 想像していたよりも、晴樹はピュアだった。初めてキスした時はお互いに照れて、私が他の男子に告白されたことを知ると拗ねるのだ。


 ポッキーを手に、晴樹とも写真を撮りまくる。満足した私は、ポッキーを食べ始めた。



「俺は、こっちのがやりたいんだけど」



 晴樹はそう言うと、ポッキーを一本、私の口に差し込んだ。



「んっ」



 そして今度は、晴樹の顔が迫ってくる。彼は口いっぱいにポッキーを頬張るとぱくぱくと食べ進め、私の唇にそっと、自分の唇を当ててきた。


 そんな可愛いギャップのある私の彼氏は、今日も可愛い。

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