第1章 Peace
急に携帯が鳴った。友人Aからの「ねぇ、カラオケ行かない?」というメッセージ。
『いいよ。』と打とうとしたら、またすぐに新しいメッセージがきた。
「二人じゃなくて、8人くらいいるんだよね。」
数日後、なぜかはじめましての人たちが沢山いるカラオケに私はいた。
メンバーは派手、地味といったわけでもなく、ただ個性が強いなと思った。
「もー遅いぞ!」って知らない人がいうと、いい香りのする細身の男が謝りながら混ざってきた。第一印象は 苦手 ただそれだけ。
女子メンバーの間にいた私の隣にスッと座ってきた第一印象、苦手なその男は初対面のすぐに話しかけてきた。だがかるく受け流したのにもかかわらず懲りずに話かけてくる。
第一印象、苦手。
いや、ちがう
…超苦手。
春から夏へと変わる季節、わたしたちは出会ってしまった。
あなたの匂いだけがわたしの記憶の中に存在していた。
数日経った日曜日、携帯が鳴ったが見たことない名前からだった。一瞬誰かと思ったが、この前嗅いだいい匂いをふと思い出した。「おはよう!俺のこと覚えてる?(笑) 映画観に行かない? 俺、いまめっちゃ観たいのがあるんだよね。」驚いたが、冷静に『連絡する相手間違えてない?』と一言。「あー、全体LINEと間違えたわ…」。それをきっかけに連絡を取り合った。おはようからおやすみまで。男慣れしていない私はバンドマンの優しさと人柄にどっぷり浸かっていってしまった。私がほしい言葉をくれる。ちょうどいい距離で関係を保ってくれる人。
この時はまだ、この関係に名前なんてなかった。
次の日、バンドマンの君が観たがった映画を観に行った。男の子と2人きりで映画なんて初めてだった。夏の風が吹いていた。
少し遅れてしまった私。『・・・ごめん』、彼は笑いながら「頑張って走れよー」
他愛もない話をした。私が小さすぎるせいか彼の横顔ばかり見ていた。この間のいい匂いがしなくて、『今日は香水つけていないの?』って言ったら「俺、香水つけてないよー」と言われた。おかしい。「あ、たばこかな?たばこかも!」
正直、私が吸わないからか煙たいイメージしかなくて昔から苦手だった。
チケットを買う時も男の人が店員さんと会話しているのを初めて見た。
すごく対応がよくてびっくりした。彼の印象は私の中で大きく変わった。
超苦手から
…少しきになる男の人。
映画を観終わったら、バンドマンの君はこれからLIVEがあるといった。
2駅前で先に降りて行った彼。
「『またね』」と言って、まだ明るいうちからバイバイした。
あと何回「『またね』」を言えるんだろう。
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