ルーム長:2年4組 ヤザワ アキト

 水曜日の最後の時間割はロングホームルームになっている。一週間の登校日折り返し地点で、元気と疲れとが半分ぐらいづつ溜まったこの時間帯は、俺にとって苦痛でしかない。

「えーっと、じゃあ今日は文化祭の展示についてやるんで」

「話終わんなかったっけ」

「今年は何でか知らんけど3組と合同じゃん?そしたらなかなか話が進まんくてさ」

「そーゆーことね」

 めんどくさ、またか、何話し合うの、使えないな。

 そんな風に思われている様な気がして内心は恐怖で縮み上がっている。

「でー?ルーム長さん、今日は何を決めんの?」

 窓際の席から飛んでくる男子の調子の良い声。向けられる多数の視線。下向いてる人はきっとスマホを弄ってるし、寝てる人も、問題集を解いてる人もいる。

「先週決めたクラス展示のテーマが『体験型の地域課題発表展示』だったじゃん。だから今日は、より具体的な展示内容決めするんで」

 後ろの方で怠そうな溜息を吐かれたのに気が付いてしまって、足が震えそうになる。

 あー、早く終われ。早く60分授業終われ。


 * * *


 本当はやりたくなかった。

『お人好しで温和な性格』なんて言われたって、それとルーム長への推薦は結びつくなよ。

 お願いだから落胆してくれるな、お願いだから溜息吐くな、お願いだから寝るな、お願いだから変に調子にのるな。

 本当は『人見知りの臆病者』なんだってわかってんのは自分だから。


 __________


「せかい」の眼が怖い青年の話

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