第11話 「鴻上が好きなヒロイン」
やあ皆さん、いかがお過ごしでしょうか?
こちらは8月に入ったことでより一層の暑さに襲われております。なので私は冷房全開のリビングで涼んでいます。
それにしても……何だろうね、この時間の経過していない感。
気分的には夏休みの半分は過ぎてる感じだけど、実際はまだ1ヵ月くらい残ってるんすよね夏休み。地球温暖化とかで昔に比べると全国的に夏休みの期間って伸びますから。
まあ単純に夏休み入ってから今日までの時間が濃かっただけなんだけどね。夏休みが長くなってるってことは、比例して宿題の量も増えてるんだけどね。
なので今日はICOじゃなく宿題をします。
ゲームの話をしろよ、と思う人は居るかもしれないけど、勉強は学生の本分ですよ。それは今も昔も変わらないでしょ。何より……ちゃんと宿題終わらせないと後々面倒じゃないですか。俺は先生から怒られたりしたくありません。
「マイさん、スペシャルのスペルってこれで合ってマスカ?」
「ん、問題ない」
ただひとつ問題がありまして。
今の会話でお気づきでしょうが、ここには雨宮さんとシャルさんが居ます。
シャルさんは家が近所なので前触れもなくふらっと現れたりするので置いておきますが、雨宮さんの家はここからそこそこ離れております。歩いて来れる距離ですが、夏場に徒歩で来れば汗ばむくらいには離れております。
つまり、今の雨宮さんは汗ばんだ身体を冷やすために薄着。腕や谷間が見えちゃうくらいには露出しております。非常に目のやり場に困りますね。
え、シャルさん?
そんなの聞くまでもないでしょう。シャルさんがうちに来るときの恰好なんて基本薄着なんですから。今日もノースリーブにホットパンツです。雨宮さん以上に目のやり場には注意が必要ですよ。
「前から思ってたけど、シャルってイギリス出身なのに英語得意じゃないよね。苦手ってほどでもないけど」
「マイさん、イギリス生まれだからって英語が完璧とは限らないのデスヨ。ワタシは日本での生活の方が長いですし、家では普通に日本語が飛び交ってマス。つまりワタシの家は身も心も日本に染まっているのデス」
「心はともかく身は染まれないと思う」
「言葉の綾デス。そのへんは聞き流してください。というか、何で日本なのに英語を勉強するんでしょうね。英語の勉強するくらいならもっと日本語の勉強をするべきデス」
外国人が日本人より日本人染みた発言してるよ。
今のご時世、海外との交流も増えてるから英語は出来た方が良いって考える日本人だって増えてるのに。
いやまあ、シャルさんは海外出身だから日本語の勉強も大切だけどね。漢字とかたくさんあるし、方言とかまで考えると日本人ですら分からんってなりかねないから。
「ところで、何でシュウはそんなに宿題に集中してるんデスカ? せっかくの勉強会なんですからもっと会話の輪に入るべきデース」
勉強会は勉強をするための集まりです。おしゃべりするために集まっているわけではありません。
そもそも……別に俺は宿題に集中しているわけじゃないよ!
左にはDカップ(推測)、右はGカップ(本人情報)。大きさは違えど、それぞれ魅力を持った山が見える位置に居るの。谷間だって見えちゃってるの。
でもあんまり見るわけにはいかないでしょ?
俺としては見たいけど、非常に見たいけど、ジロジロ見るのはダメなことだから。相手の気持ちもあるからね。
だから必然的に目の前の紙束を見るしかないじゃない。勉強に集中して少しでも考えないようにするしかないじゃないですか!
「今は自力で解けるので会話の必要性はありません。というか、君達は何で俺の家に居るの? 今日集まろうとか言ってないよね?」
「それはデスネ、根っこが真面目なシュウならそろそろゲームだけでなく宿題もするはず。なら一緒にやった方が効率的。仲間外れは可哀想なのでマイさんも呼ぼう、というワタシなりの配慮の結果デス」
確かにそこでマイさんを呼ばなかったら可哀想だけど。
でもね、個人的にこうして集まる方が話が脱線しやすいから効率が悪いと思うの。シャルさんの配慮は俺に対しては配慮になってないの。余計なお節介にしかなっていないのです。
「鴻上が嫌なら……わたし帰る」
「別に嫌というわけじゃなくて……」
くっ……ここで強く言えない自分が憎い。
でもシュンとした雨宮さんに帰れなんて言えません。何かひどいことしてる気分になっちゃうから。金髪メガネにならいくらでも言えるんだけど。
「はっ!? ワ、ワタシ……今シュウに視姦されちゃってます。ここはサービスで上くらい脱ぐべきでは? いや、脱ぐべきデス!」
いやいや、脱ぐべきじゃないよ!
見られる側のあなたは興奮して楽しいかもしれないけど、見せられるこっちとしては楽しくないからね。男の子だから興奮するし、多分ムスコの方が元気になっちゃうけど。
でもここには雨宮さんも居るんですよ。なのに上半身裸のシャル、下半身元気な俺なんて構図になって見なさい。もう地獄だよ地獄。下手したら俺は警察行きですわ。
「脱いだら今後一生うちには入れん。出禁だ」
「な……何故デスカ? シュウからすればメリットしかないはずなのに」
「お前には雨宮さんが見えてないのか? 自分で呼んでおいてこういう時は放置なのか?」
「シャルが脱ぐならわたしも脱ぐ」
……なんで?
「わたしのじゃシャルのには敵わないけど……でもシャルだけ脱ぐと、鴻上の意識はシャルだけに向く。わたしが居るのを忘れて……あ、ああいうこと始めるかもしれない」
「雨宮さんのも十分大きくて魅力的だから卑下しなくていいよ。でも何より伝えたいことは、今雨宮さんが考えているようなことをするつもりはないってことだね」
「鴻上の性欲は強い。多分だけど一般高校生の3倍はある」
人の話を聞いて!
それと何で俺の性欲が一般と比べてどうのってことを雨宮さんが知ってるの。そりゃあ俺にだって性欲はありますし、それを処理することはあるよ。
でも一般の3倍もしてるとは思わないから。3倍もムラムラしてるなら仲の良いあなた方に対して過ちを起こしちゃってると思います。3倍とか使っていいのは赤い機体とかだけにして。
「だからシャルだけだと大変。友達を守るためにも……わたしも脱ぐ」
「凄い覚悟した目をしてるけど、俺はそういうことするつもりないから。むしろあなたを含めて服を着ろと言いたい」
「シュウ、そんなことしたらこの空間の肌色成分が下がるじゃないデスカ!」
「何でそこでキレるの?」
俺、間違ったこと言ってないよね?
俺が向けてしまうかもしれない邪な目からあなた方を守ろうとしているよね?
シャルさんは雨宮さんの肌を見たいかもしれないけど、そういうのはあなたの部屋でやってくれませんか。
いや俺だって本当は見たいよ。雨宮の二の腕とか谷間とか見たいですよ。でも雨宮は俺の友達なの。師匠なの。性的な目を向けたら良くないじゃないですか。
「いいから服を着なさい。付き合いが長いとはいえ俺も男なの。それであなた方は女の子なの。もう少しさ慎みを持って。悶々とするのは男の方なんだから」
「悶々とするなら我慢せずにその欲望を解き放てばいいじゃないデスカ。ワタシはシュウが初めての相手でも大丈夫デス」
「最近思うようになったんだけど、何でお前はそういうこと平気で言うようになっちゃったの? 二次元を追求し過ぎで興奮が収まらなくなってるの?」
確かにシャルさんが相手なら俺も過度な緊張せずに出来そうだけど。初体験の相手としてはちょうどいいのかもしれないけど。
「もう少し自分を大切にしなさい。そんなこと言ってるとあなたのパパさん達が泣くよ」
「そうデスカ? シュウが相手ならむしろよくやった! って喜ぶと思いマス」
……否定したいけど否定できねぇ。
あそこの俺に対する信頼は無駄に高いし。たまに親同士が酒飲んだりすると、俺のシャルの子供の顔が早く見たい……だとか聞こえてきたりするし。
うちの親もだけど、シャルの親ももう少し真剣に考えようよ。大切な子供でしょ。幸せを願うなら俺よりももっと能力のある人間をですね……能力あっても人格がクズだと意味ないけどさ。
どう金髪メガネに返すか考えていると、不意に服を誰かに引っ張られました。金髪メガネの反対側に引っ張られているので誰かは丸分かりですが……うん、こういうときって嫌な予感しかしない。
「……どうしたの雨宮さん。俺、今そこに居るバカメガネの相手で忙しいんだけど」
「仲間外れ良くない。わたしも……鴻上にならわたしのは、初めてあげてもいい」
…………コフッ。
ねぇこの子は何を言ってるの。自分が何を言っているのか分かってるの。
やめて、やめてよ。俺の理性にだって限界はあるんだよ。アキラへの想いがグラついて間違いを起こしそうになっちゃうんだよ。
「おぉ~初体験が3人でなんて凄まじいデスネ。さすがシュウ、性欲を強ければ女性を毒牙に掛ける精神力も強いデス。まるでエロ魔人デスネ!」
「全然嬉しくないし、勝手に俺の設定作るのやめて。というか、勉強しに来たんでしょ? 勉強するために集まったんでしょ? ならバカなことしてないで勉強しようよ」
「何を言ってるんデスカ、ワタシは絶賛勉強中デス。男を喜ばせるための女としての勉強を」
「わたしも頑張る。シャルだけに任せたら大変。シャルは友達、友達を守るためにもわたしも鴻上を喜ばせる」
相手役の俺は喜んでないし、雨宮さんは努力する方向が違う!
大体俺はエロ魔人じゃないし。俺よりもシャルさんの方がエロ魔人だし。雨宮さん、俺をエロ魔人認定してシャルを助けようとしないで。俺をエロ魔人扱いするシャルさんを更生させて。元凶は俺じゃなくシャルさんだから。
「くそ……何故俺には味方がいないんだ。何で全てを打ち明けられる真の友と言える存在がいないんだ!」
「それはシュウの周りとの交流の仕方が原因なのではないデスカ?」
「こういうときだけ真面目な解答やめて」
「鴻上、大丈夫。わたしはいつでも鴻上の味方」
「雨宮……」
お前……たまに俺の敵になるじゃん。
主にシャルのおっぱいとか見てたら露骨に不機嫌になって攻撃的になるじゃん。
「鴻上を泣かせるような人が居たらわたしがやっつける」
「気持ちはありがたいけど、雨宮さんが強いのゲームの中だよね。現実は普通の女の子でしょ」
「大丈夫。ブラッキー先生やヒーローに憧れる無口で小柄な剣道少女の技を参考にして、わたしは必殺の強襲技を身に付けた。現実でも強い。多分鴻上よりは強い」
ブラッキー先生のは、真紅色に光ってジェットエンジンみたいな音が発生する単発の重撃のことかな。鋭いとか致命的みたいな意味の言葉が付いたストライクのことかな。
ヒーローに憧れる無口で小柄な剣道少女って多分あの子のことだよね。その子がアニメを見て身に付けた条件付きでしか使っちゃいけない突きのことだよね。
そのふたつを参考に身に付けた技か……
「うん、絶対その技は使わないようにしようか」
「え……」
「残念そうな顔しないで。もしもの時は俺が雨宮さん守るから。守れるように頑張るから」
だからあなたが身に付けてしまった殺人剣を現実では使わないでください。正当防衛とはいえ、友人が人を殺す姿なんて私は見たくありません。
ICOにオリジナル技作成が実装とかされたらご自由にって感じだけどね。あのゲームは殺し合い推奨なところあるし。ゲーム内で死んでも現実では死にませんから。
「そ……そういうこと急に言うの反則」
「突発的に爆弾発言かます雨宮さんからは言われたくないです」
「シュウ、シュウはマイさんのことしか守らないんデスカ? ワタシのことは守ってくれないんデスカ?」
「お前を守る必要ある? 守られない方が嬉しいじゃないの?」
「何て対応の違いなんでしょう。まあこれはこれでやはりありなんデスガ♪ でもこれだけは言っておきマス。ワタシだって女の子デス! 誰かに守って欲しい時はありマス!」
格言のように放たれたその言葉を、全て打ち消すかのように揺れるシャルの胸。
この子は動きながら何か言ってもダメだね。最終的に意識が全部胸の方に行っちゃうから。もうこの子はさ、メガネとかじゃなく胸が本体だよね。
「ならそんなシャルには雨宮を付けよう」
「いやいやいや、マイさんは女の子じゃないデスカ!」
「だって誰かに守って欲しいんでしょ? なら男だけにこだわらなくても。雨宮さん曰く、俺よりも強いらしいから適任でしょ? な、雨宮?」
「ん。シャルのことはわたしが守る」
「マイさんのイケメン具合がやばいデス……って、ワタシが求めてるのはそういうことではなくてデスネ」
「わたしのことは鴻上が守る。シャルのことはわたしが守る。だからシャルが鴻上を守れば万時解決……じゃない。シャルだけ鴻上守るのずるい」
「何でワタシが悪いみたいな目線を向けられるんデス!?」
何やら雨宮さんの標的がシャルに定まったぞ。
シャルはこちらに助けを求めているが……うん、ここは放置だね。痛みが分からない人間は他人に優しくできない。
だからさ、たまにはシャルさんも痛い目に遭うべきだと思うんだ。
そうすればきっと普段の自分勝手な言動も少しは収まるはず。いや~これで俺の悩みも少しは減りますな♪
直後、シャルさんが雨宮さんから逃げるように俺の背中に隠れてきました。
そんで俺が逃げられないように両腕でしっかりと抱きしめてきましたよ。これではシャルさんのグレートなものが背中に直撃です。柔らけぇ……弾力すげぇ……
「シャル、貴様は何をしている? これでは俺まで標的にされるではないか」
「シュウ、昔約束したじゃないデスカ。死ぬときは一緒だって」
「そんな約束をした覚えはございません。勝手に過去を捏造しないでください。あとさっさと放せ」
「嫌デス、ワタシのおっぱいを堪能させてあげてるんですからその分の盾にはなってもらいます!」
勝手に押し付けてきたのに!?
それ悪徳商法と変わらないよ。闇金の人だって返済期限は設けてくれると思うよ。
押し付けた瞬間に逃げられないようにして取り立てとか馬鹿なの? 悪魔なの?
「鴻上……またシャルとだけイチャイチャしてる」
「イチャイチャなんかしてません。シャルに盾にされてるだけです」
「でもシャルの胸を堪能してる。やっぱり大きいのが好きなんだ。わたしの胸も魅力的とか言ってたけど、シャルのが1番なんだ」
「当然デス! 何たってシュウは無類のGカップ好きですから!」
何言ってんだこの金髪メガネ!
そのメガネ粉砕しててめぇの胸揉むぞコラ。誰が無類のGカップ好きだ。
確かにエッチぃ動画とかGカップって表記があると惹かれるけど。でも普通にDカップとかも好きだよ。巨乳が好きなだけなんだよ俺は!
なんてことを考えている場合ではない。
だって雨宮さんが腰を落として構え始めたから。右腕を肩に担ぐようにして引き絞っていらっしゃいますから。右手に剣の幻が見えるのは俺の恐怖心のせいですかね?
「あのー雨宮さん」
「大丈夫、一瞬で終わるから」
「そういう話じゃなくて」
「武器も使わないから死なない」
「そういう話でもなくて。脇腹を突くくらいなら可愛げもありますけど、その領域に行くとただの暴力といいますか。ヒロインとして可愛くないですよ。優しいヒロインが僕は好きだな」
「怒るべきところで怒れないのは本当の優しさじゃない。だから今怒っているわたしは優しい。だからわたしは鴻上が好きなヒロイン」
なるほど、そう返してきますか。
本気で言い切ってるから妙に説得力あるところがずるいよね。何というか、雨宮さんってどこかの世界の主人公なんじゃないかな。
そう考えた次の瞬間には意識が飛びました。
起きた時には雨宮さんに膝枕されていたよ。
シャルさんが昼食を作っていたよ。
昼食を食べた後は真面目に勉強しました。さすがにふたりともやり過ぎたと思ってくれたみたいです。
いや~良かった良かった……ということにしておこう。それが最も平和的な気がするから。
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