第8話 剣聖、最大のピンチ

どんなに難易度の高いクエストに出ても無傷でクリアして帰還する……

それも毎回たった一人で……


その戦いを見た他の冒険者の話では、巨大な飛竜の首をいともたやすく一刀のもとに切り落とし、異名に恥じない実力だったという。


そんな剣聖の下には、他の冒険者や賞金稼ぎ、名を売りたい武芸者たちからの挑戦が絶えなかった。どのみちチートで一切のダメージを受けず、毒や麻痺なども効かない

健康体を倒せるはずもなく、毎回返り討ちにし、挙句それを恨みに思い決闘の形ではなく、大勢で待ち伏せして一斉に襲ったものもあったが、「一の太刀」にて各個撃破されてしまい、やはり一つも傷を負わせることはできなかった。


それだけ名が売れたにも関わらず、剣聖にはチートの代償、「ハーレムの放棄」により一人の女性も寄ってくることがなく、つまり、滅茶苦茶モテない独身貴族だった。

金も名声もあるが、なんか、そういう目で見れないっていうか、優しい人だとは思ってるしいい人なのはわかってるんだけど、ゴメン、恋愛対象として見れないんだよね……って感じである。


そうしてむなしくなってきたある日、ギルドの最高の冒険者として仕事していると、あるクエストで、世界一の呪術師と出会った。


マジで独身生活が辛くなってきた剣聖、金も余裕で3代遊んで暮らせるくらい貯まっている。若いがもう隠居も考えている。そんな彼は、呪術師に頼みこんで、神の加護、つまりチートをすべて引き剥がすクッソヤバな呪いをかけてもらうことにした。チートさえなければ、俺もなんとなく女の子と仲良くなれないのが改善するかもしれないとの見立てによるものだった。


その見立てはどうやら合っていたようで、チート消去の呪術からすぐに一人の女性と仲良くなり、家庭を持ち、異世界で元気に暮らしましたとさ……


とはいかず……


チートを引き剥がした後も、彼に1件の依頼が舞い降りてきた。

村を襲うオーガ(5mくらいの大型の知能のある山鬼)を倒してくれという、冒険者Cランクレベルのクエスト。(剣聖はもちろんSの上ランクである)

ただ、名声上げ作業の際にいろんなギルドを受け、各地を巡っていたため、懇意にしている村や町もあり、個人的に依頼がくるのだ。

またひょひょいっとクリアして隠居しようと思っていたが……


Cランクのオーガということで油断があり、いつも一刀のもとに切り伏せていたのが、先にあいてに気づかれ、こん棒の一撃を掠ってしまった。

そこで、一気に彼を死への恐怖が襲う……

なんとか次の一撃でオーガを倒したが、ダメージを受けたり、なにより加護がなくなった自分はたやすく死んでしまうということを自覚したことにより、

彼はそのあと行方をくらまし、山へ籠ってしまったのである。


やはり彼にはハーレムは縁がなかったようだ。

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