第31話 集結

 ガコっ!!!


 バキッ!!!


 ドコっ!!!


「いやー、すいません遅くなりました(笑)」


「そ、その声は!」


「綾野くん、ギリギリ間に合ったね?」


「もー、田森さんのせいでいつもギリギリ(笑)」


「いや、綾野くんが長々ウンコしてたからでしょ…。」


「あっ、それは言わない約束!」


「あ、綾野さーーーん!!!」


「いやー、またギリギリになっちゃったよ上田くん(笑)」


「ところで、その格好は??」


「あっ、これ?これは、フロッグマンの改良型スーツ!怪魚マン!僕は前の方が良かったんだけど、田森さんが、こっちの方がパワーが強いから、着ろって…。」


 ………………。


 圧倒的に弱そうだ………。


 白のブリーフ姿は相変わらずだが、筋骨隆々だったフロッグマンとは正反対に、あばら骨が浮き立つ程ガリガリで、よろよろしているように見える……。しかも、どちらかと言うと正義のヒーローというよりも、あの怪魚マスクは悪の怪人に見えない……。


「綾野さん?フロッグマンの方が良かったんじゃ……?」


「そんな事よりも、何こいつ??グレイト・ワンは??」


 ”そうだった、今はそんな事考えてる暇はなかったんだ!”


「グレイト・ワンが成長したのがそいつだよ!」


「あっ、仲松さんお久しぶりです!ソバハチ忘年会以来ですね(笑)」


 ガバっっっっっ!!!!


 突如グレイト・ワンが綾野さんに襲い掛かった!


「綾野さん!あぶなーい!」


 シュっ!


 ドコっ!!!バキッ!!!


 ズダーーーーーん


「綾野さん、よそ見しちゃダメだよ(笑)」


「いやー仲松さん助かりましたよ(笑)」


 スッ凄い!成長したグレイト・ワンを一撃で転倒させた!これがブリッツェンの力か!


「どうやら、まだグレイト・ワンは変体直後で本来の力を出しきれてないようだ。今がトドメを刺すチャンスだ!綾野くん!ロメオトラストの最強ロッドシックスナイン10だ!こいつでトドメを!」


 シュッ!


 パシッ!


「田森さん、ありがとうございます!じゃー、そろそろ本気を出すとしますか~(笑)」

 

 凄い!凄いぞ!完全にグレイト・ワンを圧倒している!


「ウリャーー!」


 ドっコっん!!!

 バキッ!!!


「そりゃ!」


 バコっ!!!

 ズドンっ!!!


 仲松さんと、綾野さん、この二人がいれば僕の出番なんてなさそうだ!


「よしっ!あと少しかな?(笑)」


「このままいけそうかな?(笑)」


 ドッスーーーーン。


 グレイト・ワンが倒れた!


「綾野くん!トドメを!」


「了解!田森さん!」


 綾野さんがトドメを刺そうとした時だった。


 ベッっっっ!


 ビシャっっっ


 グレイト・ワンが吐いた唾液が田森さんにかかった。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「たっ、たもりさーーーん!!!」


「綾野さん、近づいちゃダメだ!それはおそらく強酸だ!」


「強酸??」


「田森さんは、もう助からない!それよりも自分の身を守るんだ!」


 田森さんの体がドロドロに溶けてゆく…。


「た、た・す・け………。」


 田森さんは跡形もなく溶けて消えた。


「あーーーー!グレイト・ワンが!」


 来栖さんが叫んだ。


 グレイト・ワンは、巨体を揺らしながら、ゆっくりと地中に姿を消した。


「しまった!田森さんに気を取られて、グレイト・ワンを逃してしまった!」


 グレイト・ワンが姿を消した穴へと皆で近寄った。


「まずいなぁ?グレイト・ワンを倒せる最大のチャンスを逃したよ。」


「仲松さん?グレイト・ワンは変体直後で本来の力を発揮していなかったという事ですか?」


「おそらくそうだろうね?体も柔らかい感じだったし、どの程度で変体が完了するのか分からないけど、次は確実に強力になっている筈だよ。」


「加えて、強酸の攻撃ですか…。」


「うん。あれは相当やっかいだね。」


「この穴を通ってヤツを追いましょう!」


「いや、おそらくこの穴は天竜湖へと繋がっている筈。グレイト・ワンは既に水の中じゃないかな?」


「しかも、水中、陸上、地中とどこでも活動できるようになって、どこから現れるか分からないから厄介だよ。」


「綾野さん?もうヤツに弱点はないんですかね?」


「まー、空を飛べないだけマシかな?(笑)」


 さっきまでこの二人がいればなんとかなると、楽観視していた僕はバカだ。


「上田くん、次にグレイト・ワンが姿を表した時は、最初からライギョマンに変身してくれ。」


「仲松さん分かりました。僕も全力を出します。」


「あと、来栖くんは、洞窟まで退避していてくれ、僕らに何かあった時は、後の事は任せる。」


「分かりました。とてもじゃありませんが、僕にはどうにもできそうにありません。くれぐれも無理をしないで下さい。」


 そう言い残して、来栖さんは洞窟へと向かった。


「正念場ってやつだね。」


 そう言った仲松さんの横顔は、どことなく嬉しそうに見えた。

 

 どのくらいの時間が経ったんだろう?僕の緊張はピークに達していた。あいかわらず天竜湖は静まりかえっている。グレイト・ワンは眠ってるんじゃないか?


 ブルブルっ。


 まずい…。


 こんな時に…。


「仲松さん、ちょっとトイレに行ってきます。」


「ちんこをマムシに噛まれないように気をつけて(笑)」


「……。」


 とても笑えたもんじゃない…、それにしても、あの二人はこの状況下でよく平気でいられるな?


 チョロチョロチョロチョロ


 ブルブルっ


 あーすっきりした。


 ん?


 天竜湖にこんな岩あったっけな?


 ???


 ……………。


「うわぁぁぁぁーーーーーーー!!!出たーーーーー!!!」


「仲松さん、上田くんが何か叫んでますよ(笑)」


「マムシが出たのかな?(笑)」


 なんでグレイト・ワンがこんなところに???湖の中にいるはずじゃなかったのか?


「な、仲松さーーーーん!綾野さーーーーん!」


「綾野さん呼ばるてるよ!」


「仲松さんも呼ばれてるじゃないですか(笑)」


 まずい、まずいぞ?この状況は、ん?グレイト・ワンは眠っているようだ、ここはゆっくりとグレイト・ワンを起こさないように逃げよう。


 ソローリ、ソローリ


「おーい!上田くーん!どこだー?」


 えーーーー?このタイミングでーーー??

 こ、声を出さないでーーー!


「おーい!おしっこチビったのかー?」


 そ、それ以上声を上げると…。


 ギロっ!


 あ、あ、あ、グレイト・ワンと目が合ってしまった…。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ。


 こ、腰が抜けて声が出せない…。

 まずい、まずい、まずいぞ。


 どうにかしないと…。


 た、頼むから動かないでくれ…。


 そ、そうだ、ライギョマンに変身してこの場を切り抜けよう!


 あーーーーー!立ちションするときにベルトを外して、置き忘れてきたーーー!


 なんてこった…。


 ベルトを取りに行かないと!


 ソローリソローリ


 いい子だから、動くなよ?


 ソローリソローリ


 あと5メートル。


 ソローリソローリ


 あと4メートル。


 ソローリソローリ


 あと3メートル。


 ソローリソローリ


 あと2メートル。


 グゥオオオオオオォォォォォォォ!!!!


「うわぁぁぁぁーーーーーーー!!!ダメだーーーー!!!気づかれたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 ドカっ!


 バキっ!


「もー!こんなところで何をやってるんですか?」


 あっ?    


 えっ?


 ええーーーー??


「あーーーーー!奈緒美さーーーん!」


「グレイト・ワンを倒してデートに誘ってくれるんじゃなかったんですか?」


 えー?なんで奈緒美さんがここに??


「奈緒美さん、怪我はもういいんですか?」


「このとおりすっかり治りました♪」


「よかった~。」


 え?まさか、立ちション見られてたんじゃ…。


「立ちションしてもベルト放したらダメですよ?」


 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…、やはり見られていた…。


「あの…、その…。」


「はい!ベルトです!」


「あ、ありがとうございます。」


「それよりも、まずはみんなのところに戻りましょう!」


「あ、は、はい。」


「急いで!」


 ダダダダダダダダっ !!


 ん?おかしい、グレイト・ワンが追って来ない。やはりまだ変体が終わっていないのか?


 ズデーン!


 ??


「な、奈緒美さん?だ、大丈夫ですか?」


「え、ええ。」


「つかまって下さい!」


「す、すいません。うっ…、くっ…。」


 ヌルっ


 ?


 血だ。


「奈緒美さん、転んでどこか怪我をしたんじゃないですか?」


「いえ、大丈夫です。」


 ん?よく見るとすごい出血量だ。


「奈緒美さん?まさか?怪我が治ってないんじゃ?」


「実は……。」


「やっぱり?無理しちゃダメですよ。命に係わりますよ!」


「とりあえず、洞窟に行きましょう。立てますか?」


「ハイ。」


「さ、僕につかまって!」


 だいぶ、息が切れている。この出血量はまずい気がする。


 早く洞窟へ。


 ズドーーーーーン


 ズドーーーーーン


 ズドーーーーーン


 ズドーーーーーン


 くそー。こんな時にグレイト・ワンが…。


 グォォォォォォォ!!!!!


 ライギョマンに変身したいが、奈緒美さんを放さないと変身できない!今、奈緒美さんを放したらグレイト・ワンにやられてしまう!


「くっそーーー!」


 絶体絶命だ!


 僕は諦めて目を瞑った。


 シュッ!


 ?


 クルクル。


 ?


 ガチッ!


 ?                            


「うわぁぁぁぁーーーーーーー!!!」


 僕と奈緒美さんが宙を舞った。


 ガシっ。


 ???


「もー、こんなとこで何遊んでんの?(笑)」


「あ、綾野さん!」


 綾野さんが、僕らを釣り上げてくれたのか!


「大事な用事をスッポカしてデート?(笑)」


「仲松さん!」


「さ、ここは僕らに任せて、その子を逃がしてあげな!」


「仲松さん!すいません。僕の不注意で…。」


「いいから、早く!グレイト・ワンが来るよ!」


「綾野さん、ありがとうございます!すぐに戻ってきます!」


 ダダダダダダダダッ。


「なんか青春してるね~(笑)」


「ですね(笑)」


「さっ、踏ん張りどころだ!(笑)」


「若者にカッコイイとこ見せますか!(笑)」


「来たよ~全開バリバリのグレイト・ワンが!(笑)」


「来い!グレイト・ワン!田森さんの仇を取ってやる!」


 グゥァバァァァァ!!!









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