睡魔:1年4組 カワカミ ユウヤ

 頬杖から顔が外れて頭が傾いだ。そのせいで浮上した意識の中で重たい瞼を半開きにして黒板を睨めば、白いチョークで書かれた文字がびっしりと隙間なく羅列していて、それはもう本当にうんざりするくらいの量だ。

 昼休み明けの4時間目はよりによって授業は板書量の多さで有名な世界史だ。その量と言えば、もう、ノートに写すのも億劫になるくらい。それだけでなく、昼寝をするのにうってつけな科目でもあるなんて卑怯だ。しかも弁当を食べた後とか「どうぞ昼寝をしてください」と言っている様なものでしかないじゃないか。

 それでもここを書いておかないとテスト前になって痛い目を見るのは自分なので、どうにかシャーペンを握って黒板と対峙してみようとする。

 が、途端に下がっていく上瞼。

 頭をふって眠気を飛ばそうとしたが、視界を掠めるクラスメイトの頭もかなり下がっていたので、もはや開き直って眠るしかないんじゃないかとすら錯覚してしまう。

 いやいや待て待て。

 よく考えろ、俺。

 前回のテスト結果、散々で塾の先生にも母親にもこっぴどく怒られたじゃないか。

 そう自分に喝を入れて、どうにかこうにか授業に食らいつこうと努力する姿勢をみせようじゃないか。残り30分間の絶好のお昼寝チャンス、みすみす逃して頑張んてやろうと決意して、左手の甲にシャーペンを突き刺した。


 ***


 受験に必要なだけの知識。

 社会に出て「教養があるね」と言われるためだけの知識。

 正直、そんなものよりも睡眠の方が大切じゃないのかよ。

 まあね、深夜まで勉強もそこそこにスマホでゲームしてる俺も悪いのかもしれないけどさ、それでも、将来の仕事で使うならまだしも生きていく為の実技スキルと関わらないものを教えられるくらいなら、本能に従って眠った方が体に良いと思う。

 最近はそんな風に生きてみている毎日だ。


 __________


「せかい」の平和を堪能する青年の話

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