1-3 寝坊

花火から少し経ったある日。

「水族館行きたい」って言い出した彼。わたしも二つ返事で了承した。


約束の日。バンドマンの彼が数時間の寝坊により、水族館の前に彼の行きたがってたパンケーキを食べに行くと言う約束は流れた。

「ほんとうにごめんなさい!」と謝る君を『許さん!』といいつつ許してしまう自分がいた。


住んでいたところが遠かった分。2人で会う時はどうしても都会方面に集まることが多かった。



身長差がある分、エスカレーターに乗るときは必ず彼がすぐ後ろにきてくれて嬉しそうに話しかけてくれた。


水族館を全部見終わった頃、突然の電話。彼の友達からだった。

「出てもいい?」と聞くのでいいよ。と言った。

夕飯の誘いのようだったので『行っていいよ』と小声で言ったが、

彼は即答で「ごめん!また今度な!」と言って電話をきってすぐに、

「夕飯食べて帰ろっか!」と言ってくれた。



彼の存在はわたしの世界の中心になっていた。



ねぇ。もう一度そばにいてもいい?なんて重い女みたいなことしないから。

ただ、思わせて、想わせて欲しかった。

あなたの本当の気持ちを今のわたしは知るすべもなにもないのに。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る