レベル12帰りを待つ者の元に

初のクエストと報酬にティファニーは、

喜んでくれるだろうか、または、

複雑そうにするのだろうか。

そう考えると楽しみだけど

・・・恐くなる。

人の反応にここまで気にしなかったのに、

ここまで必要以上に考えてしまうのは

恩人に迷惑かけたくないと良心の呵責が

そうさせるのか・・・それとも・・・・・

これ以上は考察しても答えが出ないし

それにもう家の前だ。

この村はそれなりに発展していて

人口も多く、多いとこの貧困の所も必然ある

そしてその環境に負けずに

頑張る人もいる・・・ティファニーの

ように。

ドアノブを握り開く前に一呼吸・・・よし。


「た、ただいま。」


荒ら屋の中に響き渡る走り音。

そして、入り口の前に芸術的すぎる揺れる

赤髪の少女がとんでもない笑顔を向ける。


「お帰りなさいシゲザネ!」


完全に信頼と家族・・・かな、

そんな感情が伝わるほどに明るい。


「・・・えーと、ありがとう

ティファニー。」

「えへへ。」


僕は、恥ずかしさもあったけど

それ以上に温かくなって、嬉しくなって

その想いを込めてありがとうと伝えると、

純粋な笑みで答えてくれる。

・・・なんて言うのか、幸せで

あのときの緊張とか忘れてしまう。

やはり異世界で玄関に靴を脱がず

中に入りティファニーに後ろについて

いき、居間にある粗末な卓上に

夕食がある。ウインナの下にレタス(多分)

と、春菊のような葉であり茎の形を入れた

スープとシンプルなパン。

まさしく異世界料理で、なんだって

トドメは、ティファニーが作ったのが

ポイントだろう。

向かいに座るティファニーは、微笑を

向けて言う。


「出来たら、シゲザネが帰ってきたから

わたし驚いたよ。」

「そうなのか・・・もはやタイミングが

良すぎて恐いなぁ。」

「うん!そうだね・・・それじゃあ。」

「ああ。」


そして、もはやいつもの事となった

両手を合わせ言葉を発する。


「「いただきます。」」


異口同音に完全にハモるとお互い顔を見ては

つい堪えずに笑い、またも同じタイミングで

笑うのだからなんだか面白く

絆が表れているようで嬉しくなる。

まずは、スープを飲む。

僕は味噌汁、スープを必ず最初に飲む。

まっ、日本人だから当たり前のこと

なんだけど、飲んで気づく、

気づいてしまったのだ。


(少し・・・冷めている!

それだと、ティファニーが出来て僕が

タイミングよく帰ってきたのは

ウソってことになるのか。)


僕がここに住むようになってから

すっかりティファニー料理を毎日、食べているので、断言できるのだ。


(そう、スープはいつも熱く、

こんなにぬるいはずがないことを。

つまり・・・気を遣ったのかな?)


そうだとしたら、料理が出来てから

けっこう、待ってくれたことに・・・・・

ぐっ、涙腺が危うくなってきた。


「ティファニー。」

「んっ、なーに?」


パンを頬張っていたが、すぐ飲み込み

明るいスマイルで首を傾げる。


「あっ!・・・えぇーと、

名前を呼んだ・・・だけかな。」


感動してつい名前を言ってしまったなんて

言えるわけがなく、

拙すぎる誤魔化そうとしたわけだけど、

これはこれで、恥ずかしいぞこの台詞は。

ティファニーは、少し目を見開きと、すぐ

別の種類のほほえみをする。

「シゲザネ!」溢れんばかりの

明るさで僕の名前を言う。


「えっ?」

「わたしも呼んでみただけだよ!」

「・・・あっはは!」

「フ・・・フフ。」


こう一緒に食事をして、談話して笑うのが

こんなに楽しいなんて想像もしてなかった。

転生の前の僕がいた日本にここまで

楽しく話せたことはなかったし、

なりよりずっと、この日常を続けたいて

真剣に考えてしまうのだが、

ずっと、居続けるわけには、いかない

だろう。

僕は、あの転生された協会がいつ魔の手が

向けるか分からないし

危険に晒されたくない。


「・・・なにか、ツラいことをあったのなら

微力ですが、力に・・・相談ぐらいは

訊きますよ!」

「あっ!・・・いや・・・

そ、そうだ!次の日だけどティファニー

買い物しないか!・・・仕事が忙しいなら

別の日にするけど。」

「買い物ですか・・・あっ!

そうですよね。

そろそろ、シゲザネの装備などを

こしらえる必要ありますよね!」


両拳をグッと胸の前に上げて力強く言う。

そんな、リアクションが美少女ゲームか、

深夜アニメとか、ラノベを彷彿する。

つまり、かわいいこと。

そんな考えは一旦やめて

まさか僕のためにお金や時間を喜色満面に

言われるとは、なんだか困る。

それだと、いつか苦労するだろうことに

心配で困る。


「ちがう、ちがう!

ギルドで早速クエストをこなして

報酬の額がそれなりにあって、

このお金でティファニーの洋服とか

家具とか荷物持ちとか

僕が1日中に徹しようと考えているんだ。」

「そ、そんな気遣い大丈夫だよ

わたし!」


手を左右に振り断ろうとするティファニー。

清貧・・・これ以上この言葉を

行くような人がいるだろうか、

いやいない!


「いや、僕がしたいんだ。

ここに泊まったお金を出していないし、

治療費とか食費とか・・・

えーとつまりは、面倒みてくれた代で

色々と僕は、払わないといけない

身分だから遠慮しなくてもいいんだ!」


ティファニーは、優しい。だからこそ

僕が出すための口実を次々と言う。

それでも複雑そうに納得していない。


「それを言うならわたしを救ったのは

シゲザネなので、よって

帳消しになります。」


まさか、ここでそれを言って断ろうと

するのか・・・どこまでも真っ直ぐで

頑なに施しを受けないことに

驚きだが、引くわけにはいかいない。


「しかし、それは極論であり

自分の方が最も恩恵を受けましたので

その恩情を形にして返すのは道理に

適っていることを主張します。」


「へっ?えーと・・・恩情とか適っている

難しくて分からないけど

ダメなのはダメェェ!!」


両手をクロスにし、最後の言葉に力強く

叫ぶティファニーの姿に

認めるわけにはいかない。


「し、しかし・・・それだと俺が恩を

返せなくて・・・・・そ、そうだ!

なら、お互いが相手のために使うというのは

どうだ!」

「どういうことでしょうか?」


譲らないならお互いがお互いに奢る方式。

つまりは、伊達繁実(僕)がティファニーの

ためにお金を使用する。

逆にティファニーも僕のため出してもらう。

それは、交渉を円滑に進めるための口実。

説明を終えるとティファニーは

何度か質問して答えると渋々だったが

いつもの微笑に戻る。


「それなら、いいかも・・・しれないね。」


よし、乗ってくれた!

ふふ、中身はそうだが僕が物欲

ありませんと振る舞い安物を買ってもらう

だけに済ませ

ここから、ティファニーが求める物を

僕の手元がゼロ覚悟でお金を使うのだ。

フッ、我ながら策士すぎる。

さあ、明日の恩返しを楽しみにするがいい!




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