提出物:1年2組 タノベ ナツヒロ
補習常連者になるには二通りの方法があって、定期テストで赤点を取り続ける方法と、提出物を期限通りに出さずに居続ける方法の二通りだ。
俺は後者で、それはもう、教師陣を唸らせるほどに提出率は低かった。高校受験の時の出願に間に合ったのが奇跡と揶揄されるぐらいに、だ。今日だって、提出期限が1か月前の英語の課題を出し忘れた為の3回目の補習だ。1回目は俺が出席し忘れ、2回目は遅刻して、その時間中にやるはずだったプリントが終わらなかったので3回目が行われた次第だ。おかげで今日は1人しかいない。
「タノベ君さぁ、成績は悪くないんだから、ちゃんと提出物だけ出してれば相当内心上がるし、なんなら大学受験で推薦も夢じゃないのに。なんで出さないの」
英語研究室で俺の補習監督をしているおばさん先生が呆れ顔で言った。
「面倒臭いじゃないですか。てか俺、考えたんですけど、紙じゃなくて電子化すればいいんじゃないですか?今時、書くよりスマホで打った方が早いんだし」
「こんな地方の公立高校にそんなお金は無いのよ。ほら、早く手を動かしなさい」
決まり切った出題パターンの不定詞の問題。見覚えはあるけど意味の思い出せない英単語をスルーして、訳を考えずに妥当な解答を書き込む。ほら、こんなの単純作業。似たような問題ばっかじゃん。
「終わりました。丸付け、お願いします」
「相変わらず早いねぇ。どうせ間違ってないんだし、部活行っていいわよ」
片手をヒラヒラと動かして、目も合わせずに補習は終了を告げた。
* * *
頭が良いっていう自覚はあるし、地元では一応進学校と名乗るこの学校でもそこそこの成績を維持していると思っている。
でもさ、提出物がなんなんだよ。出してる奴が偉いとか、そんなんじゃないだろ?
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「せかい」と反りの合わない青年の話
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