第6話〜必然的Destiny〜
ガタンゴトンと電車に揺られている。土曜日の午前中のゆったりとした車内。ちょっと早めに家を出て、映画を観に行くのが俺の楽しみだ。
四つ先の駅まで、時間は二十分ほど。昨日夜更かししたツケがもう回ってきたのか、少しうとうとし始めてしまった。社会人になってから、眠気に耐えられなくなったなあ。
そんなことを考えぼんやりしていると、電車に急ブレーキがかかった。
「急停車します。お立ちのお客様は、吊り革や手すりにおつかまりください」
電車が止まった反動で、誰かがぶつかってきた。
「きゃっ」
ーーえ?
近くにいたらしい女性に、なんと壁ドンされている。こんな状況、本当にあるのか……。てか、ぼんやりとしか分からないけど結構可愛いんじゃないか?
「すみません」
申し訳なさそうなか細い声に、なんとなく顔を見ることができなかった。
「あれ、
声で分かった。なんせその声の主は、高校生の時に好きだった
どうやら彼女も映画を観るらしく、しかも同じタイトルときた。これはもう、誘うしかない。意を決して誘うと、彼女からオーケーの返事をもらえた。
初めて女の子と映画を観る。漫画でそういうシーンを読んだことはあるけど、思った以上に緊張する。
「でも意外、城ヶ崎さんてこういうの観るんだ」
「へへ、ある人の影響で、高校の時からね。私も意外。島田くん、眼鏡かけるんだ」
「うん。高校の時はずっとコンタクトだったから」
そう、映画を観る間だけ眼鏡をかけようと思っていたのだ。眼鏡越しに彼女を見て、改めて思う。可愛いなあ。
だからこそ悔しい。さっき電車でぶつかった時、眼鏡していれば……! それに誰だよ、彼女にこのシリーズを教えたやつ!
その映画が終わるまで、俺の悔しさは渦巻いていた。
「おもしろかった。島田くんが教えてくれたとおり」
席を立ったところで、彼女が独り言のように呟いた。
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