レベル16―悪辣なる死別―

夕暮れの時間帯は黄昏に染まる

建物は美しく輝いていた。

村なのに発展途上の町並みの建物は、

その黄昏の色を加えて美しく眺めながら

帰路に就く人々を避けながら走っていく。

評判のケーキを買うのに長蛇の列だったのが

計算外で遅くなった。ティファニーはケーキが好きなのは分かっていたので、

ブッシュ・ド・ノエルというのを買った。

もちろん一番高いやつを。


(特別な日でもないけど、気持ち的には

特別な日なので、本能のまま買ってしまたが喜ぶ姿を見れば御の字というもの。)


帰路に就く人々の中に知り合いの冒険者が

目に入り、ついギルドのあの

一件を思い出す・・・ティファニーの一緒に

生活するようになってから早一ヶ月。

恩返しのためにギルドで稼ぎに来たのだが

今はあの小さなギルドは、ホームのような

場所になっていた。


(あれからまだ、一ヶ月しか経っていないのに充実な生活になったのが今でも驚きで

戸惑っているのが僅かにある。

最初に異世界転生した悪辣あくらつ

教会の人に勇者にされたのが

遠い話のように思えてくる。

異世界の住人はクズの世界だって思い込んでいたのが、こんないい人達もいるんだって

ティファニーやギルドの人達に知った。)


僕は勇者としての枷を解放されたけど、

他の召喚された人達は今でも槍を持って

戦わせっているのだろう。

それに・・・・・・


(家族がいる可能性もある・・・

そろそろ行動を起こさないといけない。

僕がこんな幸せな生活を享受するのだって

・・・いつまでもするわけには

いかないんだ、助けないといけない!

そう使命感が強く燃えている。)


でも、それは今すぐに行動をしなければ

いけないのか?

一人の旅に出てティファニーは

どうなるだろうか?

喜ぶ・・・ありえない!やっぱり寂しそうに

心配されまいと歓迎するのだろう・・・・

スピードを落としながら走っていたが

路地裏に入ると、止まり壁にもたれながら

ため息をする。

・・・いくら、考えても答えが出てこない!

決められない!どうしたらいいのか。


「・・・このまま、ずっとここで

生活すればいいって、強く思っている。

・・・でも、それは・・・苦しんでいる

同じ境遇者にあのままにさせたくない!

それに父さんも母さんも探さないと!

・・・もし、あの教会の連中に

見つかれば終わりだろうけど。」


まだ、この額には不可視の忌まわしき隷属の

証を解呪できていない。

命令可能範囲に入れば・・・・・

想像もしたくない。どうしても暗い過去を

思い出しマイナスな思考に陥ってしまう。

旅に出るとしたらまずは、この呪いを

解かないと始まらないだろうなあ、

それにこのまま残っていることを意識すると

今でも手足の震えが止まらない。

こういうときは深呼吸しよう。

乱れていた呼吸を整えると思考も正確的に

巡らせるようになる。


(とりあえず、ギルドでパーティでも

結成してからでも遅くはないはずだ。)


これ以外悩んでも明確的な答えは

出ないし今すぐ行動を移るわけではない。

それよりも今すぐにでもティファニーに

会いたい!再び僕は走る。

貧困エリアに入れば、路傍の人が

急激に減る。ほとんどが外出など出稼ぎなど

しているためだってティファニーが

説明していた・・・のだが、今は

人がどこもかしこも人はいる。

貧困無縁そうな人がここを通ることあっても

特に立ち止まるような面白い物なんてない

はずだって・・・これもティファニーが説明

していた・・・・・一体なにが?

それに、ティファニーの家の方角を見て

隣の人達と話している。

あそこになにかが、起きてティファニーが

危ない状況にいるのだとしたら―――


「っ――!ティファニー!!」


ケーキを入れた袋を落としたがそれどころじゃない!全力で駆け、名前を叫ぶ。

アニメや小説などの虚構の中だけだと

僕はどこかバカバカしいと、見ていたが

考えを改めないといけない。

大事な人が危険な状況にあることを想像する

こんなにも不安で恐くて救いたい――色んな

感情が爆発するような心情だった。

叫ぶでも返事なんて返ってこないの考えると

募る不安が行動を起こす。


(落ち着け僕・・・早とちりって

可能性があるはずだろ。

イヤ、それならそれが一番いいけど、

この周りの人達は恐怖でいっぱいで

視線にはあそこが危険だって

語っているようなものだから・・・)


ティファニーの家に近づけば近づくほど

人けが減っていく。

そして、ティファニーの家が見えた所で

ドアの前に下を視線を下げると

遠いがティファニーと厳かで華美な装飾した

騎士風の集団が見えた。

その中で黄金の鎧をした二十代の男性が

ティファニーの手首を強く掴みどこかに

連れて行こうとする。

ティファニーは、強く抵抗するが

その集団はそんな姿に嘲笑をしていて・・・

そう冷静に急いで推測していたが

そこまでだった。


「なにやって・・・・・」


思考は頭の中は、憎悪で支配した。

平穏な解決などの考えられない。

もはや、一人残さず倒すだけでいい。

元勇者としての冷徹な判断能力と激しい

感情が動き出す。


「――っ、ちがう!?」


奴隷として扱われた呪いはこの従わせる

見えない呪い以外にも

戦わせた記憶や体験も呪いがあった。

なんとか、強く静かな殺意を抑える。

まだ、かなり残っているけど

忌避する感情のまま動かずにいれる。

鞘を抜こうとした剣を抜かず柄をつかむ。

狙いは、黄金の男。

あの頃と違う・・・斬らないと決めたから

鞘はけっして抜かない。

使うは、最速の突撃する上級剣技

【レイジング・ブレイド】

両手を柄をつかみ、右の手首を右肩に乗せ

剣は背中に垂直にし左足は前に右足は後ろに

腰を下げ前に傾き構える。

左の前足に力を込め地面を蹴る、

もはやあの集団の周りには人がいないので

この加速に衝突する心配がないので

放つことができた。

時速100は越えるスピードを乗せた剣を

黄金の騎士に放つが籠手で受け止められる。


「なっ!?――――」

「これが噂の異世界で召喚された勇者の

一撃がこの程度か。」


黄金の騎士は、横目で淡々とした声音で

そう分析する。


「・・・シゲザネ・・・」


ティファニーは、僕を見て安堵と不安の

二つが宿る眼差し。


「ティファニーすぐに助ける!

それと、そこの黄金の騎士その汚い手を

いますぐに、はなせぇーーー!!」

「ふん、いいだろう。」


籠手に力を入れられると弾かれる

衝撃に、着地するとティファニーの手首を

離す黄金の騎士は、

きらめく黄金の剣を抜く。

一騎討ちの自然に流れることになった。


「シゲザネひざまずけ。」


だが、そうはならなかった。

ダミ声の男の声に僕は激痛が走り

そして・・・体が勝手に跪く。

こ、この命令はまさか・・・


「まさか、逃走した勇者がここにいると

聞いたときは半信半疑だったが・・・

本当にいたとはなあ。」


ロープ姿の男が前に出る。四十代の男性

で知らない顔だったが間違いない!

あの、悪魔のような僕たちを奴隷として

召喚する教会の連中だ。

そう本能的に理解すると鞘を抜こうと・・・

できない体が動けない。


「シゲザネ逃げてぇぇーーー!!」

「いい加減、うるさいのよ

下賤げせんの娘が!!」


青と赤の基調とした鎧の女性がティファニー

の頬を殴られるのをなんとか顔を上げると

逃げるように泣き叫ぶティファニーに

そんなことを・・・・・。


「や・・・やめろおぉーーーー!!」

「あっははは!もしかしてあんたの

奴隷だったのかしら?

それはわるいことを――」

「おまぇたちと一緒にするなぁ!

恩人で大事な人なんだ・・・

だから、手を出すなぁ!!」

「シゲザネ・・・」


ティファニーは、琴線を触れて僕の方に

走ろうとするが、止まってしまう・・・

いや、違う引っ張られている。


「誰が勝手に行く許可を許したのかしら?」


綺麗な長い赤髪を引っ張り愉悦にする

女性騎士。


「は、はなして・・・」

「ふふ、どうかしらくやしい。

この子が苦痛したら

貴方はどんな反応するのかしら?」


僕の反応を楽しそうに醜く歪む騎士に

今までにない強い怒りが溢れてくる。


「わあぁぁーー!はなせ、はなせよ。

お前のようなクズがティファニーを

さわるなぁーー!!

絶対に斬っておまえを―――」

「落ち着いてシゲザネ!」


憤激の叫びを遮るのはティファニーだった。

次は別種の悲しさで無理に笑顔を作る。


「わたしは大丈夫だから・・・

だからそんな風に睨むのはいけないよ。」

「ティファニー・・・でも・・それは・・」


次の言葉が出てこない。

ティファニーが僕のためにしているけど、

それは認められない!

否定したいけど、できない。

助けに来たのに助けられそうになって

それを甘んじたらティファニーは

想像もしたくない。


「勇者様、お願いです。

シゲザネには、なにもしないでください。

・・・どんなことをしますので。」

「――っ!ティファニーそれは・・・

それだけはダメだ!」


ティファニーは、髪を引っ張る騎士にそう

懇願する。

自分を犠牲にして僕がそんなことを望んで

いないのに・・・・


「なんでもするのでしたら――」

ロープ男は外道な笑みで言おうとするが―

たわむれるのはそれぐらいに

しろ。エデン教会の者も本来の役目を

果たすのが優先だろ。」

「ハァー、わかったわよ。」

「そ、そうでありますな。」


黄金の騎士の言に従う女性の騎士と

教会のロープした中年男性。

その中年男性が僕の頭を靴で踏みつく。


「ぐっ!」


なんとか上げた頭を地面に衝突し

上から声が発する。


「質問しましょうか。

貴様はなぜここにいて、どうやって

逃げ切れたのか?」

「・・・そんなこと誰が言って・・・」


もちろん言わないつもりだった。

だが、激しい頭痛が起きそして

意識とは関係なく動き始める。


「・・・偶然でした。

戦場で大規模な魔法を放たれたのです。

目覚めればわたし以外の誰もいなかった。

これを僥倖ぎょうこうと考え

暫く遠く向かい森で狩りをして生活を

していたのですが、

馬車が襲われたので救い出すため戦い。

負傷し目覚めた時には――」


抵抗心も霧散していくな感情だった。

僕の些細な抵抗心という自我の冒涜ぼうとくに涙するしかなかった。


「あの女がいました。

あの女の家に戸惑いましたが恩を勝手に

感じたわたしは、ギルドに登録して

金策していました。そして、そんな

平穏な生活をしていました。

以上が報告です。」


想いも僕の感情関係なく語り出す僕に

情けなくなって嗚咽するしかなかった。

視界には、ティファニーが僕の姿を見て

手を伸ばそうとしたが・・・堪えて

勇者と呼ばれる人に話をする。

・・・勇者!?確かティファニーは

勇者様っと呼んでいた。

そうだとしたら、僕と同じ理不尽な目に

あった経歴があるはずだ。

・・・だけど、そんな悲愴感のような

感情が見えなかったが。


「なるほど、なるほど・・・

そんなことがあったのですか。

大変でしたね、その報われない貴方に

褒美をあげましょう。

いますぐここで自害をなさい。」


なっ!?


「がっ!?・・・て、手が勝手に・・・」


鞘を抜き柄を握り腹部に貫こうとする

僕の体になんとか抵抗とするが、

少しずつ近づく・・・そして・・・・・


「がはっ!!」

「シ、シゲザネーーー!?」


駆け寄ろうと走る

ティファニーに周りの勇者は

誰も止めようとしなかった。

抵抗する意識が弱まると剣は深く貫く。

そして、命令は果たしたと体が動けるように

なるが、力が出ずに倒れる。

熱い・・・痛い・・・苦しい。


「シゲザネ・・・どうしてこんな・・・」


ティファニーの涙が頬に落ちてきて

その悲しさや苦しさをどうにかしたかった。

手を動かし涙を拭う。


「・・・・・ご・・・ごめん・・・」

「ちがう、だから謝らないで。」


ティファニーは、立ち上がると後ろに

いる勇者に頭を下げ声高に言う。


「お願いします、助けてください勇者様!」


懇願に心を受けたのか黄金の騎士は

前に出る、憐憫とかそんな感情が

伺えない表情だったが助けてくれるの

だろうか?

ティファニーの手首を掴む。


「魔王軍が進軍しているんだ。

これ以上、俺の貴重な時間を

無駄にするな!」


そんな唯我独尊の発言に

ティファニーは驚愕する。


「ゆ、勇者様?」

「貴様には、エデン教会の勇者をかくまい行動を幇助ほうじょした

罪状により、ここで裁定を下す。

魔王迎撃のために貴様には魔法消費軽減

ための媒体として使わせてもらう。」


黄金の騎士はこの集団で悪逆なる愉悦が

ないと思っていたが違った。

なにも感じないのか無表情でそんな

ことを言う。


(幇助って、手助け・・・そんなことで

ティファニーに罪にするのはちがう!)


そう発したいが声帯に力が出ない。


「わ、分かりました。

行きますからシゲザネを助けて下さい!」


あの黄金の騎士がなにを媒体とか言って

いたが、ティファニーに害をするのは

分かっている。

そして、ティファニーも分かっているの

だろう。それなのに怯えているのに

僕を助けてほしいとそれでもお願いする。


「奴はもう救えない諦めろ!」

そんな願いを冷たい声で否定する。

「・・・そ、そんな・・・うぅっ!!」


泣き崩れるティファニーを膝を

つかせなかった。


「チッ、強情な奴だ。誰かこの女を運べ!」


舌打ちする黄金の騎士は、仲間を命令。

返事するのはあの、青と赤の鎧の女性。


「アーサー様。でしたらわたしが

運びますわ。」

(なっ!?アーサーって・・・あの英雄の

アーサーの事なのか。)


アーサーの名前は僕のいた世界では

あまりにも有名な伝説の騎士だ。

エクスカリバーに選ばれた英雄で強い

そんな伝説の英雄と同じ名前なんて!?


「任せた。遅れたが行くぞ!

エデン教会の者よ、ここで別れだ。」

「はい。アーサー様、人類のため

魔王を滅して下さいませ。」


うやうやしく頭を下げて言う。

そして、アーサーの一行は人類のため平和の

ために魔王軍と戦いに赴く。

守るべきの民のティファニーを連れて。


「離して下さい!離してぇーー、

シゲザネ・・・シゲザネーーーーー!!」

(・・・ティファニー・・・・・)


遠ざかる声。

泣き叫ぶティファニーの声になにも

出来なかった。

これが、僕とティファニーの別れの言葉と

してらあまりにもひどすぎる・・・

涙ぐんで笑って別れるつもりだったのに

こんなお互いが死を向かうような最後に

なるなんて・・・納得できない。


「ほう?まだ息がありますか。」


ロープの憎き男はわらう。


「どうして、ここの場所を分かったか

お答えましょう。

ギルドカードを登録したでしょう?

そのおかげで首都のマスィーフまで

届いたのですよ。

偉大な光を放つエデン教会も届き

国王と真の勇者達と協力のもと、

国家転覆こっかてんぷく計画を

画策する勇者と名乗る賊を倒す・・・

それが私が考えたシナリオですよ。

どうですか?素敵な物語でしょう?」


いくつか気になる単語が出てきたが

最悪でどこまでも悪魔のような考えに

果てることない怒りが無限のように

溢れてくる。

まさか、ギルド登録でデータが首都まで

渡っていきそれで居場所が

分かるなんて・・・クソォーーー!!


「あの赤髪の少女はマナの枯渇で消滅

するでしょう。

死後の世界に行かずにずっとどこかに

彷徨さまよい続け苦しみそして

モンスターに変貌するでしょうね。

そう考えただけで、私は・・・

アッヒャハッハハハ!!」

(な、なんだと!そんなこと許せる

わけにはいかない。

亡くなってもそんな残酷な事をさせるわけに

は、いかない!

お願いだ!この僕はその死後に行かなくても

いいから、ティファニーを助けるために

うごけえぇぇぇーーー!!)


だが、そんな想いは伝わず体は動けない。

息も出来なくなった。

だ、だれでもいい、誰かティファニーを

助けてほしい。助けてに行ってほしい。

ティファニーを助けてほしい・・・・・・

・・・・・・・。

そして、意識失うシゲザネは

最後にそう願い絶命をするのだった。

異世界で転生された少年は勇者という

奴隷として戦い続ける日々は

逃走して勇者像として行動して

赤髪の少女に救われ幸せな生活の日々は

終焉を迎える。

二人は悪辣なる存在によって

死別するのだった。



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