レベル7夢想していた勇者像

一匹のサバイバルウルフが

多数客乗用車に素早い足で入り悲鳴。

きっと、中は阿鼻叫喚だろう。

御者席はいうと短剣を取りだし

馬に運び出すためにつけた縄を切って

馬に乗って逃げていく。

客を見捨てて。

この異世界は夢もない場面をまた目撃した。


「キャャャャャ!?」

「うわあぁぁぁぁぁ!!」


大型の箱形から窓を飛び逃げていく

人達。

他のサバイバルウルフが

逃げていく人々を咆哮を上げ

魔の爪で切り裂こうと走ていくのを見て

僕は気づいたら飛び出し

力いっぱいに叫び出す。


「モンスター共、こっちを見ろ!!」


近くの凶暴なる狼に

切れ味が悪くなったボロボロの剣で

横一閃で倒す。

他の仲間を斬れば

僕を最優先対象と認識する。


「た、助かったのか?」


逃げる足を止め安堵し始める旅行者。


「なにやっているんだ

はやく逃げろ。」


そして、背後から再び走り始める足音。


「グルルゥゥ。」


警戒して近づいたり囲むようにして

動くサバイバルウルフ。

蒼い毛に漆黒のキバで敵を喰らう

体長120cmもある。


「さあ、こい!

召喚されて無駄な戦いで

絶望をしていた

僕の解放されしターンだ!」


例の教王に奴隷という勇者だったが

今は本当に勇者として

人のために戦えている。

そのために望まず手に入れたこの

レベルと戦術がようやく

役に立ちそうだ。

僕はポケットから

木の棒の先をグリーンベアーから

剥ぎ取った爪をツルで巻いた

小さな槍のような物で

ダーツの要領で投げる。


「ギャヴヴヴヴゥ。」


頭に命中して苦しみもがく。

仲間を刺さる武器に見ているわずかな

隙に囲んでいてもっとも数が少ない

右にダッシュ。

全力のナナメ斬りでもう一匹も仕留め

次は、隣にいるに逆袈裟斬りして

屠っていく。

僕の猛攻に作戦を変え一斉に襲い掛かる。

空いた片手で柄を握り

腰を曲げ両手に力を込め

剣で旋回する。

サバイバルウルフは、回転攻撃に

足を止め攻めあぐねる。


「くらえぇぇぇ!!」


そして、再び攻撃される前に

また回転して、の威力を乗せ剣を投擲する。

投げた剣は一匹を切り裂き

そして勢いを落ちても進み

後方にいたもう一匹を貫く。


「ガガアァァァ!」


得物を失ったと知れば警戒を解き

爪で狩ろうとする獸。

だが、それが素人の相手のときだ!

鋭い爪を鞘で防ぎ

懐から短剣で急所を刺す。


「クっウウウウ・・・」


断末魔を上げると

腰にある二つのダガーを抜く。

・・・ここから力攻め。


「ハアァァァァ!!」


首を噛み砕こうとキバを広げる相手に

二つのダガーをクロスにして防ぎ

膝を上げアゴにあてる。

背後から襲い来る相手に

予備動作なしでジャンプ。

すると、攻撃を受けたサバイバルウルフを

もう一匹の魔の爪で切り裂く。


「ギャヴヴヴヴゥ!?」

「足音と殺意が向きだしだと

こんなに簡単にかわせるのか。」


そう、これが勇者としての戦い。

魔物と戦って護るためにこそが

僕が忘れた過去に抱いた想いだった。

ファンタジー好きだった頃の俺が

夢想していた。

だからなのか、不謹慎だと分かっても

頬が緩んでしまう。


「・・・これで、全部か。」


最後の敵を倒し武器を治める。

さて、僕もそろそろ軍とか来る前に

離れないと。


「きゃーーーー!?」

「っ!」


甲高い若い女性の叫び。

叫びからして距離は、そんなに

遠くない。

バタッ。

音のした方に振り向ける。

どうやらあの馬車からだ。


「だと、するとまだ逃げきれて―!?」


走る。

距離は、二メートルちょっとなので

訓練されたスピードでなら

数秒で着き

まずは出入り口に慎重に周りを見る。


「こ、こないで!」

「グルルゥゥ。」


尻餅をつき後ろに下がっていく

長い深紅の髪をした十代半ばの女の子は

若狹色をしたエプロンドレスしていた。

そして、獲物を狙う

サバイバルウルフ一体がいた。

まだ、間に合いそうだ。


「今、助けるぞ!」


逃げ遅れた一人に安心させようと

もうひとつサバイバルウルフの注意を

此方に向けること。

血で汚れたダガーを見えるように

構えれば知能が低い獸でも

優先順位が分かるだろう。

ダガーを投げる。

大型の狼は危ういながら避ける。

そして、もう一つのダガーも投げ

難なく避けられた。

そして、武器がないと判断した相手は

猛スピードで走る。


「そう、警戒もなく走ってくれると

助かるよ。」


懐からサバイバルウルフの血が生々しく

ついた短剣で顔の上に投げる。

命中すると、同時に僕は

回り込み短剣を抜き

首を斬る。


「あ・・・ああ。」

「・・・大丈夫か?」


トドメをさした短剣を抜き

戻し振り返り優しく声を掛け

近づく。


「い、いやぁ!」

「・・・・・。」


あんな血生臭い戦いして

恐怖で仕方ないだろう。

俺が離れたら後は、勝手に

帰っていくだろう。


「グルガガガアァァ!」

「うっ!」


後ろ首から噛まれ激しい痛みが走る。


「ま、まだ仕留めていない

奴がいたのか。」


短剣で背後の敵の首を素早く斬り

振り返って今度こそ動かなくなる。


「ハァ・・・ハァ。

狙いが・・・悪かったか。」

「あ、あの?」


痛みなら戦争に慣れているが

意識を失えば今度こそ終わる。

万が一に治療をしても

誰かが教会に知らされる。

だから・・・倒れるにしても

離れないと・・・・・。

だが、体はいうことが効かなくなり

倒れる。


「・かり・・・さい!」


誰かが声がするが

声が聞こえなくなっていき

意識も失っていく。

これから僕はどうなるか、

次に目覚めるのが恐怖で溢れていた。


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