煙になって

枯波

プロローグ

煙を吹きかける お酒が体内に吸収されている 2人 きりの時間。 周りの人たちはそれぞれの話題に夢中だ。 目を細めて、肺に入った煙を横を向きながら吐きだしている君をただ、ただ、見ていただけ。


「このあとどうする?」そう言ったあなた。いつもの流れ。

『かえろっか』と言うあたし。驚いた顔してあたしを見つめる貴方。


ずっと聞きたかったことがあるの。『ねぇ、私って何番目?』


手も握らない。キスもしない。SEXもしない。

ただ、会ってくだらない話をするだけの関係。


恋人たちが私たちをすり抜けていく夜の道。 2人だけの時間。

駅に着くまでが 魔法が解けない タイムリミットが迫る。


貴方に会う時だけ すべてを忘れられた。

貴方があの子にだけ見せる顔を 思い浮かべるたびに 胸が苦しくなった。

もうこんな関係やめてしまえたらどんなに楽になるだろう。

そんなことばかり思っていた2年間。


もう会わないって決めた夏の終わり。いつもの『またね』はなくて

最後の2人の写真だけ撮って 正反対の改札で 私を見送ってくれる君。

最後に振り返って 手を振ったら 振りかえしてくれる貴方がいた。


頬を伝う 涙を一人でそっとぬぐった。

「『さようなら』」

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