第17話 人事を尽くす

 - Bトラスト地下研究所 -


 コンコン


「開いてるよー。」


 ガチャ。


「仲松さん、ブリッツェンが完成しました!」


「来栖くん。こっちも、拳骨ハンドルと拳骨ギヤが完成したところだよ」


「いよいよですね?」


「んー。一度テストをしてみないと何とも?」


「そう言うと思っていました。テストにうってつけのフィールドがありますよ!」


「もしかして、葛原川ダム?」


「知ってたんですか?」


「噂は聞いてるよ。二メートル級の巨大魚が目撃されてるという。」


「天竜湖から10キロの距離で、人里離れた場所で、周遊道路もなく、周囲が断崖に囲まれ、湖面に降り立てない。そして関係者以外立ち入り禁止。巨大魚が生息していても不思議じゃないですよね?」


「生物兵器のテストフィールドにはうってつけてところかな?」


「ですね?」


「とりあえず、飯見さんが先走って一人で天竜湖に行かなければいいんだけど?一応釘は指しておいてもらったけど、あの人のことだからもしかしたら?」


「赤井さん達の敵討ちに心底燃えていそうですもんね?」


「まー、それは僕らも同じ。だろ?」


「ですね。まずは葛原川ダムの巨大魚を!」


 そして、僕と仲松さんは、葛原川ダムへと出発した。


 

 - 一方、埼玉県某所 マジョーラ本部 -


「赤井くん、剛造くん、泉さん……。」


「飯見さん!研究所に忍び込んでいた仲間から連絡があって、対生物兵器用スーツの奪取に成功したそうです!」


「ありがとう船形くん。僕一人では、ここまでできなかったよ。」


「どうしても一人で行くんですか?」


「浅井さん、お世話になりました。」


「もう少し待って、仲松くん達と合流した方がいいのでは?」


「ですが、こうしてる間にも、他の仲間達がどんどん犠牲になっていってます。一刻の猶予もありません。」


「そうですか。僕らはただ黙って見送るしかなさそうですね?」


「そうして、頂けるとありがたいです。」


「わかりました。お気を付けて!」


「では、お世話になりました。」


 ガシッ、男達は無言の握手を交わした。


 そして飯見は、天竜湖へと向かった。


 

 まさに瞬殺!


 自画自賛ではあるが、ブリッツェンevoの性能がこれほどのものであるとは!

 いや?ブリッツェンevoの力だけではない。Bトラストで開発した、拳骨ハンドルと拳骨ギヤが三位一体となり、これまでとは異次元のパフォーマンスを可能とした。しかし、おいそれ易々と誰でもが扱える代物ではない。仲松宏樹この人が操ってこそ、ブリッツェンevoは本当の力を発揮する。流石としかいいようがない!

「仲松さん、楽勝でしたね!こいつが、葛原川ダムの怪物ですか?想像以上の怪物ですね?」

「楽勝って程でもないよ。でも天竜湖の怪物はこの倍以上の大きさで、足まで生えている。こう簡単にはいかないよね?」

「しかも2匹…。」

「ああ。まー成るようにしかならないよ。とりあえずテストは無事終了だ。ブリッツェンevoと拳骨達、まずは合格点だ。」

 よかった!この人にそう言ってもらえると、ホントに嬉しい。苦労した甲斐があったというものだ。

「ところでこいつはどうするんですか?」

「もちろんリリースするよ。」

 

 ………。


 葛原川ダムには、まだ怪物がいる。皆さんも挑戦してみてはいかが?


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