宇宙診療所
ゆう作
宇宙診療所
──ここには、色々な患者がやって来る。
「次の方ー、どうぞー」
「こんにちはー、今回もよろしくお願いします」
またこの方か。いや、別に何も拒む感情がある訳では全くないのだが、こうも通院が永いと流石に心配になって来る。他の方の十倍くらいの回数はここに来ているんじゃないか。
「こんにちは。どうですか、容態は。あれから良くなりましたか。前回はいつでしたかな、ちょうど百年くらい前でしたかな」
「ちょっと先生、忘れたんですか。つい最近の事じゃないですか。あれが確か西暦千九百四十五年だったから、七十三年ぶりですよ」
「そうでしたか、いや失礼。近頃物忘れが酷くなる一方でして。それで、どうですか。お薬の方は、効きましたか」
「それが先生、全く駄目なんですよ。効いてはいるんでしょうが、このウイルスときたら薬を投与した一年後くらいには、もう抗体を作ってしまっているようで。しかも数は増える一方。なんだか身体を蝕まれているようで、落ち着かないんです」
「ほう」
「咳や身震いの数は増える一方ですし。最近では、あんまりウイルスが減らないもんだから、基礎体温が上がって、汗もよくかくようになりましたし。近いうちに倒れちゃうんじゃないかと、ヒヤヒヤしているんですよ」
「そうですか。事態は意外と深刻なのかもしれません。このウイルスの繁殖能力と生命力には、眼を見張るものがあります。どうでしょう、前回も話したこのワクチンの投与を、もう一度検討してみては」
「そうですねー。僕としてはできれば薬は使いたくないんですが……。ここまで来たら真剣に考えなきゃいけないのかもしれませんね。自分の身体ですし」
「そうですね。あと三世紀ほど様子を見てみて、容態が変わらない、もしくは悪化するようなことがあったなら、ワクチンを投与する。というかたちでどうでしょうか」
「……わかりました。そうさせていただきます」
「辛いのは分かりますが、自分の身体を大事にして下さい。健康が一番ですから」
「わかりました。診断ありがとうございました」
「あ、ちょっとすいません。診断書に名前の記入漏れがあるのですが。確か太陽系第三惑星さんでよろしかったでしょうか」
「あー、それ肩書きみたいなものなんで。適当に、地球で大丈夫ですよ」
「了解しました。それでは地球さん、お大事に」
「どうも」
──ここには、本当に色々な患者がやって来る。
宇宙診療所 ゆう作 @mano3569
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