第29話 決戦前夜

- 埼玉県某所、マジョーラ本部 -


「上田くん、こちらがBトラストの仲松くんです。」


「はじめまして。上田です。噂は予々。」


「はじめまして。仲松です。」


「そしてこちらが、フルハウスの来栖くんです。」


「はじめまして。来栖です。ライギョマンに変身できるようになったんだってね?」


「はじめまして。ええ。ようやくです…、でも失ったものが大きすぎて…。」


「そうだね。」


「それも、今回で最後ですよ。」


「はい。浅井さん。必ずヤツを倒して終わりにしてみせます。」


「挨拶はこれくらいにして、そろそろ本題に入ろう。」


 この日、僕、仲松さん、来栖さん、浅井さん、船形さん、の五人で天竜湖のビーストを仕留めるべく、作戦会議を行った。仲松さんの口から語られた情報は、どれも鮮烈で、的を射ているように思えた。


「まー、そんな感じで、いい線いけるんじゃないかなと?」


「なるほど、これなら倒せそうな気がしてきました!」


「まだ短絡的になるのは早いけど、後は、フロッグマンと田森さんの仕上がり具合も気になるところだね。」


「あちらには、トガテンも加わっているんで、問題ないかと?」


 そうか、綾野さんはあれから、どうしているんだろう?田森さんが新しい竿を開発しているらしいが、今回間に合うんだろうか?


「あ、そういえば!」


「え?ふなぞーさん、どうしたんですか?」


「天竜湖のビーストの名前はグレイト・ワンて言うらしいですよ!潜入してる仲間からの報告です。」


 ”グレイト・ワンか?若干、安易な感じがするが、まずまずシックリくる。”


「でわ、僕らマジョーラは打ち合わせ通り後方支援をします。」


「よろしくお願いします。じゃ、僕ら3人は明日の朝、天竜村に移動して準備に入ろう。」


「はい。仲松さん、来栖さん、よろしくお願いします!」


「よろしく!上田くん!僕も仲松さんのアシスト役を頑張るよ!」


そうだった!


「来栖さん、来栖さんの腕を見込んで一つお願いがあるんですけど?」


「なに?」


「ストレングスマイルドを改造して下さい!」


「え?いいけど?どんな風に?」


「僕の体力では、正直、この竿は重すぎて超時間の戦いになったら、最後まで振り続ける自信が、ありません。軽くすることはできませんか?」


「んー。持った感じ、だいぶ先重りしてるから、少しフォアグリップを詰めて、持ち重り感を軽減してもいいかもね?ブランクは装甲を薄くすると、破壊力を奪いかねないから、そのくらいの改造に留めておいた方がいいんじゃないかな?」


「じゃ、それでお願いします!」


「お安いご用だよ!出発前には終わらせておくよ!僕は普段は仕事が遅いけど、やる気になると早いんだ(笑)」


 明日の昼には天竜村だ。いよいよだ、いよいよ最後の戦いが始まる!


 - 翌朝 -


「おはよう上田くん!ストレングスマイルド完成したよ!ジャーン!」


そう言って手渡されたストレングスマイルドを見て、僕は言葉を失った…


「サービスで色も塗っておいた!」


「はっ、はぁ……。」


「ストレングスマイルド改、EVOANGLING -01test type!かっこいいでしょ?」


「は、はい…。」


「君がアニメのエヴゥンゲリオンが好きって聞いたんで!そこからインスパイアして初号機カラーにしたよ!これで思う存分戦えるでしょ!」


 正直…、僕には派手すぎる…、元の色に戻して欲しい…。


「あ、あのー。」


「お礼なんていいって!さっ、天竜村に出発だ!仲松さんはもう車の中だよ!」


 い、言えなかった…。


 言える雰囲気は一切なかった…。


 フルハウスの来栖さん、この人の天然で、底抜けに明るく、ゴリゴリ貫き通す究極なマイペースさは、いつかポジティブハラスメントとして、訴えられるんじゃないかと、心配になった。

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