第18話 「ナニについて言ってマス」

 やあ皆さん、今日も暑いですね。

 そちらがどういう季節かは分かりませんが、こちらは真夏日ですよ。

 カザミンとは映画の後どうなったのかって?

 そんなの……食事してすぐ解散しましたよ。カザミンの方が男子と一緒に肌色成分たっぷりのアニメ映画見たことに耐えられなかったみたいです。

 まあでも回数を重ねれば慣れるんじゃないかな。カザミンって順応性は割とありそうだし。今は経験値が足りてないだけ。

 というわけで今日はさらっとお伝えしていたかと思いますが……シャルさんとプールに来ております。屋内・屋外で色んなプールがあるなかなか規模のあるレジャー施設です。

 いや別にシャルさんのことが嫌いなわけじゃないよ。一緒にお出かけするのが嫌だとか言いたいわけでもないの。

 ただあの子さ、無邪気な笑顔で堂々と脅してきたりするから怖いの。今日1日振り回せたら体力ゼロになりそうだなって思うの。

 昔は内気でよく泣いちゃう子だったのに……何であんなに神経図太くなっちゃったんだろうね。


「Hey、シュウお待たせデース!」


 プールでテンションが上がるのは分かりますが、公共の施設でもあるのであまり大声出さないように。走らないように。

 なんて冷静を装ってみましたが、皆さんやばいヤバイですよ!

 皆さんもご存知でしょうがシャルさんのバストサイズはG。圧倒的戦闘力を持つグレートなお胸なわけです。無論、綺麗なくびれと形が良く張りがある大きなお尻をしております。

 そのシャルさんがですよ、今日は水着なわけです。ビキニ姿なわけです。色は爽やかな水色。布面積は普通のよりちょっと少なめかも。

 いや~水着って特別な衣装だよね。

 シャルさんの薄着に慣れてる俺でも目のやり場に困るっていうか、思わずジロジロと見ちゃうもん。シャルさんのお胸、いつも以上に走ると揺れちゃうし。


「むむ、シュウ~冷静な顔をしていますが内心はワタシに見惚れてマスネ。いやらしい視線をビンビンに感じマス」

「こういう場所でビンビンとか言わないでくれますか」

「別にいいじゃないデスカ。誰もワタシ達の話なんて聞いてませんよー」


 いやいや、今居るの更衣室から出てすぐの場所だから。大勢のお客さんが次々と入ってきてるから。多くの男性客がシャルさんのボディに釘付けだから。


「それにそういうこと言ってるとサービスしてあげませんよ」

「サービス?」

「例えば……こういう感じデス♪」


 な……ななななななんですとぉぉぉぉおッ!?

 み、みんな聞いてくれよ。シャルさんがね、シャルさんがね……両腕でお胸を挟むようにしながら前かがみになってる。

 つまり、グレートな谷間が一段とグレートになってるの。今にもこぼれちゃいそうだよ。水着ポロリしたりしないよね。いやしてくれてもいいんだけど。


「ムフフ、平然とした顔をしてますけど、ワタシの身体にメロメロデスネ。前かがみになっちゃいマスカ?」

「いいえ、なりません……今すぐは」

「つまりもう少し見たらなっちゃうんデスネ」


 それは……仕方ないじゃん、俺だって人間だもの。性欲だってあるんだもの。

 Gカップでスタイルの良いビキニ姿のイギリス人を見てたらそりゃあドキドキしますって。もうひとりの俺が元気になるのは当然じゃないですか。


「シャル、置いて行くのダメ」


 ここで雨宮さんの登場です!

 はい、実は今日雨宮さんも一緒です。ハブるのは可哀想ということで、シャルさんが呼んだそうですよ。

 シャルさんの機嫌を損ねる→雨宮さんに何か拭き込む→雨宮式ストライク(拳)

 この流れになりそうで怖いですね。雨宮さんの存在も今日という日を恐れていた理由でございます。


「すみません、シュウに早くワタシの水着姿を見せて興奮してもらいたかったので」


 堂々と何を言ってんのお前。

 あとグラビアアイドルみたいに片目ウインクしながらピースとかしなくていいから。いや可愛いけどね。思わず色々と見ちゃうけどね。


「それはわたしも同じ」

「え、雨宮さんは俺に興奮して欲しいの?」

「ち、違う。間違えた……見て欲しかっただけだ」


 うんうん、恥ずかしそうな雨宮さんはやっぱり可愛いよね。無表情なのに恥ずかしそうなのが分かるのが良いよね。

 それにしても……150センチ前半という小柄な印象の雨宮さん。体格的にワンピースタイプを選ぶかと思いきや、Dカップ相当の胸を活かしてビキニタイプ。しかも黒、ここ非常に大事!

 もうどれだけ雨宮さんは黒が好きなんですか。顔や背丈から受ける印象は幼いのに、黒のビキニを装備するとか見た目と相反する色気が漂って目のやり場に困ります。でも見ちゃう。ジロジロ見ちゃいます。だって雨宮さんの薄着って貴重だし。


「あんまり見るのはダメ」

「見て欲しいと言ったのは雨宮さんですが?」

「それは……感想が欲しいから。じっと見られると恥ずかしい。だからダメ」


 あの雨宮さんが自分の身体を隠してるんですけど! 恥ずかしそうに腕で胸が見えないように努力してるんですけど!

 うん、あれだね雨宮さんは天使だね。仮想世界の雨宮さん……マイさんは超絶スパルタな悪魔だけど。今日はずっと雨宮さんのままで居て欲しいな。マイさんは顔を出さないで欲しいな。


「感想か……その水着、とても似合ってると思います。大胆に攻めてる感じがして、今日の雨宮さんには色気を感じるね。率直に言ってエッチです」

「そ、そこまで求めない……エッチとか言っちゃダメ。でも……ありがと」


 なあみんな……これはもうこの夏のベストオブ雨宮さんじゃないだろうか。

 アキラさんへの想いがなければ、耐えられないほどの破壊力があったよ。女を捨てかけてるアキラさんを知っているせいで、今の雨宮さんが凄く可愛く見えたよ。


「シュウ、マイさんだけずるいデス! ワタシにも感想ください」


 ボイン。

 そんな効果音が聞こえた気がしました。だってシャルさんが腕に抱きついてきたから。薄布1枚越しの云わばほぼ生乳の感触が俺の左腕にはある。

 うん、やばいね。非常にやばいね。

 この前の買い物でもこんな風に抱きつかれたけど、やっぱり服と水着じゃ感触が違います。

 今はほぼ生に近いからね。シャルさんの温もりを強く感じちゃうからね。反射的に下半身の俺に血流が行きそうになっちゃうよ。


「シャルさん、感想は言うから離れてくれない?」

「感想言ったら離れてあげマス」


 ということは……言わなければずっとGカップを味わっていられる?


「シュウは本当にワタシのおっぱいが好きデスネ~」

「シュウのエッチ。シャルにそういう目を向けたらダメ」


 はい、ごめんなさい。

 シャルさんにエッチな目を向けるのはやめらないと思うんですけど、ずっと今の状態で居るのも良くないですよね。周りからの視線もありますし。妬みの視線も凄いですし。

 よし、ささっとシャルさんに感想を言う……おや~?


「ねぇ雨宮さん」

「ん?」

「何でシャルさんの抱き着いてない方の腕に抱き着いてきたの?」


 あなただって推定Dカップのお胸があるんだよ!

 二次元では小さい方に分類されるかもしれないけど、現実で考えれば十分に巨乳扱いされるレベルなの。抱き着かれたらその感触と温もりが腕に来ちゃうじゃん。周囲からの視線がより妬ましいものになっちゃんじゃん。

 ……あ、そこのお母さん、これは僕の意志ではないのでお子さんに見せないようにするのやめてもらいます?


「こうすれば……わたしにも鴻上の意識が向く。シャルへの意識が下がる。つまりシャルが襲われる可能性が下がる。だからこれは仕方がない行動」

「なるほど、なるほど……でも雨宮さんはひとつ誤解しているぞ」

「ん、誤解?」

「そう誤解。俺はシャルを襲ったりしません」


 ここプールだよ。プライベートじゃなくて公共の場所だよ。人目を避けるのも一苦労です。

 そもそも、シャルさんは幼馴染ですよ。身体つきが身体つきだし、スキンシップも凄いからエッチなこと考えたりもするけど。でも一線を越えるつもりはありません。

 だって一線を越えたら責任を取るしかないじゃん。

 俺が秋介・バウンディになるか、シャルを鴻上シャルロットにするしかなくなるじゃん。親は大歓迎な展開だけど、今の俺からすれば納得できるものではありません。

 ……よし。渋々といった感じではあるけど、素直な雨宮さんは俺の言葉を信じてくれたぞ。あとこのラスボスをどうにかするだけだ。


「シャルさん、君の水着も凄くエッチで良いと思います。肌の白さも相まって、まるで君の中まで清潔のように感じるよ」

「む、何かマイさんと比べると適当な感じがするデス。もっとシュウの本音が聞きたいデス」


 適当って言葉には、本来ふさわしいみたいな意味合いがあります。なので今ので問題ないということで良いでは?

 なんて言ったらシャルさんの機嫌が悪くなるだけだよね。ここは正直に本音をぶつけることにしましょう。


「これ以上はさすがの俺も我慢できなくなってくるので離れてください。ここでもうひとりの俺を覚醒させるわけにはいきません」

「……ムフフ、それはそれは」


 良いこと聞いちゃいました~♪

 みたいな笑みを浮かべているぞこの金髪メガネ。あんま調子乗ったこと言ってみろ。その買ったばかりの赤いメガネ叩き割るぞ。

 そして、周囲でこっちを見ている野郎共。妬ましい視線を向けてんじゃねぇ。お前らにはこの金髪メガネの顔がどう見えてるんだ。どう見ても背後で悪魔が含み笑いしてるだろ。お前らには無邪気な笑顔にでも見えてるのか。

 ねぇシャルさん、シャルさんも雨宮さんじゃないんだから周りの視線に気づいてるよね?

 なのにどうしてさらに距離を詰めてくるの。

 そんなに顔を近づけると間違いが起こるかもしれないでしょ。ファーストキスは大切じゃないんですか。


「シュウが望むなら……覚醒したシュウをワタシがお世話してもいいデスヨ?」


 耳元で凄いこと囁かれたんですけど。


「……君は自分が何を言っているか分かってるの?」

「ナニについて言ってマス」

「いや確かにそうだけど」

「気にしないでください。ちゃんとワタシにもメリットはありますから」

「メリット?」

「下のお世話は将来的に必要になる技術デス。それに……やはりワタシはシュウくらいのものは1番好きなので。同人活動の参考にもなりますので、一度念入りに確認しておきたいんデス」


 だ・か・ら……何でお前は俺のサイズを知っているんですか?

 一度念入りに確認しときたいってことはちゃんと見たことはないってことでしょ。なのにサイズを知ってるっておかしくないですか。

 あなたの目やメガネには男性の膨らみからサイズを測定できるスカウター機能でも付いてるの?


「ん……いくら何でも近づき過ぎ」


 ムスッとした雨宮さんが俺とシャルさんの間に割って入って、シャルさんを俺から引き離してくれたよ。

 雨宮さんマジで救世主。シャルがラスボスなら雨宮さんは英雄だね。


「シャル、今の距離はダメ。幼馴染でも許される距離じゃない」

「あはは、マイさんに怒られちゃいました。でもこれはシャルさん的にはご褒美デス!」

「いやそこは反省しなさいよ」

「ちゃんと反省もしてマス。ですが、あれはワタシの作戦でもあるんデス」


 取ってつけたように……まあ一応聞いてあげますけど。

 だって俺、シャルさんの幼馴染なんで。見捨てるにしても最後の最後にするべきでしょ。


「ここはプール。ワタシもそこそこ可愛いとか言われマス。マイさんはベリーベリーキュート、デス!」


 ……発音がまるで日本人のようだ。

 シャルさんって海外の方だよね。イギリスって英語の使ってる国だよね。ならもう少しネイティブな発音出来るんじゃないかな。

 日本暮らしが長いから劣化しちゃったのかな。……ありえる、十分にありえる。だってシャルのパパもママも普通に日本語で話してるから。英語捨てるような勢いで日本に順応しちゃってるから。


「それを考えるとナンパしてくる殿方も居るかもしれません。デスガ、あれだけシュウとイチャイチャしておけば、ナンパしてくる人も少なくなるはずデス」

「それは一理あるけど……俺よりイケメンの方々や自分に自信がある方は気にせずナンパすると思うよ。君達がナンパされなくても嫉妬に狂った殿方に俺がボコボコにされちゃうかもよ」

「それはシュウがどうにかしてください。シュウはワタシやマイさんのヒーローなので!」


 勝手にヒーローに祭り上げられたぞ。俺、格闘技経験とかないんですけど。学校の授業で軽く剣道や柔道をやったことがあるくらいなんですけど。身長は高い方だけど、筋肉で見ればそのへんの運動部には勝てませんからね。


「いやいや、雨宮さんが俺と君のヒーローだから。悪者が居たら雨宮式ストライクで成敗してくれるから」

「……雨宮式ストライク」


 あ、ついうっかり口走っちゃった。

 もしかして名前が気に入らなかったかな? 勝手に命名したの怒ってるかな?


「カッコいい。ん、今度からわたしもそう呼ぶ」

「え、あぁうん、気に入ってくれたのなら良かった。でも別に変えてもいいんだよ。だって雨宮さんの技だからね」

「今ので良い。だって鴻上が付けてくれた名前だから。ちなみに……まだ未完成だけど、今2連続の雨宮式ストライクを開発中」


 え……それってヴォーパルなんたら2連続じゃん。リーゼ・バウンサーを自分のものにしちゃってるじゃん。もうそれは雨宮式バウンサーだよ。

 雨宮さんはいったいどこに向かってるんだろう。

 人知れず怪人と戦ってたりするのかな。たとえそうでも納得出来ちゃう自分が居るぞ。だって雨宮さん、現実でも仮想世界でも強すぎなんだもん。


「さて、話も一段落しましたしプールの方へ移動しましょう!」

「シャルさん、飛び跳ねるのはやめなさい」

「……プールに移動しよう」

「雨宮さん、真似しなくていいです」


 ふたりして胸を揺らしたいんですか。俺を含めた男性の心を弄びたいんですか。もう少しは自分達が強力な武器を身に付けていることを自覚してください。

 ふぅ……ようやく移動だよ。更衣室前にどんだけ居たんだろうね俺達。何かもうすでに疲れたよ。こんなんで1日持つのかな……


「そういえば、シャルのメガネ新しくなってる」

「おや、気づかれちゃいましたか。そうなんデス、ブルーライトカットのものを買ったんデス」

「黒のも良かったけど、赤も似合ってる」

「ありがとうございマス。実はこれ、シュウに選んでもらったんデス。いや~シュウのセンスは良いデスヨネ」


 ……皆さん、私こと鴻上秋介はここで終了のお時間のようです。

 何故なら雨宮さんがロボットのような機械的な動きでこちらに首を回してきました。表情はいつもどおりですが、発せられる圧がドラゴン型のエネミーと相対した時のようです。

 ねぇシャルさん、何で言っちゃったの。

 確かに幼馴染なんだし買い物に行くのはおかしくないことだけどさ、このタイミングで言うのは少し違うんじゃないかな。俺、まだ君に何もしてないよね? もしかして何もしないから怒ったの?


「……その話、詳しく」

「良いデスヨ。あの日のワタシとシュウのラブラブ具合を熱烈に語ってあげマス。実はデスネ……」


 みんな、俺はもしかすると雨宮式バウンサーの実験台になるかもしれない。

 もしそうなったら多分一気に時間が経過することになるだろう。この後の展開がどうなるのか俺にも分からないが……みんな頼む、俺の安全を祈っててくれ。



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